米海軍横須賀基地(ベース)石綿じん肺裁判

米海軍横須賀基地(ベース)石綿じん肺裁判

判決前に、地位協定に基づく補償を求め防衛施設庁と横浜防衛施設局に要請
日米地位協定に基づく損害賠償請求を始めてから、今年で三年目となる。請求先の横浜防衛施設局に対しては再三、早期に補償するよう要請をしたがらちが開かず、二年目には上級官庁である防衛施設庁に集団陳情を行った。防衛施設庁は、在日米軍司令部に掛け合って至急検討すること、横須賀基地に協力するよう指示することを確約した。しかし、それから一年経った現在も決定は下りていない。三年と言えば、裁判でも判決が出てもおかしくない期間だ。時効で門前払いされた第一陣の請求者が原告の中心となっているベース裁判が結審真近に迫っている。裁判の第二次提訴の準備も進んでいる。「何としても裁判の判決が出る前に、地位協定に基づく補償を求めていかなければならない」と、一月三一日に防衛施設庁と横浜防衛施設局に対し、要請を行なった。

当日、地元の横須賀防衛施設事務所で行われた要請行動には、請求者をはじめ、横須賀じん肺被災者の会、じん肺・アスベスト被災者救済基金、全駐労横須賀支部、センターなどから二〇名近くが参加。防衛施設庁側からは、本庁の石田業務部業務課長、横浜防衛施設局の本田業務部長、清川業務課長らが出席した。

まず、本田部長が横浜局の調査の進捗状況を報告。それによると、昨年一二月末に現地の横須賀基地に請求者別の請求書や陳述書、基地以外の職歴調査書などの資料を提出し、内容を検討するようお願いしたということだった。石田課長の話しでは、昨年八月にも担当者の引継ぎの時に「至急内容を検討してくれ」と横田の在日米軍司令部に申し入れたが、一二月には「上級司令部と検討中」との返事があったが、回答がいつになるかはわからないということだった。

問題となったのは、米側の返事する時期に期限が付けられてないこと。横須賀基地の返事は一月末までということになっているが、これは事実関係の調整の問題である。米側の資料に一九八〇年代以前の資料がないことが、ちょっと気に掛かるところだが、横須賀基地側の検討結果の返事があれば、事実関係はほほ確定するだろう。問題なのは在日米軍司令部の「上級司令部と検討中」との返事がいつになるのかということ。上級司令部とはワシントンの国防省とハワイの司令部のことを指すらしいが、いつまでに返事をということは防衛施設庁から強く要請されていない。石田課長自身が「期限を付けることできない」と言う有様である。これには、「交渉の仕方が甘いんではないか!」「なめられているんではないか!」と追及したが、石田課長はダンマリを決め込むばかりだった。

最後に、横田の在日米軍司令部に再度強い申し入れを行うよう要請した。防衛施設庁側が裁判の判決が出る前に決定を出すつもりがないことは歴然としていた。したがって、地位協定に基づく補償の決定が出ないことを前提にして、裁判の二次提訴を準備しなけれならない。請求者側から言えば、当面地位協定で決定が出ないことを理由に裁判提訴に踏み切っても当然という考え方ができるだろう。しかし、誰もが裁判でというわけにはいかない。また、地位協定の場合、米軍の不法行為が認められた場合、裁判と違って損害賠償の七五%を米軍が負担することになっている。したがって、時間はかかるが地位協定に基づく補償を勝ち取っていくことには、大きな意味があると言えよう。