Tさんのうつ病は労災 会社は解雇の撤回を

㈱アルページュの社員として、神奈川県内にある婦人服販売店で働いていたTさんは、11年4月の入社以来、お客様に喜ばれる良い仕事をしたいと考え、売り上げも伸ばしてきた。14年4月には店長になった。一方で、セクハラ被害にあったり、勤務時間も長くなりがちで、休みも取りづらい状況もあった。売上のノルマも、前年度比アップを目標とされ、フロア内でもトップになることが当然というものであった。

パワハラ等が原因でうつ病に

14年末から15年3月にかけて、たまたま店のスタッフが相次いで退職した。それぞれの事情もあり、Tさんも残念に思っていたところ、上司から、「あなたの魅力がないからだ」、「あなたの責任だ」、「見た目も中身もきついからだ」などと理不尽かつ筋違いの叱責を受けた。そもそも店長と言っても、スタッフの退職はもとより、採用、異動など雇用に関する人事権は全くない。
15年4月、Tさんは出勤前に自宅で倒れて病院に搬送された。精密検査の結果、「解離性昏迷(昏睡)状態」と診断され、10日間の休業を余儀なくされた。その後何とか復帰したが、5月末に上司から売り上げなどについて再び強い叱責を受け、翌日勤務中に職場で倒れて病院に運ばれ、「うつ病」と診断され、再び休業となった。
6月半ばに会社から連絡があり、就業規則では休職期間が1ヶ月だから自分から退職届を出すよう勧められた。そもそも就業規則は見たこともないし説明も受けていない。Tさんは到底納得できず、仕事が原因の病気ではないかと考え、センターに相談した。

会社は、解雇を強行

雇用問題もあるため、Tさんは、よこはまシティユニオンに加入し会社と団体交渉を行った。会社は、就業規則を店におかず、説明すらしていないことを認めつつ、まもなく解雇することをほのめかした。上司からの叱責については、事実そのものが確認できないと主張。交渉時点ですでに休職期間は過ぎていたが、職業病で休業中は解雇できないはずだとして、ユニオンは、粘り強く再検討を求めた。Tさんの診断書の提出の有無も確認できていなかったり、傷病手当金の手続きも遅れるなど労務管理そのものに問題がある。
会社は、業務に耐えられない状態だとして9月11日付で解雇を通知してきた。ユニオンは、文書で強く抗議した。

労災請求し、調査中

Tさんは、労働基準監督署へ労災請求を行った。現在、監督署が仕事との因果関係について調査中だ。正確な時間外労働の記録はなく、ノルマや叱責の程度等は必ずしも客観的な数字になじまない。Tさんの体調も良くないし、当時のことを思い出すこと自体が大きな心理的負荷になる。一つ一つ丁寧に担当者に事実を伝えていくしかない。【川本】