労災保険料のメリット制 事業主の労災決定取り消しが可能に?労災隠しの温床、百害あって一利なし!大企業優遇の「メリット制」廃止を!

事業主による労災決定取り消しを容認する厚生労働省

 労災保険料のメリット制というのがある。簡単に言うと、労災が起きて給付されると企業が負担する労災保険料が上がり、起きなければ(給付がないと)割り引くというもの。これが適用されるのはごく一部で、中小企業の多くは対象外。それに目を付けた適用事業主が、保険料が上がることを理由にして、労災保険の支給決定取り消しを求める訴訟を起こしている。また、労災保険の不支給決定の取り消しを求める労働者や遺族の訴訟に、補助参加人という形で関与してきた。

 今年1月、厚生労働省は、従来の解釈を変更し、事業主が労災支給決定に不服申し立てを行うことを認める通達を出した。仮に裁判所で不服が認められても被災者への補償を取り消すことはないとしているが、事業主が労災を否定し、休業中の被災者を解雇することは間違いない(今は労働基準法で禁止されている)。被災者が労災申請自体をあきらめることにもつながりかねない。現に、センターには、事業主が労災申請に協力してくれないという相談は後を絶たない。医療機関も事業主証明なしでは労災扱いにできないとして手続きに協力しない、ひどい場合は、労災にしたいのなら他の医療機関に行ってくださいと言われることも珍しくないのだ。

メリット制の弊害

 厚生労働省は、メリット制の根拠として、労災防止のインセンティブ(動機付け)になると説明するが、その根拠は全くなく、調査すらしていない。今は、国を挙げて働き方改革を提唱し、大企業ほど賃金を引き上げて働きやすい職場環境を作ること、それが優秀な人材獲得につながるというのがトレンディ(世の流れ)だ。むしろ、労災隠しの背景にメリット制があるとして、患者を診察する日本医師会が再三再四、弊害を指摘してきた。

 メリット制の適用事業場は全事業場の5%に過ぎない。その結果、保険料が引き下げられた事業場は80%を超え、引き上げられたのは15%。差し引きで2000億円近くの減収となっている。この減収分を、事故の有無とは関係なく、メリット制が適用されない95%の中小規模事業場が負担している。つまり、ごく一部の大企業の割引分を、多くの中小企業が負担させられるという不公平がまかり通っている。

労働組合、弁護団、被災者団体と連携しよう!

 センターは、諸悪の根源であるメリット制の廃止を求め、労働組合、弁護士、被災者団体とも連携して運動を進めつつある。多くの皆さんの注目を訴える。