被ばく労働を考えるネットワーク設立集会に300名参加
昨年11月9日、東京都江東区の亀戸文化センターで、「被ばく労働を考えるネットワーク」設立集会が開催された。労働組合関係者や脱原発運動に取り組む市民など約300名が参加。福島第一原発事故の収束作業や除染作業に携わる被ばく労働者を支援してゆくための幅広い枠組み作りと運動展開を確認。集会の様子を報告したい。なお、当日の模様は同ネットのwebサイトでみることができる。【川本】
はじめに、ネットワークの呼びかけ人の一人である写真家の樋口健二さんがあいさつした。
「私は、40年前から原発被ばく労働者を取材し、写真を撮ってきました。昨年3月11日の事故以来、非常に関心が高まり、今日もこんなに多くの皆さんが集まっています。正直言ってこんな時代が来るとは思っていませんでした。私には『伝える力』しかありません。あとは運動を盛り上げてほしい」
やはり呼びかけ人の一人である斎藤征二さんは次のように語る。
「私は配管工として原発の建設作業に従事しました。私が作業した美浜原発で放射能漏れ事故があり、それがいい加減な形で葬り去られようとしたことを契機に、労働組合を結成しました。残念ながら4年でつぶされました。原発の被ばく労働に安全なんてありません。原発は止める、なくすしかない」
危険手当(特殊勤務手当)のピンハネ問題
福島県いわき市で活動する「全国一般いわき自由労働組合」の桂さんが、除染作業に従事した労働者に、危険手当が支払われていない問題が報告された。寄せられている相談によると、危険手当には100円~2000円と幅がある。環境省からはなんと1万円が元請けのゼネコンに支払われている。直接雇用主である下請けの社長はそんなにもらっていない、と言う。団体交渉の結果、危険手当は1万円を支払う形にして、日当は最低賃金の5500円、宿代と飯代も引かせてくれなどと言って、不利益変更した賃金規定まで持ち出す始末。労働基準監督署にも申告したが、あいまいな指導しかしない。
当該労働者からも訴えがあった。「私は日当1万円ということで2ヶ月間働きました。実は危険手当1万円という話をきいて、そんなに危ない仕事だったのかと本当に驚きました。手当の金額の問題ではなく、それを業者が説明もせずピンハネするということが許せません。きちんと獲得するまで闘います」
被ばく労働を考える問題提起
センターの川本が、被ばく労働を考えるいくつかの問題提起と課題を報告した。まず、今までなぜ原発の被ばく労働が注目されなかったのかを、一人一人が考えてほしい。被ばく線量や推定される発症数と比較して、労災申請者数が非常に少ないのはなぜなのか。逆に、名前を出して闘った人たちは、やはり仕事に誇りを持っていたことを理解するべきだ。
課題のポイントとして、事故後のすさまじい被ばく線量と放射性物質が管理不能の状態でまき散らされたこと、緊急作業の法的位置付けの曖昧さ、電力会社と雇用主の責任をめぐる法的問題などについて、簡単に解説した。
いわき市に拠点を
集会の最後に、呼びかけ人の一人である「全国日雇労働組合協議会」の中村光男さんが、いわき市に拠点を設ける構想への協力を呼びかけた。原発で働く労働者は宿舎も会社が提供しているために、職を失うと同時に住むところも失ってしまう。そうした労働者が泊まれる場所も兼ねた事務所をいわき市に作りたい。その他にもいろいろな立場の人がいろいろな形で、被ばく労働者を支援するための取組みを行うためのネットワークを目指したいと訴えた。