2024地方公務員災害補償基金本部と交渉


 7月9日、久しぶりに地方公務員災害補償基金本部との交渉を行った。支部での調査に、非常に時間がかかることなどを中心にやりとりをした。参加者は基金本部側が総務課次長の平本勝也氏、企画課次長の佐藤哲也氏、調査役(困難事案担当)補償課次長の永作卓士氏。こちらが全国安全センターの古谷さん、東京労働安全衛生センターの飯田さん、天野さん、名古屋労災職業病研究会の成田さん、関西労働者安全センターの酒井さん、神奈川からは鈴木、森田、川本が参加した。

目次

【要求1】基金各支部の補償に関する事務を民間企業における総務人事部署である職員厚生課などが担っていることが多い。公平や信頼性の観点から、独立した部署が公務上外の調査を行うようにすること。とりわけ上司等からのハラスメントによる精神疾患については、第三者委員会を設ける等して事実認定を行うこと。

【回答1】 平本です。質問の前段部分については、地方公務員の使用者である地方公共団体に代わって職員の公務災害補償を行うものであることから、地方公共団体との緊密な連絡や連携が保持されることが必要であるかなと思っています。そのため地方公務員災害補償法においても地方公共団体との便宜供与によって、地方公共団体の職員が基金の業務に従事すると定められており、そういう考え方に基づき現在の体系になっていると考えます。なお、基金支部の組織や職員配置については、業務量、人員の効率的配置等、留意しつつ、それぞれの支部において設計されており、本部としては、各種研修などによって専門能力の向上を図ってまいりたいと考えております。

 補償課の永作です。後段部分については、公務災害補償法に基づき、お出し頂いた申請内容を基金が審査し、公務上か公務外かの認定をします。審査にあたり、客観的資料として第三者の証言を重要としています。請求者の方からの申立内容について、職場関係者や同僚に対し、証言を、確認をお願いしています。
 上司からのパワハラによる精神疾患については、例えば、所属長がハラスメントに関与していることもあり得ますから、そのような場合は支部から直接、被災職員の同僚の方に確認や証言をお願いしたり、また、封をした調査書を渡してご記入いただき回収するなど、一定の配慮を保ちながら、調査が公平・適正になるよう努力しているところです。

【要求2】非常勤の会計年度任用職員についても公務災害の補償となるように法改正すること。

【回答2】 企画課の佐藤です。ご承知の通り、我々は補償の実施機関ですから法律の改正自体はできませんし、ご要望にお応えする立場でも無いんですが、実際、非常勤の中で補償対象になっていないもの、現状でその地方公共団体の条例で定められている方は多々あり、非常勤の種類が非常に千差万別で、総務省でもそういう要請を受けて、いろいろ検討はされているようですが、なかなかうまくいかないという話は聞いています。実際に法律が改正がされるような場合であれば、基金としても協力して補償に支障が無いよう適切に対応して参りたいと考えております。

【要求3】公務災害防止事業の事業ごとの予算および決算の内訳を開示すること。

【回答3】 「開示」という意味は、ホームページなどで公表して欲しいという意味であると理解したんですが、確かに今、公務災害防止事業の予算については一応、予算書で内訳を示していますが、決算額については合計額は開示してますが、内訳までは公表していません。この数字については別に隠しているわけでなく、単純に内訳を開示していないというだけです。今後、公表できるよう検討して参りたいと思います。もし直ちに今、例えば内訳の決算、予算額と決算額を知りたいという意味であれば、情報公開請求していただければ、すぐにお出しすることもできます。

【要求4】負担金のメリット制は公務災害隠し、認定請求の抑制、補償の理不尽な停止につながるので、ただちに廃止すること。

【回答4】 確かにご意見はごもっともだと思いますが、メリット制の導入にあたっては、その地方公共団体の費用の負担、公平を図るということで、更にその任命権者側の公務災害防止の取り組みを促すということで、平成22年から導入しているものです。実際いろいろ事務をやる上で、例えば、民間で言ういわゆる労災隠し、公務災害隠しという点で言うと、請求書を出したのに所属長がなかなか証明をしないという話も聞いたことはありますが、現状、運用上は本来であれば所属長に請求書を出して、所属長が証明し、任命権者が意見を付して、基金支部に請求書が上がってきます。所属長がいつまで経っても証明してくれず、上に上がらない場合でも、基金に直接出して頂いてかまいません。実際、請求書の注意書きの欄に、所属長が証明しなければ基金に相談してくださいと書いてあります。そういった改正も最近しましたので、基本的には、そういう事案があれば、基金支部に相談していただければ受け取りますし、証明に関しては基金支部の方で所属の方に現状を確認していくという取り組みをしています。なので、労災隠しという点とかメリット制に関しても、これまでも地方公共団体から、やめてくれとか、おかしいだとか、そういった意見も伺っていないので、今後、もしそういった意見があれば、メリット制に関して改正とかを考えていくことになると思いますが、現状はそういったところになります。

【要求5】脳・心臓疾患、精神疾患や石綿関連疾患等の原因が複合的な疾病や、負傷でも事実関係や認識の相違を理由に公務外決定をする場合は、被災者ないしご遺族からの面談による聴取を行う旨、基金本部が調査実務要領を作成して各支部に周知すること。

