センターを支える人々:福神 大樹さん(兵庫医科大学 看護学部 看護学科 助教)
自己紹介
私は兵庫医科大学の教員をしています、福神大樹と申します。現在は看護部、薬学部、リハビリテーション学部の学生に対して社会福祉や社会保障制度に関する講座を担当していますが、23年3月まではソーシャルワーカーとして兵庫医科大学病院に所属し、患者さんや御家族の方に対して療養生活で抱える生活に関する不安、お金の問題、仕事のことなどの悩みや困っていることの解決の糸口を一緒に探す相談業務に従事していました。当院ではアスベスト関連疾患である悪性胸膜中皮腫を発症された方が多く受診されており、私もソーシャルワーカーとして労働者災害補償保険法(以下、労災保険制度)の申請や心理社会的な問題の解決の支援などを行っていました。しかし入職当初は労災保険制度に関する知識や職業病や公害に関する相談支援などの経験は少なく、神奈川県労災職業病センター(以下、センター)が発行している「労災職業病相談マニュアル(15年度版)」を取り寄せたことが私とセンターが関わりの始まりだったと記憶しています。
センターとの関わり
17年度に環境再生保全機構が「石綿健康被害救済制度被認定者の介護等の実態調査」を行ったことで、翌年7月に中皮腫・アスベスト患者・家族の会神奈川支部の総会で、患者さんや御家族の方に対して、療養で活用できる介護保険制度のサービスの講演をさせてもらいました。
その後は、中皮腫サポートキャラバン隊が行った「中皮腫を発症された方の療養生活の実態調査」の参加、センターと神奈川県医療ソーシャルワーカー協会が共催で行っている労災職業病講座の講師に声をかけて頂きました。
「センターを支える人々」というタイトルですが、逆に私がセンターに支えてもらい、ソーシャルワーカーとしてアスベスト関連疾患を発症された方や御家族の置かれている状況を改めて知ることができました。その結果は、中皮腫患者白書の発行、日本肺癌学会の学術誌「肺癌」に論文を掲載することができましたが、センターの鈴木さんがソーシャルワーカーの役割に理解を示して頂いていることが、患者さん、御家族の方、医療従事者、ソーシャルワーカー、社会に対する貢献に繋がったと思います。
今後について
今改めて考えると、職業病や公害病とされる疾病は、複雑な社会背景や法律が絡み合う上に、医師、患者さんも気付きにくい疾病といえます。ソーシャルワーカーも知識や支援経験を積むことが非常に難しい印象を受けています。センターのようにソーシャルワーカー、職能団体と連携を取り、患者さんを取り巻く社会問題と生活課題の解決に向けた支援体制を構築する取り組みは大変貴重であり、今後の発展を切に願っております。
この度は貴重な情報発信の機会を頂きまして感謝申し上げます。本誌508号に日本肺癌学会誌『肺癌Vol62,No7,Dec20,2022』に掲載された、私が論文責任者として発表した論文を転載させて頂きます。これは中皮腫サポートキャラバン隊が19年~20年に実施した中皮腫患者アンケートを元に「中皮腫発症に伴う労災保険制度の申請における医師の役割と課題」について考察したものです。中皮腫患者アンケート結果を分析した結果、労災保険制度の申請には医師が患者に対して相談窓口に紹介することが重要であり、医療機関における相談支援体制を整え、患者会と連携を深めることが課題であると結論しました。私としても、各地の労働安全衛生センターや患者団体などと連携を深めていきたいと考えますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。