意見陳述書(建設アスベスト訴訟)

 私は、2018年12月、64歳のとき、腹膜中皮腫と診断されたアスベスト被災者です。

アスベストばく露作業のこと

 私は、18歳のときに入社し横浜工場で働き始めました。腹膜中皮腫発症後の現在は休職中です。

 業務内容は、勤務してきた約47年間ずっと同様です。その中心は、デパート、官庁、ホテルからディズニーランドまで、様々な建物に使用する壁材、天井材などの内装材を、電動工具などを使って切断、穴開け、貼り合わせなどを行うものでした。そしてその作業中には、石綿を含んだ粉じんが工場内に舞い上がっていたのでした。

 また、月に1、2回くらい、内装の施工・補修などの現場にあちこち出張し、出張先の現場でも切断、加工、穴開けなどの作業をしており、そこでも石綿粉じんにばく露しました。

悪性腹膜中皮腫のこと

 2018年11月、会社の人間ドックで異常が見つかり、再検査で腹水がたまっていると言われ、急きょ横浜に戻り、12月6日に横浜医療センターを受診しました。入院して検査したところ、悪性腹膜中皮腫と診断されました。

 横浜医療センターでは治療ができないため、横浜市大病院に転院し、抗がん剤治療を始めましたが効果がなく、腹膜の病気の専門病院に行きました。そこで8時間半もかかる大手術をして、がんが転移した胆のう、横隔膜、大腸等を取り除きましたが、全部は取り切れず、その後も3ヶ月に1回くらい専門病院に通院して指導を受けながら、横浜市大病院で定期的に抗がん剤の治療を続けています。

裁判を通じて訴えたいこと

 2018年12月、悪性腹膜中皮腫という病名を告知され、余命6ヶ月と言われました。私自身も家族も言いようのない絶望的な気持ちに陥りました。

 現在は治療により何とか元気に過ごしていますが、今年になってからも何人もの中皮腫患者の仲間が亡くなりました。自分もいつ何が起きるか分かりません。今の抗がん剤が効かなくなったらほかに方法がありません。毎日不安が消えません。とても怖い病気です。

 この病気は、これからまだまだ増えると思います。国も建材メーカーも、私たちアスベスト被害者の思いを受け止めて、中皮腫の治療法、新薬の開発、そして早期の十分な補償制度を、一日でも早く実現して下さい。

 そのためにも、裁判所が、国と建材メーカーの法的な責任を明確に認める公正な判決を、どうぞよろしくお願い致します。