アスベスト相談会(8月4日栃木県、8月5日群馬県)

アスベストホットライン相談会
8月4日に栃木県、8月5日に群馬県にて「アスベストホットライン相談会」を実施した。この取り組みは、じん肺・アスベスト被災者救済基金の新聞意見広告によるアスベストホットラインの一環として、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」と共催で行った。栃木県・群馬県での開催はともに初めてとなる。

栃木県におけるアスベスト労災認定状況では、14年までの累計で34事業所で51人の労災認定が出ている。なかでも突出して多いのが富士重工業㈱宇都宮製作所で、累計15人が労災認定されている(自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業)。
栃木県にはまだまだアスベスト被害者が埋もれており、労災保険からの補償や石綿救済制度からの給付のいずれも受けていない方々が大勢いる。栃木県の中皮腫の補償・救済率58・9%(175人中103人しか補償・救済されていない)、石綿肺がんの補償・救済率9・4%(350人中33人)(全国労働安全衛生センター情報16年1・2月号より)。このような状況から、栃木県のアスベスト被害者の掘り起しが必要であり、また今後の取り組みにつなげていくために開催に至った。
相談会当日は、面談2件、電話が1件あった。石綿を入れていた再利用の麻袋を材料として裁断加工し、イス、ベッドのマットの内貼り部分に使用していた家具製造の方(69歳・胸膜プラーク)。国鉄の元機関士(36年前に肺がんで死去)の息子さん。建築現場で解体作業、はつり作業に従事していた方(78歳・石綿手帳取得済)の3件の相談があり、いずれも継続事案として今後対応していく事となった(相談会から数日後に1件の電話相談があった)。
相談会に併せて、永倉冬史さん(中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長)を講師とした『実は身近なアスベスト』の講演会も行い、地元の労働組合や建設業者の方など合計13人が参加した。
両日の相談員としては、当センターの他、東京労働安全衛生センター、アスベストセンター、名古屋労災職業病研究会、よこはまシティユニオンのスタッフが対応した。
相談会は地域紙にも記事が掲載されたが、全体的にはアスベストは過去の問題とされ、関心が非常に薄い印象であった。アスベスト問題は現在そして将来の自分たち自身の問題であるのだと、今後も両県における取り組みを継続して注意喚起を行っていきたい。【鈴木江郎】

■群馬県でのアスベスト相談会の報告
天野 理(東京労働安全衛生センター)
8月5日、群馬県高崎市で、「群馬県アスベスト被害ホットライン・相談会」を開催した。開催にあたっては、7月25日に群馬県県庁記者クラブで記者会見を行った。記者会見では、患者と家族の会の副会長である小菅千恵子さんと、群馬県在住で夫を悪性胸膜中皮腫で亡くされた栗田悦子さんが出席し、アスベスト被害の実態と遺族としての想いを訴えた。この記者会見を受けて、地元紙の上毛新聞を含む複数の新聞で、相談会の開催と遺族の訴えを取り上げた記事が、事前に掲載された。
ホットライン・相談会の当日は、ぐんま労働安全衛生センターを会場にして、東京労働安全衛生センターとぐんま労働安全衛生センターのスタッフが相談対応にあたった。
一方、今回の相談会では、同日の午後に、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の群馬交流会も合わせて行った。群馬県在住の会員2名とそのご家族が参加し、患者と家族の会の小菅副会長、ぐんま労働安全衛生センターおよび地元の労働組合「交通ユニオン」のスタッフ5名も出席した。
交流会では、会員の方が経験した地元の労基署の対応(労災申請をまともに受け付けなかったこと)や、国賠訴訟での国側の対応の問題(迅速な和解を前提にしているにもかかわらず、些末な証拠の提出を求めるなど)、群馬県内での過去のアスベスト関連の労災事案などが共有された。労基署対応の問題については、ぐんま労働安全衛生センターが毎年秋に行っている群馬労働局との交渉で取り上げることも含めて検討することになった。
残念ながら相談件数がゼロ件で、今後に大きな課題が残ったが、今後の群馬での相談会・交流会の継続に向けて重要な土台作りができた。
群馬県におけるアスベスト労災認定状況では、14年までの累計47事業所、53人の労災認定が出ている。スレートやブレーキ製品など石綿製品の製造工場、運送会社、そして建設業など様々な事業場で、アスベスト被害が出ている状況である。一方で、群馬県内においても、依然として多くのアスベスト被害者が埋もれている。群馬県内の被害者のうち、労災保険や救済制度の対象になっている割合(救済率)は、中皮腫の場合で65・8%と、全国平均を下回り、実に3割以上の被害者が補償・救済を受けることができていない。肺がんについてはさらに厳しい状況であり、群馬県内の救済率は8・4%と極めて低い状況である。
今回のアスベスト被害ホットライン・相談会を契機として、今後も群馬県内での被害者の掘り起こしに継続して取り組んでいきたい。

■横須賀では相談23件
アスベストホットライン相談会
8月4日?5日、横須賀じん肺・アスベスト被災者救済基金会議室において「肺ガン・アスベストホットライン」を開設し、計23件の相談が寄せられた。【池田】

今年は、新聞紙1社に意見広告を掲載した。また、地域を応援するということで、8月4日に栃木県宇都宮市、5日に群馬県高崎市で、相談会を「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」と共催して行い、地方紙2社にも意見広告を掲載。オリンピック開催時期と重なることも考慮して、3紙とも8月2日に掲載した。

横須賀では、事前に横須賀市政記者クラブでHさん(遺族)とともに記者会見を行い、地域版にも掲載された。Hさんの夫は2年前に肺がんで死亡。当時、主治医から「アスベストと関係しているから労災申請を」と勧められていたが、会社が倒産していたことなどもあり相談を断念していた。しかし、昨年のホットラインに相談し、労災認定に結びついた事例だ。

相談の内訳は中皮腫4件、肺がん7件、石綿肺関係3件、建材関係1件など。東京センターなど関係機関に回した事例も。亡くなりそうな病状だということで解剖の必要性等を家族に話した事案もあった。また、病状が重いので家族にレントゲンなどを持って相談に来てもらうなどフォローが必要な事案や、診療所を紹介して受診された事案も数件あった。いずれも退職して長期間経っていたり、勤め先が倒産したなどの理由で、医師の協力が得られなかったり、仕事によるアスベストばく露が確認できない事案が多かった。
今後も、私たちの方から情報を発信し続けていくことが重要であると感じた2日間であった。