【回答5】 公務災害の認定請求は、地方公務員災害補償法に基づき行うこととされています。認定もその法律の規定に基づいて行うこととされています。具体的な手続きは、公務災害認定請求書によって申立いただいた内容を基金のほうで審査します。審査にあたり、基金として、客観的な資料として第三者の証言を重要としています。また、同僚の職員の証言も求めておるところです。また、請求者から提出する資料の分量については特に制限を設けておりませんで、精神疾患等の複雑な事案については、請求書の別紙などの形で、出来事の詳細をご記載いただいています。かなりの情報量になることもありますが、それらの内容について、我々のほうで丹念に読み込みながらしてございます。
 また、被災者やご遺族との面談による聴取という話ですが、書類で頂いた内容を丹念に読み込んではいますが、聴取という話が適当ということになりましたら直接お話を伺うことになるかと思います。請求者から追加の話や主張があった場合も、その主張なども踏まえ、必要と認められる事項について再度、関係者への調査なども行い、適切に審査を進めているところです。

【要求6】基金本部専門医の名簿ならびに選任基準を開示すること。

【回答6】 基金本部専門医の名前や現職等については、個人情報であり、非開示情報にあたるとしています。また、今までありませんでしたが、適正な審査に対する圧力の防止効果です。専門的かつ高度な医学的知見を有する先生方を確保する観点からも、従前からこのような取扱をしています。また、基金本部の専門医は、深い知識を有する先生方を理事長が委嘱する形であり、その先生の確保にあたり、実績など、先生のご紹介による方法は確実で有効であると考えています。

【要求7】公務災害認定請求に上司が協力しない場合には、直接基金支部が対応できるということが職員に十分周知されていないので、各支部に全職員に周知するように通達すること。

【回答7】 現状の運用上は、所属長が証明を行わない場合は基金支部に直接言って頂ければ、基金支部のほうで調査するという運用にしています。支部に対しては、そういった周知はしているつもりです。毎年、支部監査で支部職員とヒアリング等を行う際に請求方法などの話もよく聞いて、支部の認識としても当然、所属が証明しない時は受け取って確認するという認識を持っているのがほとんどです。逆に、そういった認識を持ってない場合は、支部監査の時に指摘しているところです。もし、他の支部で、職員の周知が十分でないというご意見であれば、再度、内部で我々も共有させていただき、今後、新たな周知が必要だということであれば検討させていただきたいと考えています。

【要求8】基金本部審査会における口頭意見陳述について、時間はともかく人数を制限することや、傍聴させないことは不当かつ不合理であるので、改めること。

【回答8】 基本的な考え方として、再審査請求の審理は非公開であり、口頭意見陳述は書面審理であります。再審査請求において口頭意見陳述は、例外的に陳述の機会を保障する行政不服審査法の趣旨から、実際に口頭意見陳述を行う方のみ出席するというのが基本的な考え方です。また、審査会を行う会議室のスペースの制約から、出席者は原則3名とお願いをさせて頂いててます。3名以上の出席を希望される場合は、審査会の判断によって可能な限り参加を認めるなど、請求人の希望に添った対応をして参りたいと考えています。

【要求9】各支部だけで審査・認定せず、理事長協議とされている精神疾患、石綿による疾病、心・血管疾患、脳血管疾患、補償課長への照会とされている「放射線障害」(の一部)、 職業性難聴、振動障害、 頸肩腕症候群、「指曲がり症」、脳脊髄液減少症、低髄液圧症候群、 化学物質過敏症、シックハウス症候群については、いずれも公務災害決定まで相当時間がかかっている。法第一条の主旨に基づき、職員の被害に対する迅速な救済に努め、標準処理期間に準じた期間で決定を行うこと。

【回答9】 疾病事案、特に、脳や心臓疾患、精神疾患やそれによる自殺、石綿による疾病事案等については内容が複雑なものもあり、関係資料の収集、分析等に時間をいただく場面が多くあります。また、医学的意見も十分に踏まえて検討する必要がありますので処理に時間を頂く事案も生じているところです。これらの事案について、認定の公平性の確保の観点から、処理にある程度の期間を要することがやむを得ないものはありますが、認定事務の遅れは請求者に不利益を与えるばかりでなく、関係資料を散逸するなど認定事務に支障を来す場面も生じさせかねません。本部と支部との情報共有や意思疎通を図りながら適切な進行管理に努め、事案処理の迅速化に尽力しているところです。

【要求10】精神障害等の公務災害認定基準を、23年9月の厚生労働省の労災認定基準改正に即して、直ちに改正すること。とりわけ住民からの不合理なクレーム等のハラスメントについて適確に例示すること。

【回答10】 令和5年9月1日付で厚生労働省から心理的負担による精神障害の労災認定基準が改正されたことは承知しています。基金においても、この基準に基づき、精神疾患等の公務災害認定の実施について基準の改正を行い、令和6年3月22日から適用することを各支部に通知しました。また、住民からの不合理なクレーム等のハラスメントについても、業務による負荷の検討にあたって活用しています。この業務負荷分析表においても、6月の改正以前から、業務負荷の認定として、住民等との公務上との関係という欄を掲げており、分析表もあわせてご活用頂いています。

【要求11】石綿疾患について、厚生労働省『石綿ばくろ歴把握のための手引』に示された「石綿に関する作業・類型20 吹きつけ石綿のある部屋・建物・倉庫等での作業(教員 その他)」などを踏まえて、教員の中皮腫などを積極的に公務災害認定すること。

【回答11】 石綿等との関連が明らかな疾病か等については、労働者災害補償保険制度における、石綿における疾病の認定基準が平成20年に定められたと承知しています。それに準じて、被災職員が石綿ばく露したことを証明する客観的資料や医学的意見を踏まえて、適切に判断して参りたいと思います。

