CRPS労災裁判で和解成立

8月21日、横浜地裁民事第七部(阿部正幸裁判長)で老健施設K苑労災事件の和解が成立した。
07年12月に介護現場で負傷し、CRPS(複合性局所疼痛症候群)となってしまったYさん。ユニオンに相談に来たのは08年4月。団体交渉も不調に終わり損害賠償を求めて裁判を起こしたのは10年12月。事故以来、Yさんの手の痛みは引かず、負傷した右手は使えず、腕の萎縮は進んだ。裁判の過程では、K苑からのビデオ盗撮という卑劣な行為もあった。Yさんや家族が受けた心の傷は大きく、主治医からの痛くても意識的に手を動かして使うことの指示が、被告側の立証材料として利用されてしまい、誰かから盗み見されているのではという気持ちの悪さは長くぬぐえない。そんな状況を気丈に乗り切ってきたYさんだった。
和解に至る裁判経過では、被告側が充分な安全配慮義務を全うしていなかったことは明らかだったが、被告の非を争う上で重要な車椅子の特定ができなかったことや、人員問題では、不充分とはいえ法律上の不法行為とまでは特定できていない点などが原告側の不利な点だった。
今年1月から始まった和解交渉は結審を挟みながら紆余曲折あったが、次の内容(概略)で決着した。①被告は原告に解決金を支払う、②被告が立て替えた社会保険料は原告負担とする、③被告は①と②を相殺した金額を9月末日に原告に支払う、④被告は原告の負傷について遺憾の意を表し、今後、労働環境の整備について十分に意を用いるものとする、等である。
解決金額は請求金額(約4500万円)の3分の1にも満たないが、CRPSという神経症状の発症責任を使用者側に問うた事件の中では、必ずしも少ない額とは言えない。また、被告の労働環境整備への約束を取り付けたことは、今後のK苑労働者に役立ててもらいたい。

行政訴訟は不当にも敗訴、控訴する
損賠裁判と並行して、国を相手取り起こした後遺障害等級の見直しを求める行政訴訟の判決が8月26日にあり、不当にも敗訴であった。原告が提出した、麻酔科医の診断書には「痛みだけでは判断できない」、整形外科医の意見書には二日間だけの受診でどのような判断で認定しているのか不明、患者の痛みの申告をもとに判断しているので正確性の担保がないといずれも退ける。最初に結論ありきのような不当判決であり、CRPSという疾病についてもっと国に認識してもらいたい、そしてそれを労災認定に反映してもらいたいとの思いで控訴することとした。