労災事件ファイル:建設アスベスト給付金制度・請求区分と認定区分の問題について

 建設従事者に広がるアスベスト被害について、2021年の最高裁判所の判決で国とアスベスト建材メーカーの責任が確定した。国は最高裁判決を受けて「建設アスベスト給付金」の制度を創設し、2022年からその運用が始まっている。私たちのところにも多くの「建設アスベスト給付金」の相談が入ってきているが、その相談対応を通じてこの制度の問題点がいろいろ判明してきた。本稿では、問題点のひとつである、建設アスベスト給付金の請求区分と認定区分の問題について報告する。【鈴木江郎】

建築大工の建設アスベスト給付金の請求

 被災者は1965年から2004年まで約40年間にわたり建築大工として建設現場に従事してきた。戸建て住宅の新築工事等に従事しており、その際に内装材や床材や天井材の石綿含有建材を切断、加工、取付作業を行い、アスベスト粉じんにばく露し続けた。現役を退き、日常生活を送っていたが、2018年頃から咳や痰や呼吸苦が出現する。気管支喘息や肺気腫の診断を受け治療を続けてきたが、脳出血も発症し、2021年に誤嚥性肺炎でご逝去。
 2023年12月の中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会のホットライン電話相談で、ご遺族より相談が入り、アスベスト専門医に医療記録や胸部レントゲン画像と胸部CT画像を診てもらう。専門医の石綿所見としては、石綿肺2/2合併症なし、死因と石綿肺の因果関係は難しい。
 そこで専門医の意見を踏まえ、労災保険ではなく、建設アスベスト給付金の通常請求を選択した。

給付金担当者から請求区分変更の案内

 請求に当たり、所定の様式で「請求する区分」を定めるのだが、石綿肺2/2はギリギリの所見だったため、あえて請求区分①「石綿肺管理2合併症なし」で請求した。建設アスベスト給付金の認定審査会で認定区分③「石綿肺管理3合併症なし」で決定されれば、それはそれで良い結果なので、問題ない。少なくとも「石綿肺管理2」は満たしているという意味合いで請求区分①「石綿肺管理2合併症なし」で請求したのである。
 しかし、請求して一ヶ月後に、建設アスベスト給付金の担当者から、請求書の記載内容に不備があるので修正した上で再提出を求める案内が入った。上記の請求区分を①ではなく③に修正して再提出して欲しいとのこと。上記のとおり、もともと承知していた事であるし、修正しないと決定できないとの事なので、請求区分を①ではなく③に修正して再提出した。

請求してから2年後 不認定の決定

 その後は一向に音沙汰なく、何回問い合わせても「審査中です」の回答に終始していたが、請求してから約2年が経とうとした2026年4月に「不認定」の通知書が送られてきた。不認定決定通知書には、不認定の理由として、認定区分③「石綿肺管理3相当・指定合併症なしに罹患したことが確認できないから」とだけ記されていた。
 しかし、ちょっと待ってほしい。認定区分③「石綿肺管理3」が確認できないことは分かったが、当初は請求区分①「石綿肺管理2」で請求したのだから、「石綿肺管理2」についての評価はどうなっているのか? 今回の不認定通知書には一切記載がないので給付金の担当者に問い合わせると驚きの回答があった。
 今回の不認定はあくまでも請求区分③についてのみ評価した。それ以外の認定区分の評価を求めたければ、その区分で改めて請求して下さいと。給付金の担当者が石綿肺の専門知識がないまま、請求区分を①から③に修正依頼したのは不適切な指導でありお詫びします、という回答であった。
 本件については担当者の不適切な案内が原因で請求区分③と修正したという特殊事情があるので、それはそれで再審査の要請および審査請求を進めて行くが、そもそも論として、請求区分に応じた評価しかしないという制度運用は間違っているという問題提起をしたい。

支給要件を満たしても不認定となる仕組み

 特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(令和3年法律第74号)および特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について(基発0119第1号・令和4年1月19日付)によれば、認定区分についての定めはあるが、請求区分については特段定めていない。つまり、そもそもの法の趣旨から言えば、認定区分は1つであってしかるべきであるが、請求書に記載した請求区分のみ評価し、それ以外の認定区分に該当するか否かを評価しない現行の運用は間違っている。
 実際に多く想定される事だが、請求区分③④「石綿肺管理3相当」ではないが、認定区分①②「石綿肺管理2相当」であるケースは通常よくある事である。他にも、請求区分①②「石綿肺管理2相当」ではないが、認定区分③④「石綿肺管理3相当」であるケースや、請求区分⑦「肺がんによる死亡」で請求したケースでも、「肺がんによる死亡」とは確認できないが、認定区分⑤「肺がん」には該当するケースなど、いろいろなケースが想定される。
 しかし、現行の運用は、請求区分のみに対応した認定区分の決定をしているので、上記の例で言えば、石綿肺管理2相当または石綿肺管理3相当であったとしても、請求区分が異なっていれば不認定決定がなされるし、支給要件を満たした「肺がん」であったとしても、不認定決定がなされる。

厚生労働省に要請

 建設アスベスト訴訟全国弁護団ウエブサイトによれば、2022年2月の運用開始以降、これまでの累計審査件数は10054件で、うち認定相当件数は9374件(93・2%)、不認定相当455件(4・5%)となっている(2026年5月審査会まで)。そして問題なのは、上記の不認定455件のうち、請求区分と認定区分が異なっているから不認定とされてしまった事例も少なくないと考えられる。
 更に不認定決定通知書には他の認定区分についての注意書きも無いので、請求人は他の認定区分では認定される可能性を知らされる事もない。本来は賠償を受けるべき事案にもかかわらず、単に請求区分が異なるから不認定としている現行の制度運用は「国の責任が認められた者と同様の苦痛を受けている方々について、その損害の迅速な賠償を図る」という法の趣旨から大きく外れている。
 私たちは中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会と一緒にこの問題について厚生労働省に問題提起していく。