【要求12】腰痛の認定基準については、認定状況や最高裁判決を踏まえて、腰痛を起こしやすい業務を把握し、例示するなどして、抜本的に見直すこと。

【回答12】 腰痛の事案については、昭和52年に定めた認定基準に基づき適切に認定しています。現時点では特段見直す予定はありません。また、最高裁の判例等については、一般的に個別事案の事実認定にかかるものであり、認定基準の改正が必要とは考えていません。今後、認定基準に関わる司法判断があった場合は、その認定基準の改正が必要かどうかも含め、検討を進めて参りたいと思っています。

【要求13】頸肩腕症候群等の認定基準についても、労災保険における、「上肢障害」の認定基準を参考にして、抜本的に見直すこと。

【回答13】 頸肩腕症候群など上肢業務に基づく疾病の取扱は、労災と公務災害の認定基準に準じ、平成9年に定めています。それに基づき認定業務を進めており、現時点では改定、改正は予定していません。

【要求14】基金本部の発表によると、新型コロナウイルス感染症の公務上認定件数は、令和3年3月24日現在312件、令和4年3月31日現在914件、令和5年11月30日現在3374件であるが、各都道府県ないし市支部ごとの公務上認定件数を明らかにすること。また、5類移行を理由に中止した『新型コロナウイルス感染症に関する認定請求件数、認定件数』の公表を再開及び継続すること。

【回答14】 令和5年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことに伴い、その他の5類感染症と同様に、同年12月に認定請求件数と認定件数の公表を取りやめたところです。今後、公表の再開や継続については、新型コロナウイルス感染状況や5類感染症から他の分類に移行された場合も踏まえ、検討して参りたいと考えています。

【要求15】新型コロナウイルス感染症に関する、いわゆる罹患後症状のみの請求ならびに公務上認定件数、同感染症のワクチン接種による副反応の請求ならびに公務上認定件数を明らかにすること。

【回答15】 罹患後症状については、症状が様々であり、どの期間から罹患後症状かという判断が困難であることから、罹患後症状による請求件数、公務上認定件数の把握は困難です。また、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種による副反応の請求や公務上の認定件数は、個人が特定される恐れもあることから、お答えを差し控えさせて頂きたいと思います。

【要求16】新型コロナワクチン接種による健康被害により公務災害認定請求があった件数、療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償請求におけるそれぞれの公務上外の決定件数。また、公務上決定した請求につき職種と傷病名を明らかにすること。集計していないのであれば集計すること。

【回答16】 傷病者個人の特定につながる恐れもあるのでお答えを差し控えさせて頂きたいと考えます。

【要求17】「令和4年度業務報告書」の「Ⅱ業務の実施状況3不服申立ての状況」に記載のある支部審査会の裁決「取消し12件、一部取り消し3件」、および審査会の裁決「取消し3件」の事案の概要を明らかにすること。

【回答17】 支部審査課における取消しおよび一部取消しについては、負傷にかかる事案が6件、うち1件が一部取消しです。精神疾患にかかる事案が2件。通勤災害にかかる事案が3件、うち1件が一部取消し。療養補償、障害補償にかかる事案が4件、うち1件が一部取消しです。審査会における取消し3件については、膝を負傷後に残存した障害が認められた事案、交通事故により発症した疾病が認められた事案、精神疾患により自殺した職員の公務過重性が認められた事案です。

【要求18】「令和4年度業務報告書」の「Ⅱ業務の実施状況4訴訟の状況」に記載のある、判決が言い渡された事件27件の、棄却、取消し等の内訳を明らかにすること。「取消し」された事件の概要を明らかにすること。

【回答18】 令和4年度に判決が言い渡された27件のうち、棄却は24件、取消しは3件です。この当該判決については地裁、高裁、最高裁の判決を含んでいます。判決において処分取消しが言い渡された3件については、熊本地裁で、肝膿瘍および化膿性リンパ節炎により死亡した職員の公務起因性が認められた事案と、横浜地裁と東京高裁それぞれで、膝を負傷した職員の公務起因性が認められた事案の合わせて3件です。

【要求19】通達〈「腰痛の公務上外の認定について」の実施について〉で「治療の範囲」の項目で「回復させるための治療の必要上既往症又は基礎疾患の治療を要すると認められるものについては治療の範囲に含めて差し支えないこと」としているにも関わらず、根治治療は公務災害と認めないとされた事例が度々ある。通達周知し、根治治療も公務災害での療養を認めること。

【回答19】 通達「腰痛の公務上外の認定について」の項目「治療の範囲」に記載された通知については、基金のホームページや通達集に記載しており、あらゆる研修や支部監査などを通じて遺漏がないよう今後も周知を図って参りたいと考えています。

【要求20】公務上災害疾病の回復のために「既往症又は基礎疾患の治療を要する」場合は、腰痛に限らずあるので、通達などで同じ運用をするよう周知すること。

【回答20】 療養補償とは公務上又は通勤により生じた傷病に対する必要な療養を行うものであり、医学上、社会通念上、妥当と認められるものは対象になります。要は、この要件を満たすものであれば、仮に既往症や基礎疾患の治療があっても療養補償の対象として認められます。この取扱は腰痛に限ったものではありません。療養補償の取扱については、支部職員に対して毎年行っている初任者研修の資料にも書かれていますし、もし取扱を誤るようであれば、照会頂ければいくらでも回答します。現状、そういった取扱になっていますので、引き続き周知徹底して参りたいと思います。

【要求21】茨城県の龍ヶ崎消防署の高度救助隊員であった故・宮本竜徳さんの「致死性不整脈」について、ただちに公務上と認めること。

【回答21】 宮本さんの事案については何度か川本さんと電話でやりとりさせて頂き、5月31日の審査会で結果としては既にお伝えしている通りです。我々も事務職員ですので個別事案について申し上げることはできませんが、そういう形でさせて頂いています。

