設計士Dさん労災認定!東洋電機製造(株)で石綿にばく露 中皮腫で死亡
Dさんは、京都工場勤務五年を除き、約三五年間、横浜工場の設計棟で産業用モーターの設計に従事。同僚の設計士Mさんによれば、巻線工場で車両にモーターを取り付ける際、設計士は、寸法が合うかチェックするため現場を頻繁に訪れた。合わないと度々現場に呼び出され、図面を書き直し、モーターを作り直すこともあった。故障して修理が必要な車両が持ち込まれた場合は、モーターのトラブル原因を調べるため、汚れ具合や燃え具合も詳しく見なければならない。その際、モーターの回転子を抜き、固定子の巻線が剥き出しになる場合がある。巻線=コイルには銅線の周りに絶縁体が貼り付けられている。当時、絶縁体には石綿が使用されていた。それをエアーで吹き飛ばす作業では、側で見ている設計士が汚れたモーターに付着している粉じんを吸ってしまうことがしばしばあった。設計棟には安全靴とヘルメットはあったが、マスクは備え付けられていなかったのである。
しかし、会社は当初、巻線に石綿が使用されていたことを認めながらも、Dさんは設計棟の中で図面を書いていたので石綿には曝露していないと主張。横浜南労基署の担当者も石綿曝露の事実を掴めなかった。
Dさんの妻から相談を受けたセンターは、同僚のMさんに直接お話を伺い、設計士であっても頻繁に現場に出向くため石綿曝露することがあるという証言を得たのである。
◇一見、石綿が使われている現場とは関係ないような研究者や学者でも、中皮腫を発症して労災認定されている事例がこれまでにもある。
本誌でも、工学博士として、東京都の建材試験場で石綿含有被服材の強度調査をして中皮腫で死亡したTさんが、公務災害認定された件を紹介した(本誌〇八年七月号)。
最近では、中皮腫で死亡した神戸大学の文系教官が、ケミカルシューズ工場の聞き取り調査の過程でタルクに混入する石綿を吸ったとして公務災害として認められた事例がある(毎日新聞一〇年一〇月八日付)。