審査会で逆転裁決!過労によりうつを発症

審査会で逆転裁決! 異例のスピード判断

過労によりうつを発症し、解雇されたKさん

 タクシー会社に勤務するKさんは、会社の勧めもあり、運転手から運行係になり、無線配車や車・乗務員管理等の業務に従事した。仮眠もままならない夜勤も含めた長時間労働のうえ、二〇〇四年一〇月に先輩が辞め、年長者ということで営業所のリーダー的存在に。業務量は増え、右翼関係者のクレーム処理、翌年には関連会社との無線統合などが原因で、うつ病を発症した。一年余りの休業を余儀なくされたが、症状は改善せず、休職期間満了で解雇された。労働センターの紹介により、Kさんのお連れ合いがセンターに相談に来られた。そして、労災申請すると同時に湘南ユニオンに加入することになった。
Kさんは会社に解雇撤回を求めたが、会社は拒否。そして厚木労働基準監督署は、不当にも〇七年九月に不支給決定。〇八年二月に労災保険審査官も審査請求を棄却。先輩が辞めたこと、一三〇時間を超える時間外労働、クレーム処理、無線の統合、一つだけ取っても業務上になってもおかしくないのに、労基署も審査官も「大したものではない」と決めつけた。
 なかなか症状が良くならない夫、乳児を含む子供二人を抱えたお連れ合いの苦労は並大抵のものではなく、裁判を起こそうにも、経済的にも精神的にも困難なことは明らかだった。
今年一月、労働保険審査会の公開審理が開かれ、初めてKさん本人が自分の言葉で、いかに大変な仕事であったかを語った。それまでは体調が良くないので文書でのみ提出してきたのだ。やはり、自ら語る言葉には説得力がある。業務上になる可能性もあるかもしれないと考えた。しかし、裁決までには早くても半年、通常は一年以上かかる。
 二月に労働保険審査会から代理人である私に書類が届いた。「Kさんの件か。あまりにも早いし薄いな。またいい加減な理由で棄却かな」と思いながら書類を見ると、労働基準監督署の決定を取り消すとの記述があった。やった! 業務上だ!
本当に良かったと思う一方、理由を読んで怒りも覚えた。先輩が辞めて仕事量が大きくなった、それが強度で言うと「Ⅱ」に当たり、さらにその後も恒常的な長時間労働が続いたのでⅢになる。総合的に評価してストレスは「強」と考えられるので業務上だという。これらの事実関係は、監督署段階からわかっていたこと。なぜ、もっと早く適切に業務上と判断できないのだ。監督署や局医(労災医員)、審査官は本当に許し難い。
 会社に対して、湘南ユニオンが団体交渉で解雇撤回と損害賠償を求めている。早速、解雇は撤回されたようである。【川本】