宮本藤子さん発言

【宮本】 宮本藤子と申します。本日は息子、宮本竜徳の公務外認定処分に関し、発言の機会を頂きありがとうございます。竜徳は茨城県稲敷広域消防本部のスーパーレスキュー隊員でした。職場内で体力錬成中に心停止を起こし、事故死をしました。心身共にたくましい盛りの25歳でした。死因を特定する解剖結果から、不整脈源性右室心筋症、ARVCであったとわかりました。事故から7年が経ち、やっと基金本部審査会から出た裁決書は、竜徳の尊厳を無視した公務外認定でした。私は失望しました。なぜなら、基金茨城県支部審査会の裁決書の中に、同支部審査会が依頼した専門医、国立病院水戸医療センター小泉医師の意見書があったからです。その医学的意見書には、本人の素因より、スーパーレスキュー隊のアスリートレベルの職務が、少しずつ心臓に影響を与えARVCとなった。そして直前の「体力錬成」は身体活動のメッツ(METs)表から9メッツ以上のものだと判断ができる。この負荷が起因して心停止を起こしたと、はっきり公務との起因性が記載されておりました。にもかかわらず、なぜ公務外となったのでしょうか。地方公務員災害補償基金制度上当てはまらないという理由で医師の医学的意見書まで無視してこのような決定になったのでしょうか。誰のための災害補償制度なのでしょう。竜徳の事故死で前例を作りたくないために公務に起因する事故死でも公務外とされたのでしょう。このような判断しかできない基金とはもう裁判で争っていくしかありません。

 オレンジ色の救助服は人命救助の印。竜徳の誇りでした。スーパーレスキュー隊は、「消防業務最後の砦」と言っておりました。潜水士でもある竜徳は「一生現場で、現役で、人命救助をする」とも言っておりました。竜徳は人生の最後までスーパーレスキュー隊員だ、職務で自分の限界を超えてしまい、事故死をしました。ですから、そんな息子を私は誇りに思います。ともあれ、竜徳はなぜ命を落としてしまったのでしょうか。そして、どうしたらこの事故は防げたのでしょうか? 命は何よりも尊いものです。生前にARVCの診断がされて運動量をセーブしていれば、まだ竜徳は生きていたのだと悔やまれてなりません。基金には、「竜徳が死んだ」という結果から、「本来、どうすればよかったのか」「何をしてはいけなかったのか」を考え、ARVCの人が心臓突然死に至るリスクを『教訓』としていただきたいと思います。私は竜徳の命を活かす為には手段は選ばず、広く世の中に裁判で訴えます。誰かの責任を追及するのではなく、ARVCのリスクを『教訓』として、上手に伝えていきたいと思っております。

 最後となりますが、私は竜徳が持っていた人命救助への熱い想いを受け継ぎ、過労死撲滅に向けて仲間と共に戦い続けます。竜徳の事故死を無駄にする事無く、教訓となるように。ありがとうございました。

【川本】 私も相談を受けて、基金は本当にひどい、裁判になるだろうと思いましたが、正直7年もかかるとは思ってませんでした。支部審査会の段階で弁護団にもお願いして訴訟と同レベルのことを、やれることは全部やりました。消防署の署長さんはじめ皆さんにもすごくご協力いただき、通常は裁判手続きでも余りない現場の再現ビデオ撮影までやりました。支部審査会の意見陳述の時には彼が訓練で使っていたものを貸し出してもらい、持っていき、見てもらいました。そこまでやって、なんでこんなにかかるのか、それが最大の予想外です。しかも、審査会の医師が2度にわたる審査会からの意見聴取に対し、公務が原因である、確かにもともと病気はあったが訓練が原因だと明確に言い切ったにも関わらず、本部の審査会も公務外とした。ものすごく意外です。考えられないです。もっと言うと、裁判所も、私は入れませんでしたが、進行協議の中で基金に対し、自庁取り消しできないんですかとまで言ったと聞いています。で、異例の早さで結審しました。再開されましたが。もうほとんど全部、主張が出尽くしてますねと、最初から地裁が言うぐらい、やれることは全部やっています。基金がひどいのはもう承知、認定基準がおかしいとも思ってます。だけど、7年かかるとは本当に思ってませんでした。最初の決定は半年でおりてますから。だから今からでも遅くない、すぐ取り消してもらいたいというのが要請の主旨です。
 どう考えてもおかしいです。恐らく、最初に聞いた本部の医師のメンツだと思います。他の医師はみんな肯定的で公務が原因だと言ってます。こちらがお願いした先生方も、支部審査会がお願いした先生すらそう言ってます。公務外と言ってるのは、最初に言った本部の医者だけです、非公開の。恐らくその医者のメンツだけだと思います。それしか考えられないです。だって代理人だって探さないとわからないとか、なんとか3ヶ月で出すとか言うてますけど、なんぼ出てるか知りませんが。支部審査会の決定は去年5月ですよ。もう意見書も出ている。否定するならすぐ探せばいいんですよ。それができなかったんですよ。メンツだけなんです、申し訳ないけど、この医者。しかも非公開。それがものすごい憤りです。厚労省は公開してます。開示請求すれば出すんです。なぜ基金は出さないんですか。おかしいです。プライバシーとか関係無いです。圧力が無かったとは言ってません。民間はありました。それを厚労省は最初出したくないから、こんな被害を受けた、被災者あるいは労働組合とか労働団体から脅されたとか言って、内閣府の情報公開審査会に出しましたが、否定された。だから仕方ないから全部出してます。今、じん肺診査医も全員出してます。基金だけですよ。是非、見直してください。1日も早く、とにかく取り消してください。公務上で認めてもらいたい。

