バス運転手の災害性腰痛が公務外?
□乗客を介助中に腰痛を発症
横浜市の市バス運転士であるMさん(三九歳)は、二〇〇〇年八月に乗客の車椅子介助中に腰痛を発症した。その日は我慢して何とか勤務を続け、翌日は安静にしていたが痛みは取れない。医療機関で「腰部捻挫」と診断され、休業して治療することに。約二ヶ月後に職場復帰し、その後は通常の勤務をしている。
それから一年以上経過した二〇〇一年一一月二六日付で、横浜地方公務災害補償基金から「公務外」の決定通知が届いた。理由は、ヘルニアの既往症が完治していなかったことと、車椅子介助は通常業務であり、突発的な出来事はなかったことの二点である。待たされた挙句にそんな理由での決定は納得できない。Mさんは、たまたま親族がお世話になっていた横浜法律事務所に相談。そして弁護士から、「なぜ認められないのか」「かなりの力量を要する大変な課題なのか」という率直な疑問がセンターに寄せられた。
実は、この間の各地の地方公務災害補償基金の災害性腰痛に関する決定はひどい。とにかく突発的な出来事がなければダメだの一点ばりで、極めて現実離れした解釈をしている。裁判では次々に否定されているが、全く対応を変えようとしない。加えて、一年以上かかるという決定の遅さも、あまりにも「お役所的」だ。
弁護士は、センターの助言を受けて早速、審査請求するとともに、反論書を作成した。
□ずさんな調査
まずヘルニアについて。これはMさんに限らないのであるが、基金は肝心の主治医への調査が極めてずさんである。簡単な照会状を主治医に提出したところ、「臨床的にもMRI検査によっても所見はない、作業が原因の腰部捻挫」とのこと。
□車椅子介助は通常業務ではない
車椅子介助が通常業務であるというのも「残念ながら」違う。運転士の通常業務は、バスの運転である。もちろん車椅子の乗客の介助も仕事ではあるが、バリアフリーの進まない今の交通事情では、車椅子で市バスに乗ることは本人に非常な困難を強いている。事実、横浜市全体で月に数件しか報告されていない(交通局の『車椅子・リフト付き・スロープ付き・ノンストップバス・盲導犬乗車報告書』という記録から)。介助者もない単独での車椅子乗車はさらに少ないであろう。車椅子介助が「通常業務」になること、いや車椅子の障害者が当たり前に一人で公共交通機関を利用できるようにすることが我々の責務だ。ちなみにMさんも勤続一三年になるが、今回が初めての介助だったと言う。
さらに当日の出来事について、基金は、上司を経由する形で、発症から一年以上経過した二〇〇一年一一月になって、いつ痛みが生じたかの事実確認をしている。結果としていい加減な代物だ。労働基準監督署ならば、もっと早い段階で担当者が直接被災者に聞くべきことだろう。実はMさんは、車椅子(約六〇キロ)を持ち上げたときに痛みが走り、さらに押したときに痛みが強まったのである。
□公務上認定を!
弁護士は、以上のような事実を記した反論書を審査会に提出。当然、公務上の決定になると予想されるが予断は許さない。結果はまた報告する。