新型コロナワクチン医療従事者等・高齢者施設等の従事者以外の労災請求について


■阿部ともこ衆議院議員の国会質疑 ワクチン接種の業務命令性がポイント
■予防接種健康被害救済制度と労災補償は併給できる事も判明

 24年5月13日の衆議院決算行政監視委員会第3分科会において、阿部ともこ衆議院議員が、新型コロナワクチン接種後の健康被害の諸問題について集中的に質疑を行った。
 ワクチン接種後にかつてないほどの健康被害が生じている問題、接種後に遷延するワクチン後遺症についての政府の周知が不足している問題、副反応疑い報告の審議会において99%以上が「評価不能(γ)」とされ、塩漬けされたまま再評価されていない問題等について質疑を行い、武見厚労大臣や担当部局が答弁した(質疑の様子は藤江成光さんのユーチューブにアップされている【https://www.youtube.com/watch?v=ugX5Ysb8uQ8】)。

阿部議員が武見大臣から重要な答弁を引き出す

 この質疑において、阿部ともこ議員が新型コロナワクチン接種において生じた健康被害の労災補償の問題についても質疑を行い、武見大臣から重要な答弁を2つ引き出したので報告する。
 まず、医療従事者等・高齢者施設等の従事者以外の労働者の労災請求について、従来、厚労省は、「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者向け)4労災補償
問10【https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html】」で次の通り説明していた。
Q 労働者が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けたことで健康被害が生じた場合、労災保険給付の対象となりますか。
A ワクチン接種については通常、労働者の自由意思に基づくものであることから、一般的には業務として行われるものとは認められません。
 一方、医療従事者等に係るワクチン接種については、業務の特性として、新型コロナウイルスへのばく露の機会が極めて多く、医療従事者等の感染、発症及び重症化リスクの軽減は、医療提供体制の確保のために必要です。
 したがって、医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のために必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。また、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても同様の取扱いとなります。

 つまり、医療従事者等と高齢者施設等以外の労働者に生じたワクチン健康被害は労災補償しないと言っている。
 しかし、新型コロナワクチンは国をあげて接種が推奨され、職域接種という方法まで採られ、労働者が多い事業所や対人業務が中心の業種や職種などは特に接種が半ば強制されていたのが実態であり、これを「労働者の自由意志」だから労災の対象外だと切り捨てることは大いに問題があった。
 そこで阿部議員が「ワクチン接種を業務命令に似た形でした人は医療従事者にとどまらない」「業務命令性があれば労災によるワクチン接種禍だという事を徹底して欲しい」という趣旨の質問を行い、武見大臣が「適切な救済を行うことは極めて重要なことだと考えている」と答弁した。
 この質疑を踏まえて、厚労省の上記Q&Aに、以下の「なお書き」が追加された。

 なお、上記の医療従事者等・高齢者施設等の従事者以外の労働者に係るワクチン接種については、当該ワクチン接種を受けたことで健康被害が生じた場合、事業主からの業務命令によるものか否かなどを調査した上で労災保険給付の対象となるか判断することとなります。

 つまり、医療従事者等・高齢者施設等の従事者以外の労働者でも、ワクチン接種の「業務命令」があったと認められれば労災補償すると明記したと言える。これは、医療従事者等・高齢者施設等の従事者以外の労働者のワクチン被害について労災補償の門戸を開く重要な明記である。該当する被害者の方は、あきらめないで「業務命令性」を主張し、是非とも労災請求を行って欲しい。

予防接種健康被害救済制度と労災補償は併給可能

 2つ目は、武見大臣が「予防接種健康被害救済制度における給付を受けていたとしても労災保険給付の対象となる場合がある」「この周知を更にきちんと徹底して両制度の連携をしっかりとするように努めていきたい」と答弁し、それを受けて厚労省が上記Q&Aに問12を追加したことである。

Q(問12)予防接種健康被害救済制度による給付を受けていますが、労災保険からも給付を受けることはできますか。
A 予防接種健康被害救済制度における給付を受けていたとしても、労災保険給付を受けることは可能です。問10に示した考え方等に基づき、労働基準監督署において労災保険給付の対象となるかを調査し、判断することとなります。

 また、問12について、阿部議員の秘書に厚労省労災補償課に確認して頂いたところ、「予防接種健康被害救済制度と労災保険はそもそも別の制度なので、それぞれの申請に従って認定されればそれぞれ併給でき、過去あるいは将来の給付金に関して制限されることはない」という回答であった。

「隠されて」いるワクチン被害の労災補償

 この事はほとんど知られていないと思われる。予防接種健康被害救済制度では累計の認定件数7230件、死亡認定件数567件、障害年金62件がコロナワクチンと因果関係ありと認定している(14年5月13日時点)。一方、ワクチン接種による労災認定件数は21年度と22年度の合計で1002件であることが判明している。予防接種健康被害救済制度で認定された接種時年齢をみると、働く世代が相当数いることが分かる。果たしてそのうち何人が労災請求をしているだろうか?私は、ほとんどいないと考える。
 武見大臣の答弁「この周知を更にきちんと徹底して両制度の連携をしっかりとするように努めていきたい」とするならば、まずは予防接種健康被害救済制度の認定者に対し、労災保険の請求勧奨をするべきである。
 問10の通り、医療従事者等・高齢者施設等の従事者、そして「なお書き」の労働者で予防接種健康被害救済制度の認定者は、労災請求すれば労災認定される可能性が相当高い。労災補償では、医療費、休業補償、障害補償、遺族補償と幅広く適切な補償が行われる。そして厚労省労災補償課の説明では「両制度は併給できる」としているので、是非とも該当者は労災請求を行って頂きたい。(鈴木江郎)