【基金本部】 今の話は本部の中で共有させて頂きます。

【川本】 よろしくお願いします。

参加者との質疑応答

【酒井】 関西労働者安全センターの酒井です。要求19の通達「腰痛の公務上外の認定」について、項目「治療の範囲」の「回復させるための治療」には、腰痛は保存療法で、急性症状の消退までとありますが、適切な保存的療法によっても症状の改善が見られない場合は手術もあるということだと思います。ただし、その場合の手術方式が、腰痛の原因によって違うので、手術によって腰部の病変を改善できるかは医学上、慎重に考慮しなければならないと書かれています。しかし、うちの組合員のケースだと、考慮された経緯が全く無い。本人は腰痛ですから、ある程度の年齢いくと皆、きつい環境で一生懸命やってきたんですが、一切検討されていません。そういう意味では、基金のドクターが判断したから、としか言いようが無いケースです。先ほど、初年度研修でやるので徹底していると言われましたが、ちゃんと聞けてない気がします。本来は、こういう場合は公務上と認められ得るのでその可能性も検討してくださいと、支部の医者に聞かないといけないのに、「関係ありますか? ありませんか?」としか聞いてない。実際に質問状の中で。どういう設定で、どういう聞き方をするかについても指導していかないと、認められるものも認められないと考えています。
 次に、またうちの組合員の話です。通勤災害だったのですが、ちゃんと検討してくれと言ったところ、この通達は公務上外の認定についてなので通勤は関係ない、というのが支部の回答でした。言い間違いとか実は見解が違うということは無いかと聞いたら、基金としての見解はやっぱりそういう解釈でした。これについて、通勤災害でも公務対象になる、この通達の対象になるという考え方で良いんですよね? 通勤災害と公務災害で、その治療範囲が違うことはないですよね?

【基金本部】 はい、治療の範囲は同じです。

【酒井】 ということがあります。普通に言っちゃってるんで、大阪のローカル基準ではそう使っていると。

【基金本部】 どこの支部で言っているんですか、それ。

【酒井】 大阪市支部です。(注:後日、大阪府支部と判明)

【基金本部】 私、今年、大阪市支部に、関西に行くので、ヒアリングする機会もありますから、そういうご意見があったことはお伝えして、確認することもできます。

【成田】 要求15について。ワクチン接種による副反応の請求件数を明らかにするのは難しいとのことですが、件数で個人を特定することにはならないと思います。どこからが罹患後症状かというのは難しいかもしれませんが集計して頂ければと思います。ご多忙でしょうが、要求16も同様に集計して頂けたらありがたいです。
 要求11の教員の中皮腫に関して。私は普段の相談業務で、多くの公務員の方から、現業職以外の中皮腫等の相談を受けます。かつて埼玉県戸田市の小学校の先生が心膜中皮腫になって、公務外になり、裁判に訴えた事案の支援活動にも関わりました。残念ながら、地裁で勝ったが高裁で負けました。ざっくり言えば、たくさん吸ってないだろうという理由です。ある程度ばく露期間はあったと思いますが、これだけ吸ったら病気になるという閾値がないので、今の審査は厳しいと思います。かつての庁舎や公務職場にはたくさんアスベストがあったと思いますので、なるべく認定して頂くよう、努力していただけたらと思います。

【天野】 何か回答、無いんですか。

【基金本部】 すいません。アスベストの件で閾値と言うか記載があるページがあり、かつて学校の建物にも使われていたことがあり、我々が審査、判定する時は勤務歴なども確認し、レントゲン写真とかも取り寄せて専門医に確認してもらい、必要であれば肺とかの標本を専門機関に送って見てもらっていますので、ばく露歴も、たくさん吸っているかいないか、レントゲンでいろいろと判断しますので、今後とも適切に判断してもらいたいと思っています。

【川本】 ちょっといいですか、そこじゃないんだよ。肺癌とか石綿肺じゃないです。中皮腫の人のレントゲンを見ても石綿のばく露歴はわからないこと多いです。プラークもないし、じん肺もない人でも山ほど中皮腫になっています。学校には80年代にアスベスト、文科省で一生懸命調べたら、いっぱいある。証拠が残っている。だから普通考えたら、もっと学校の先生の請求があってもおかしくない。民間ではものすごい数、認められています。工場にアスベストがあったというだけで、そこで働いてなくても、作業で取り扱っていなくても、環境下でアスベストを吸って、認められている中皮腫の人は山ほどいます。100件や200件じゃない。でも、学校で認められた人は全然無い。おかしいよ、どう考えても。普通、学校の先生はしゃべりまくって働いている。このあいだ兵庫で認められた水道局の人も、小学校の校外学習でしゃべっとったわけです。アスベストに直接触ったわけでも、アスベスト含有製品を切ったわけでもないが、認められた。学校の先生なんてもっとしゃべっとるわけですから、普通考えたらもっといるはずです。だから申請してない人が山ほどいると思っています。皆さん、まず絶対、公務員共済に入っているから、中皮腫で亡くなった方はわかる、ある程度。もっと請求を勧奨していいぐらいです。
 コロナの関係については、個人が特定されるから出せないというのは絶対おかしい。撤回してください。副反応の人が1人公務災害になってますと言って、どうやって特定するんですか。しかも全国で1人とか言うたらわからんでしょう、そんなの。

【天野】 その理屈で言うと、認定数が少ない公務災害、職業病関係の数字は全然公開できないことになります。

【川本】 少ないです、副反応は。ちなみに、民間でどのぐらい認定されているか、ご存じ?

