「神奈川過労死等を考える家族の会」が発足

「神奈川過労死等を考える家族の会」が発足

神奈川過労死等を考える家族の会代表 工藤祥子

17年5月25日、神奈川県で「過労死等を考える家族の会」を発足いたしました。今回紙面を頂きまして、「全国過労死を考える家族の会」、そしてこれから歩み始めます「神奈川過労死等を考える家族の会」について、その活動内容などを皆様にご紹介させて頂きたいと思います。

長時間労働による過労のために命を奪われた夫、妻、息子、娘・・・その大切な家族を失った遺族が、悲しみを乗り越えて「家族の会」を創ろうと声を上げ、1989年に「過労死を考える家族の会」が各地で誕生しました。今まで一人で悩んでいた遺族同士が、会を通して同じ悩みを抱える人たちと出会い、交流を深め、逆境をバネに立ち上がり、91年11月22日の勤労感謝の日に「全国過労死を考える家族の会」が結成されました。

その後、被災者の支援と共に、過労死をなくす為には法整備が必要であると「全国過労死弁護団」と共に法整備を呼び掛ける署名活動、院内集会を行いました。その活動の中で50万筆の署名を集めると共に、超党派の国会議員の方々がこの活動にご賛同頂き、14年「過労死等防止対策推進法」が国会で全会一致で可決され、法律が制定されました。その後、15年に大綱が出来、16年は日本で初の過労日防止白書が出来、過労死をなくす為の調査、研究、防止対策が進められております。「過労死防止対策協議会」には、家族の会より4人が協議員として参加して、防止対策など意見などを取り入れて頂いております。

過労死等防止対策推進法の大綱で、国が取り組むべき重点対策として、⑴調査・研究、⑵啓発、⑶相談体制の整備、⑷民間団体の活動に対する支援が定められました。その中で全国家族の会として、中学校、高校、大学へ、弁護士と遺族などで労働に関する啓発授業を行い、社会に出る前に労働の事を学んでもらう取り組みをしています。また、厚労省の「過労死ゼロを実現するために」のパンフレットの相談機関紹介の欄に民間団体の窓口として記載されました。そして、全国過労死を考える家族の会、全国過労死等対策防止センターなどが中心となり、11月に全国で「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催されることになり、今年度は全都道府県で行われるようになりました。

神奈川県では3年前からシンポジウムを行ってきました。ちょうど3年半前、会議室に東京家族の会、過労死弁護団、各民間支援団体のメンバーが10名ほどが初めて顔を合わせ、どのようなシンポジウムにしていこうかと話し合いが始まりました。話し合いが進むうちに、過労死で被災した方々との面談と共に、現在、長時間労働やパワハラなどで精神疾患を発症している方々、不当な扱いを受けどうしたらよいか分からない方々などなど、本当に多くの労働被災者の方の事例や悩みをお伺い致しました。2年前より、メンバーで手探りで被災者との交流会なども行って参りました。
そして、こんなに大都市で、こんなに沢山の被災者、過労死、過労自死が絶えない神奈川県で、何か窓口が出来、少しでも助かる人がいればという思いで、会議に会議を重ね、今年5月25日に全国14番目の家族の会として「神奈川過労死等を考える家族の会」を発足させることが出来ました。メンバーの労働による被災者を無くそうという真剣な思いとチームワーク、そして多くの方々のご支援を受けて出来た会だと思っております。
全国14ヶ所目の神奈川家族の会のこだわりとして、会の名前を「過労死等」と致しました。大変議論を交わしたところでございますが、過労死で亡くなった遺族だけではなく、現在、実際に労働被害にあって悩んでいる方やそのご家族が過労死、過労自死に至る前に何とか少しでも心身共のサポートと共に、解決の方法など具体的、実務的サポートが受けられ、「死んでしまう仕事」ではなく「生きるための仕事」が出来るお手伝いをとこだわった会です。
過労死防止の法律が出来た時、超党派議連の方々の大きなサポートがあったように、命の問題は超党派で喫緊に取り組まなくてはならない問題です。
それを実現していく様な神奈川の会でありたいと思っております。
発足から1ヶ月余りが経ちました。現在、11月2日に行われるシンポジウムの話し合いが始まりました。また、7月には第1回目の家族の会会員の顔合わせ兼交流会を開催いたしました。シンポジウムや交流会や勉強会などを通して、神奈川県内で労働に関わられている関係団体の皆様には、ご指導を頂きながらご一緒させて頂きたいと思っております。
「命より大切な仕事はありません」これは家族の会で合言葉になっています。加えて、健康より大切な仕事もないとも思っております。不幸にして過労死で大切な主人を無くしてしまった私の様な事が無い様に、今必要な活動をしていきたいと思っております。これから歩み出す「神奈川過労死を考える家族の会」をどうぞ宜しくお願い申しあげます。