パワハラ・セクハラ問題にどう取り組むか
パワハラ・セクハラ問題にどう取り組むか
10月22日に開かれた名古屋ふれあいユニオンの組合員全体集会で、「パワハラ・セクハラ問題にどう取り組むか」というテーマでお話をさせていただいた。同ユニオンでもパワーハラスメントやセクシャルハラスメントが絡んだ労働相談が増加しており、対応に必要な知識を共有したいということであった。お話した内容に加筆してまとめてみた。【川本】
■セクハラ問題は「法が解決の手伝いをする」ようになった
日本でセクハラが社会問題となったのは、1980年代後半のことである。それから被害者自らが声を上げ、裁判その他の取り組みを重ねた結果、現在は、男女雇用機会均等法で、職場のセクハラ対策は事業主の義務となった。厚生労働省が作成したチラシでも、「はっきりと拒絶しましょう」と並んで、「まず会社の窓口に相談しましょう」と書かれており、さらに都道府県労働局「雇用均等室」(現在は雇用環境・均等部もしくは室)にも相談窓口がありますと。
民事損害賠償裁判の判決における金額も年々上がってきているし、会社としても対外的なイメージダウンを避けたいということもあるのか、積極的に取り組むことが多い。加害者への処分をめぐって争いになることも珍しくない。
■国がパワハラ問題に取り組むまで10年以上かかった
一方、パワハラについてはまだまだ取り組みが遅れている。都道府県労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、02年度に6627件(5・8%)だったが、13年度には5万9197件(19・7%)に急増し、全ての相談内容の中で第一位になった。急増していくことが明らかな状況であるにも関わらず、国の対応は鈍かった。
全国安全センターが毎年実施している本省との交渉では、回答すべき部署がなくて、出席者が回答を押し付け合っていた。やっと口を開いた本省職員の発言は忘れられない。「なぜ職場の安全衛生の課題なのにまともに回答しないのか」と尋ねると、「パワハラって安全衛生の課題なのでしょうか」と平然と言う。「職場の厳しい状況を反映して相談が増えているではないか」と言うと、「いや、労働者の権利意識が向上したからじゃないですか」と言ってのけた職員もいた。
11年7月、厚生労働省は「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を発足させた。同会議は12年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」をとりまとめて発表した。現在は、「あかるい職場応援団」と題したホームページもある。パワハラの定義などの基本情報から、パワハラ対策導入マニュアル、セミナーの案内、裁判例、企業の取り組みなど有益な情報が満載である。そうした啓発事業は重要であるが、やはり労使の取り組みの確実な後押しとなる何らかの基準、法規定が必要である。
■ユニオンのような労働組合の取り組みが重要
どんなに制度や法律ができたとしても、セクハラやパワハラの被害者は、どうしても孤立しがちである。解決のためには、仲間を増やすことは何よりも重要な課題。個人の努力には限界があるので、やはり労働組合として、被害者が勇気づけられるような支援が不可欠だ。学習会を開催して、組合員の認識を高めるのも一つの方法であり、名古屋ふれあいユニオンが組合員全体集会のテーマに選ばれたことに敬意を表したい。