【基金本部】 いや、正直わかりません。

【川本】 コロナの予防接種で救済される人が全国で何人かも知らないでしょう。5人や10人じゃないです。特定されるわけがない。業種についても厚労省は出してます、全国の。ものすごく増えたから局ごとに出すようになりました。最初は「無理です」と頑として出さなかったが、翌年にものすごく増えて、全部出した。特定されるという理由が通じなくなったのと、統計上、職業病の統計をゆがめてしまうからです。ものすごい数だから、混ぜてしまったら、監督署が災害や職業病の防止活動するときに判らなくなったからです。コロナと、コロナ以外の職業病の数字を分けないと防止活動もできない。公務災害も同じです。コロナは多いんです。全国で3倍に増えてるのに、政令市の横浜や川崎や相模原が少ないのは、どう考えてもおかしい。たぶん請求させてない、申請してない。政令市以外の小さい自治体は真面目にやってるが、大きい自治体は面倒くさいからか、抑制している。どうせ公費で出るから、公務災害にしないで、病休を使って休めばいいと。恐らく都市部ほどその傾向が強いと思ったので、各支部に確認して、数字を全部出してもらったんです。

【古谷】 5類移行したからと言って、疾病の話だけじゃなく、皆さんの仕事から言えば、コロナは職員にどういう影響を及ぼしているのかという立場から、状況の公表を継続してほしい。少なくとも年次報告書では触れるべきだと思う。厚労省は、毎月の更新はまだ続けてますし、毎年5月に前年度の労働災害状況を公表する際もコロナに必ず言及してます、死亡についても。人事院も定期公表はやめたが、年次報告書にはコロナの内訳を出します。地方公務員災害補償基金の年次報告書は決められた型通りで、新しいことは追加されないのかわかりませんが、触れない方がおかしいと強く思います。せめて、年間の動き、今、話が出てるようなことも含めて、特定されるという恐れよりも、職員に有意義な情報を出した方がいいと思います。

【天野】 せめて情報は出してください。厚生労働省は健康被害なり副反応なり、請求者件数と認定者件数を出しています。なぜ厚労省が出せて、こっちは出せないんですか。個人が特定されるとおっしゃったが、全国で何件ですって、それでどうやって特定するのか。ナンセンスもいいとこです。出してください。

【基金本部】 厚生労働省また人事院と、我々基金は、組織の規模や体制が異なることはご理解頂きたい。可能な範囲で情報提供の議論は検討させてもらいたい。

【鈴木】 追加で、要求15の罹患後症状の公表の話ですが、治療期間がどれ位であれば罹患後症状かという見極めが難しいとの回答でしたが、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き・別冊 罹患後症状のマネジメント」はご存じですか? そこで、2ヶ月以上、治療継続と定義づけされています。なので、その回答のところはクリアできるかなと思います。よろしいですか?

【基金本部】 でも、それは罹患後症状、いろいろ様々な症状があるということもございますので。

【天野】 療養とか休業が一定期間以上に及んでいる方は、ほぼ間違いなく罹患後症状です。コロナの急性症状で公務災害で受給する方は、2週間とか1ヶ月位ですよね。それ以上長期にわたりコロナで療養・休業している公務災害の方は罹患後症状ですよ。我々は日常的に、コロナ罹患後症状で労災申請したい、公務災害申請したいという相談を受けていますが、大抵の方が、1年とか2年の療養を余儀なくされています。療養期間ですぐわかります。分類、難しくないですよ。あなた方がやろうとするか、しないのかの問題です。
 私ども東京安全センターで受けた相談で、罹患後症状で1年半以上療養している方が公務災害に申請したが、1年近く経ってもまだ返事がない。感染状況を聞いたら、職場で集団感染が起こった中で感染したと。感染経路の特定までは至らないが、職場で複数人の感染が発生していた。しかもプライベートでの感染の可能性は無い。もし労災申請したら3~4ヶ月で結論が出るケースです。それがまだ結論が出ない。支部の調査担当に電話したが、回答できないルールになっているとして、どういう調査をしているのかも何も回答してくれない。労基署だったら、少なくとも調査がどこまで進んでるかぐらいは答えます。長期にわたって調査している事案については請求人に進捗状況を説明するのは厚労省の労基署のルールです。公務災害補償基金はそれも無い。だから、半年経っても結論が出なくて困っているという電話がかかってくるのが実態です。

【基金本部】 いろいろご意見を頂きましたが、罹患後症状がどういうことかというのは判断がなかなか難しいこともありますので、そこはご理解頂きたい。

【天野】 罹患後症状についてはデータをきちんと集め、請求から認定までどのぐらい時間がかかったかも含め、きちんと確認しないとダメだと思います。ただでさえ、労基署に比べ、公務災害補償基金は時間がかかりすぎる。体制が不十分で限界があることはわかるが、ひどすぎる。現場の状況を把握するという意味でも、数字を取る努力をしなくてはダメだと思います。

【基金本部】 繰り返しになりますが、罹患後症状も判断が困難であろうかと思いますのでご理解頂きたい。

【天野】 労基署は3~4ヶ月で結論が出ます。労基署も人は減らされ、件数は増えて大変な中でも一定期間で結論を出すという指針を作って回しています。請求人の生活に関わるからです。公務員も同じでしょ。特に、罹患後症状については調査から決定まで時間がかかりすぎている。迅速に結論を出す仕組みを整えて欲しい。
 我々の肌感覚としては、コロナの労災申請の相談は減ってきているが、罹患後症状の相談は減ってない。罹患後症状で困っている方は一定数確実にいて、かなり悩んで申請に至るケースが多いです。すると、労基署はある程度の期間で結論を出すけど、公務災害はすごい時間がかかるうえ、調査の進捗状況も教えてもらえない。体調が悪く、休職せざるを得ないのに、病気休暇も終わり、無収入の状態のまま結論を待ち続けているんです。罹患後症状の請求や認定件数も出てこないようでは、こんな現場の状況を把握できているのか、すごく心配です。罹患後症状の申請に対する対応も含めて現場の実態を把握するようにしてください。

【鈴木】 罹患後症状やワクチン接種など医学的な因果関係の確認が必要な事案は本部扱いになるのですか?要求9であげた疾病のように、支部では因果関係が判断できないから本部専門医の扱いになるんですか?

