Mさん労災認定!明らかな石綿曝露歴中皮腫で療養中
ノザワ㈱旧東京工場で石綿の積み降ろしや混合作業等に従事し、中皮腫を発症し、現在療養中のM定次さん(七一才)が、四月一五日付で川越労基署より労災認定された。
ノザワ㈱は、戦前から石綿スレートの国産化を手掛け、北海道富良野市に石綿鉱山を開発した老舗の石綿製品製造メーカーである。すでに、富良野鉱山と東京・神戸・門司の三工場は閉鎖されたが、埼玉・播州・高砂の三工場でノンアス製品を製造している。 Mさんが働いた一九五七~七二年当時、工場は東京都に近接する埼玉県入間郡にあったが、その後、同県比企郡に移転、現在は埼玉工場となっている。Mさんは、「麻袋から石綿を出して崩してミキサーに入れて混合する作業をした。軍手をしても石綿繊維が手にチクチク刺さった。粉塵対策と言っても、自分でガーゼマスクを買って着けるしかなかった」と証言している。明らかな石綿曝露作業であるし、中皮腫なのだから労災認定は急がなければならない。
しかし、一月一四日付で労災申請したにもかかわらず、年度内に労災認定されなかった。川越労基署の給付調査官が、Mさんが退職後に、自営で吹き付け作業を含む建物のコーキング作業をしていた時にも石綿曝露があったのではないかと勘ぐったためである。Mさんが自営を始めた一九九九年は、吹き付け石綿は既に禁止されている。吹き付け作業をしていたとしても石綿は含まれていない。しかも潜伏期間から言っても、ノザワでの石綿曝露が原因であることは明らかだ。監督署は、じん肺で重視される最終粉塵職場にこだわって無駄な調査をする必要はない。
Mさんは、〇九年七月に右肺全摘手術を行っている。労基署の数回にわたる無駄な聞き取り調査に耐え得る身体ではない。労基署は、もっと早く労災認定の決定を出すべきだったと考える。
ホームページを見ると、ノザワ㈱関連のアスベスト労災認定数は死亡二二件、療養中三件である。Mさんは、東京工場で三人目、全体で二六人目の認定者ということになる。ニチアスやエーアンドエーマテリアル㈱に比べ、全体的に認定件数が少ないように思える。また、「現時点において工場周辺地域で石綿に関する健康被害は発生しておりません」とHPに書いてあるが、これも疑いのあるところだ。Mさんの労災認定をきっかけに、ノザワ㈱関連のアスベスト被害の掘り起こしを進めていかなければと思っている。【西田】