地方公務員災害補償基金との交渉

7月7日、神奈川労災職業病センターほか全国の安全センタースタッフと地方公務員災害補償基金本部との間で、公務災害補償の運用改善を求める交渉が行われた。センター側の要求に対し基金側が基本回答を示し、その後、運用の違法性や遅延、労災保険との格差を巡る詳細な質疑応答と意見交換が交わされた。

基金側の基本回答

基金側は、法令や現行規程を根拠に従来の運用を維持する姿勢を示した。

  • 審査体制と外部委託:基金業務は地方自治体との緊密な連携が必要であり、法令上も自治体職員が従事しているため、弁護士等への審査委託はできない。審査は客観的証拠等を重視しつつ、必要に応じて本人聴取を行う。精神科医(7名)への意見聴取は規定がなく、慣例として輪番で1名から聴取している。
  • 上司の証明拒否への対応:所属長の証明が原則だが、証明拒否等のやむを得ない事情があれば証明なしでも請求を受理している。不適切な阻害が生じないよう支部に周知する。
  • 審査会運営・情報公開・司法判断:口頭意見陳述は書面審理の例外であり陳述者のみ(原則3名以内)の出席としている。裁決例の公表は検討中である。裁判で公務外決定が取り消されても、当初の審査手続きに瑕疵はないため謝罪は行わないが、判決を受け止め今後の調査に努める。
  • 認定基準と迅速化:中皮腫、ワクチン健康被害、筋骨格系疾患(腰痛・上肢障害)は労災基準等に準じて適切に判断している。複雑な事案は処理に時間を要するが、適切な進行管理で迅速化に努める。基準改正の議論や専門家情報は非開示とする。
  • 援護金と支払手続き:特別援護金の額は国公災や民間の水準と均衡を図って定めており、加算金支給は法令上規定されていない。判決確定後の支払までの平均期間データはなく通常基準で処理する。退職後の石綿等の休業補償請求権の周知は検討する。

質疑応答および意見交換におけるセンター側の追及

質疑応答では、基金の硬直的な書面主義、労働基準監督署(労災保険)との著しい格差、個別事案における不当な遅延や判断の誤りについて厳しい追及がなされた。

精神疾患事案の調査手法と運用の不備

精神疾患の被災者は強い負荷から申立書に核心を書けない傾向がある。労基署が本人への直接聞き取りを原則とし、主治医やカウンセラーの記録を確認するのに対し、基金支部は医療関係者とのやり取りをほぼ行わず書面審査に終始していると批判した。また、専門医が輪番制のため同一人物の先行傷病と後発傷病で心理的負荷の判断が分かれる不合理を指摘し改善を求めた。さらに、自治体所属を介した口頭のやり取りが「伝言ゲーム」となって齟齬が生じているとし、直接の文書通知を求めた。

口頭意見陳述の出席制限に対する違法性の指摘

審査会の口頭意見陳述で、発言予定のない代理人の同席を認めず出席者を制限している運用について、行政不服審査法上の根拠を欠く違法な取り扱いであると追及した。基金側が従来の解釈を繰り返すにとどまったため、法令上の根拠を再確認し後日回答するよう求めた。

認定基準の適用と解釈の歪み

コロナワクチン接種に関し、事務連絡にある「消防・警察等の公務独自」という文言が一人歩きし、病院職員の請求が不当に排除されている実態を指摘した。患者との頻繁な接触の有無だけでなく、病院の判断による優先接種対象者であったかを重視すべきと質した。
また北海道の事案では、公的機関による「じん肺管理区分4」の決定を専門医1名が覆して公務外とした運用を批判した。労災認定基準に則り、公的決定を尊重して速やかに是正するよう要求した。

判決確定後における補償金支払いの著しい遅延

裁判で公務外決定が取り消されたにもかかわらず、支払決定までに半年〜1年以上放置される事例が頻発していることを強く追及した。基金側は平均給与額の算定書類の捜索に時間を要すると弁明したが、センター側は長年争って勝訴した高齢の被災者や遺族を待たせる異常さを批判した。労基署であれば最優先で数ヶ月以内に処理する事案であり、基金本部による全国の実態調査と迅速な支払いに向けた指導を要求した。さらに、死亡時の未請求休業補償の案内漏れを防ぐ通達の徹底を求めた。

全体を通じた課題と要求

今回の交渉を通じ、地方公務員災害補償基金の運用が労基署の実務に比べ著しく硬直的であり、手続きの遅延や不十分な調査が被災職員に重大な不利益をもたらしている実態が浮き彫りとなった。基金側が前例踏襲の回答に終始したのに対し、センター側は外部委託や法改正も視野に入れた体制改善、直接聴取の徹底、および判決確定後の迅速な補償履行を強く要求した。