【基金本部】 本部には上げてきています。

【天野】 罹患後症状とワクチン接種の健康被害は本部扱いだから時間がかかっているわけですね。

【基金本部】 労基署も定員が削減されているという事情があろうかと思いますが、我々は労基署とは規模や体制が異なることはご理解をお願いしたいところです。

【川本】 労基署とは請求件数も対象人数も違います。そんなこと言うなら、まず認定すればいい。例えば、明らかにうつ病でコロナと関係ないとか、もともと鼻の病気だったとか、ややこしくて、労基署がまれに困ることもあるが、それは請求が上がってきたときに判断すれば良いだけの話。コロナ感染症の遷延化があっていろんな症状が出ているのは前提です。それを全部把握していないと決められないというのは、おかしい。その中の1つでも起因性があったら、まず認定すれば良い。副反応の場合もいろんな病名で認定してます。その後で、どんな治療しているのか審査すれば良い。

【鈴木】 罹患後症状も、ワクチン接種後の副反応も、症状は多岐にわたります。それを本部専門医が一つ一つ因果関係を調べて判断するとなると相当時間がかかります。症状ごとに血液から神経から内臓、心臓、肺と多岐にわたるので、現状の基金本部の審査体制ではたぶんパンクします。まずは広く認定する前提で改めないと、請求して3年経っても決定が出ないというのが続出すると思います。症状が多岐にわたるという側面を踏まえ、なるべく認定する形で審査体制を簡易化することを真剣に検討してください。

【天野】 本部預かりにしすぎているのでは? 厚労省も最初、通常のコロナ感染症に関する労災申請を本省協議にしようと言ってましたが、すぐに件数が増え、今は現場の労基署レベルでやっています。罹患後症状も同じ。労基署が局医に見解を確認し、主治医からも罹患後症状という診断が出ているなら、特に問題無く認定している。基金本部も、適切で迅速な救済という本来の目的に従って、適切な期間に結論を出し、支給すべきものを支給し、今困っている被災労働者をサポートすべきです。慎重にやって支給が遅れて労働者が困窮したら、何のための基金ですか。本部預かりにしても、半年以内に結論を出せる体制を維持しているなら良いが、現実はそうじゃない。その点、少し見直して欲しい。そういう議論は基金本部の中でないんですか?

【基金本部】 重ねて恐縮ですが、厚生労働省とこちらとの組織体制が違うというのはご理解願いたい。精神疾患も含め、時間がかかっているというご指摘も十分認識しており、迅速化すべきかなと認識しています。支部とのやりとりについても、いろいろな調査や支部監査で出張する機会をとらえて、ボトルネックになっている事例やその解決策を把握し、改善できるようなところは改善し、迅速化に努めて参りたいと思います。

【古谷】 負担金のメリット制を調べてみたら、広島県のホームページに、県下の適用される団体・職種ごとに、何年度に何%上下したかという一覧表があった。福山の消防組合はマイナス15%、呉市の消防職員はプラス15%という一覧表。例えば、全国の自治体について、同様のことがわかるとか、規模の問題として、どれぐらい結果的にいくらまけてもらって、プラスマイナスいくらになってるみたいな資料はありませんか?

【基金本部】 支部レベルでやってる可能性はあります。基金本部では中核市以上ですかね。都道府県と政令市と中核市がメリット制の適用になっていて、基金本部では当然、いくらかというリストはあるので。ただ、それを公表しているということではないです。

【古谷】 開示請求すれば出ますか?

【基金本部】 もちろん個別に負担金を算定しているので、いくらかというのは当然、我々は把握しているので。

【男性】 労災で事業年報だとプラス何%になったのが何事業所ぐらいは出ているが、今のところ公表資料ではないのね。

【基金本部】 資料には、個別の負担金は無いです。

【川本】 情報開示請求すれば出る可能性はある?

