過労死等防止対策推進シンポジウム

11月1、神奈川県民ホールで「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催された。講演では、過労死弁護団の玉木一成さんが、「過労死防止大綱の意義と活かし方」を解説。つづいて労働学者の山本勳さんが、「メンタルヘルスと働き方・企業業績との関係」を講演した。
休憩を挟んで、北里大学の堤明純さんが、「過労死等のためのストレス対策」をお話しした。その中で、メンタルヘルスにおいても、労働者が関与する中でリスクマネジメントを進めるべきだという考え方を、改善事例を具体的に示しながら説明。
最後に、過労死で夫や息子を亡くしたご遺族らが自らの体験等を話した。センターが支援している矢島さんも、「自分の母親も過労で倒れ、重い障害が残った。法人は職場にいたことは認めても、仕事をしていたかどうかわからないなどと主張している。名ばかり管理職で、手当が定額、労働時間も全く管理していない。こんな働き方を認めるような労働時間法制の改悪は許せない」と訴えた。
このシンポジウムの主催は厚生労働省だが、過労死弁護団や過労死を考える家族の会が具体的な内容を企画されている。その中で当センターにも声がかかり、被災者の交流会を進めていくことになった(次頁参照)。さまざまな団体や個人の方々とも協力しながら、「過労死等防止対策」を進めてゆきたい。【川本】

 

「メンタル労災・パワハラ・過労疾患被災者交流会(仮称)」に参加を

1、 メンタル労災や過労疾患の労災認定、損害賠償請求などに取り組んできた当センターや労働組合は、被災者、家族ないしは遺族らの当事者団体の必要性を強く感じています。労災補償や企業責任を求める運動は、そうした労働団体や弁護士さんも担っていますが、やはり当事者が抱える課題(治療、家庭・地域も含めた社会復帰、エンパワーメントなど)は、多種多様なものがあるからです。なによりも当事者同士の交流や情報交換は、被災者(家族、遺族も含めて)団体でなければ十分に取り組めません。

2、 上記のような長い名称の交流会を目指す理由は、約30年前に「過労死」として労災認定闘争が取り組まれた脳・心臓疾患に続いて、15年程前からは精神疾患が労災として認められ、さらにはパワハラの相談も、10年ほど前から激増しているからです。ちなみに、昨年度の労災認定の実績をみても、「過労死等」として整理される脳・心臓疾患と精神疾患の労災請求・支給件数は、おおよそ1:2です。また、精神疾患のうち、「出来事」別にみると、いじめ嫌がらせや上司とのトラブルを理由とする請求は3割、支給でも2割を占めています。いずれも長時間労働の記録がはっきりしているものは比較的容易に認定されていますが、当センターやユニオンへの相談は、パワー・ハラスメントなど、必ずしも長時間労働ではないケースの方が多くなっています。精神疾患には至っていませんが、理不尽なパワハラの相談も後を絶ちません。パワハラについては規制する法律もガイドラインすらないのが現状です。

3、 交流会の目的の一つは、被災者を軸にした幅広いネットワークの形成です。被災者も、実は経験という貴重な知識を持っておられます。また、当センターなどのように、法律や医学、労働運動に関する専門的アドバイスを行う団体・個人にも協力を呼びかけます。それが、被災者の課題の解決に結びつくことになりますし、さらに被災者の参加を促すことにもなるでしょう。

4、 以上のような趣旨に賛同いただける被災者や支援・関係者が参加する交流会を重ねる中で、お互いの信頼関係を築きながら、課題を整理して、被災者運動を前進させましょう。