石綿健康被害救済制度:給付金額の見直し 療養手当と葬祭料引上げ 特別遺族弔慰金は据置き

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 神奈川支部世話人 前田璃佳

 昨年12月、石綿健康被害救済制度の支給額が見直されるという知らせがありました。2006(平成18)年に制度が始まって以来、大きな改定がなかった給付額が、物価上昇を踏まえて見直されるという内容に「ようやく動き出した」という思いでした。

 患者と家族の会は、これまで療養手当の額が生活実態に見合っていないことを訴えてきました。現在の療養手当は月額10万3870円です。アスベスト疾患に罹り、これまで通りに仕事をすることが難しくなり、収入が減少し、生活の見通しが立たなくなる患者も少なくありません。特に現役世代の場合は、この給付額で生活を支えるのは困難です。

 また、労災補償との格差も大きな問題です。労災では遺族に年金として補償があるのに対し、救済制度には遺族年金がなく、亡くなった後の生活保障がないことは、労災認定を受けられない方々にとって重い不安です。

 2月10日に小菅会長、山田副会長、澤田事務局長をはじめ6名で環境省を訪れ、見直しの内容について説明を受けました。2026(令和8)年4月から約1万円の増額で、11万4950円に引き上げられる方向とのことです。まだまだ十分とは言えないものの、ほんの少しだけ前進とも言えます。

 しかし、療養手当や葬祭料は改定する一方、特別遺族弔慰金(280万円)と救済給付調整金の基準額は据え置く方針に強い違和感があります。

 特別遺族弔慰金は、患者が亡くなった後に遺族へ支給される給付ですが、もともと療養手当の受給額が差し引かれる仕組みになっています。例えば、月約10万円の療養手当を28ヶ月受け取ると、弔慰金がほぼゼロになります。

 今回、療養手当が少し増額される一方で弔慰金は据え置かれるということは、計算上、遺族が受け取る弔慰金の額がこれまでよりも減る可能性があるということです。この矛盾に、環境省から納得いく回答はありませんでした。

 患者と家族の会としては、弔慰金の額は療養手当などをもとに決められていること、また基金には十分な残高があることなどを踏まえ、物価上昇を反映した見直しを求めています。

 アスベスト疾患は命に関わるだけでなく、家計や将来への不安ももたらします。病気と向き合うだけでも大変な中で経済的な心配まで抱えることは本当につらいことです。救済制度が患者や遺族の暮らしに寄り添う制度へとつながっていくことを願います。