【基金本部】 どうですかね。検討しないとわからないですが、別に非開示にする情報ではないような。

【古谷】 非開示にすることは無いと思う。どう整理してるかはわからないが。

【川本】 表にしてるかどうかはともかく、ひとつひとついくらかというのは当然ありますね。

【基金本部】 個別ごと、団体ごとの負担金ですよね。それがないと判定できませんから、あります。

【古谷】 マイナスだけじゃなく、結構プラスもあるね。

【基金本部】 あります。当然、メリット制はそういうもので、増減してますから。

【古谷】 実態として、労災保険はマイナスの方が多い。

【川本】 要求7について。僕らによく相談があるのは、あなたのケースは認定が難しそうだから申請を取下げるよう言われたという相談がものすごく多い。普通の公務災害だったら請求したらすぐ認定されますが、少し長くなった途端、難しそうで無理そうだから取り下げたらと言われたという相談が毎年のようにあります。いろんな自治体で。もう一つは、調査が長くて仕方がないという相談。支部の人に研修したり周知したりしていると思いますが、問題は、職員が知らないということ。つい半年前も、東京都のある区役所で働く人からの相談で、支部から、上司の承認がないと困ると言われたと。そんなことありません、本部のホームページを見てくださいと言ったら、確かにそう書いてありますが、支部の人からは、やっぱり上司の承認がないと無理だと言われたと。真面目に通知を見て研修も受けている大きい自治体の支部の担当職員でも、わかってない人もいるんです。つまり、なんぼ言うても、異動も多いし無理なんです。だから支部の全職員にきちんと言えというのが今回の要請の趣旨です。公務災害は30~40年働く中で1回あるかどうかです。それなりのインテリジェンスを持った人しか公務員になれないですから、書いてあるのだったらそうだなと、それで収まります。確かに民間だと、社長がハンコを捺さないからどうしようという相談がもっと多いですが、すぐに監督署に言えばやってくれます。公務員は、いまだ一般職員からうちのようなところに相談に来るんだから、やはり支部の全職員に周知する必要がある。支部に言って、全職員に周知してほしい。いろんな事情で上司に言えない、相談できない時は支部に言ってと、入職時の職員研修でぜひやっていただきたい。

【鈴木】 2点あります。1つは、要求17、18の取消しの中身の話ですが、先ほどこの場で聞いて、概要をお答えになりましたが、その程度の回答であれば、ぜひ毎年、業務報告の中であげて公表して、皆さんにわかるようにしていただきたい。
 もう1点はワクチン接種の副反応に関する質問です。医療従事者等以外の職員にかかる新型コロナワクチン接種の公務遂行性について、という令和4年3月7日付の事務連絡(22頁参照)の中身の質問です。公務遂行性を認めるものとして①から⑤まで、5つの要件を挙げています。この解釈ですが、①から⑤すべてを満たさないと公務遂行性を認めないということなのか、1つでも満たせば認めるということなのか、あるいは、総合的に勘案して公務遂行性を認めるということなのか、教えていただきたい。

【基金本部】 現在は5類に移行してますので、現時点での考え方を申し上げます。①のところで、4年の当時は、高齢者等の接種と並行して行われるのは優先的な接種が行われていることではないと思いますので、現時点では対象として考慮することはありません。2番目の、新型コロナウイルス感染症の危険の高い職種であると認められる医療従事者とか消防の救急隊員とかは今も該当すると考えています。

【鈴木】 例えば、③「警察・消防等の公務独自のものであること」の要件を満たす職種はかなり限られます。公務独自でない職種の公務員なんていっぱいいますから。実際、病院の事務職にも関わらず、バックヤード業務だから患者と接触しないという決めつけで、医療従事者でないとされ、なおかつ医療従事者以外の事務連絡の③「警察・消防等の公務独自」にも該当しないという理由で公務遂行性はないとして公務外決定を受けた方がいます。公立病院の職員でワクチンを接種せざるを得ない相当な社会的圧力があったにも関わらず、接種は自由意思で公務遂行性がないとした判断は本当に問題なので、これから全面的に争っていきます。

【森田】 私も、認定までに長くかかっていることは基金の一番の問題であると常に感じています。先ほどの回答をうかがうと、国会で質問しないと直らないのではないかと思いました。組織が小さく職員が足りないと言われましたが、そういう話ではない。いっぱい困っている人がいる。7年待たされるなんて異常です。そこはぜひ、上のほうに伝えていただいて、我々は社会に訴えるしかないのかなと改めて思いました。

【川本】 30年も市役所の現場で働いてきた森田さんの実感です。保健所でも勤務され、現場をわかっている方が、どう考えても変だと言っている。抜本的に考えて、私は法律を変えたほうがいいと思う。このままでは公務員になる人がいなくなる。地震とかコロナの時だけ注目されますが、日常業務の中で怪我や病気など、想定していない、あってはならないことが起きたものに対応する体制なんかあり得ないわけです。総務省が全部、それ用の人を何十人も各自治体に派遣するとかは別ですが。自治体の人事、総務は暇ではありません。職員厚生課の方も仕事が山ほどあるんですから。そういう問題だと、ぜひ本部の方にわかっていただきたい。

【天野】 そもそもどれぐらい時間かかってるのか、データをきちんと取ったら良いと思います。厚労省は近年、精神障害の労災申請から決定まで平均8ヶ月かかっているというデータを自分たちでとり、標準処理期間6ヶ月を越えて由々しき問題だと。それで去年の精神障害の認定基準改正につながった。当時一番の着眼点は、もう少し現場で使いやすい認定基準にして8ヶ月かかっている現状を改善しようと。実際それが期間短縮につながったかはわかりませんが、少なくとも厚労省の職業病認定対策室の人たちは、そういう狙いをもって改正しようと検討会議で言ってました。あなた方はもっと人数も少なくて大変きついと言うのなら、もっといろいろ工夫しなきゃいけない。少なくとも現場で今、申請から決定までどれぐらいかかっているのかというデータを集めたことがありますか?

【基金本部】 内部で把握しています。今、手元に資料が無いので標準的な期間はちょっと・・・

【天野】 データは取ってるのなら、問題だと思わないんですか?

【基金本部】 先ほど申し上げた通り、迅速というのはおっしゃる通りですが、調査すべきところが多岐にわたっているという事情もあり、関係者の証言を確認したりとか、申立内容について一つ一つ確認していますので、ある程度お時間をいただきたいと思っています。

【川本】 今後も毎年、交渉をやっていこうと思っていますので担当者への引き継ぎや、なるべく事前にご回答いただけるようご協力よろしくお願い致します。