地方公務員Aさん退職後に石綿健康管理手帳を取得

地方公務員Aさん、退職後に石綿健康管理手帳を取得

庁舎の施設管理・設備管理の公務においてアスベストばく露

地方公務員であったAさんに石綿健康管理手帳が交付されたので報告する。Aさんは1974年から1997年まで役所の庁舎の施設管理を行う職員として公務に従事。庁舎の施設管理、設備管理の公務において、空調機械室や自家発電室に出入りし、設備の保守作業、ダクトや配管の劣化点検などでアスベストにばく露した。【鈴木江郎】

退職後に胸膜プラーク

地方公務員のAさんは、役所の庁舎の空調機械室や自家発電室への出入りにおいて、壁や天井の吹付アスベストに間接ばく露した。またダクトの底面や配管の被覆材などにアスベスト断熱材が使用されており、その劣化を点検する際に、アスベスト断熱材を素手で取扱っていた。その後、役所を定年退職し、再雇用を終え、近所の河川の花畑整備のボランティア活動に励んでいたが、09年のがん検診で胸部に異常を認め、CT検査で胸膜プラークを指摘され、経過観察中であった。現在まで自覚症状は無いが、アスベストばく露が気になっており、このたび「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の存在を知り、当方に連絡が入り、石綿健康管理手帳の取得を目指していた。

石綿健康管理手帳とは

石綿健康管理手帳とは労働安全衛生法67条を根拠として、「がんその他の重度の健康障害を発生させるおそれのある業務に従事し、離職の際または離職の後に、審査を経た上で、健康管理手帳が交付される」制度である。石綿の製造又は取扱いに伴い石綿粉じんを発散する場所における業務が対象で、石綿を取扱う直接業務に加えて石綿粉じんを発散する場所での業務(間接業務)も対象となる。
石綿健康管理手帳が交付されると年2回の健康診断を無料で受けることができ、以下のいずれかに該当すれば交付される。

① 両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚があること(直接業務又は周辺業務が該当)。

② 下記の作業に1年以上従事していた方(直接業務のみが該当)。
・石綿の製造作業
・石綿が使用されている保温材、耐火被覆材等の張付け、補修もしくは除去の作業
・石綿の吹付けの作業又は石綿が吹き付けられた建築物、工作物等の解体、破砕等の作業

③ ②の作業以外の石綿を取り扱う作業に10年以上従事していた方(直接業務のみが該当)。

そして、図解入りで丁寧に説明したこともあり、Aさんの役所もアスベストばく露の事業者証明を行い、Aさんは、①石綿所見あり、②1年以上の直接業務、の両方が該当し、比較的すんなりと石綿健康管理手帳の交付を受けた。

アスベストばく露した公務員は大勢いる

本件は地方公務員であるAさんの公務におけるアスベストばく露についての健康管理手帳の交付であったが、地方公務員も労働安全衛生法67条(健康管理手帳)は適用される(注)。
私も公務員の石綿健康管理手帳の取得事例は始めてであったし、全国で何人の公務員が手帳を交付されているのか今後調査していきたいが、別稿のとおり、地方公務員でも石綿被害が多数発生している(5頁の表1)。
地方公務員の職種別では、電気・ガス・水道の職員28人(請求48件)、学校教職員4人(請求27件)、消防職員3人(請求15件)、その他職員28人(請求76件)、合計63人(請求166件)が中皮腫その他のアスベスト疾患で公務上として認定された。
しかし認定されたのはごく僅か、氷山の一角であり、水面下にはその何十倍ものアスベストばく露した公務員が確実に存在している。今回のAさんもその1人であるが、今後も公務員のアスベストばく露について掘り起しを進めていきたい。