介護老人保健施設の労災事故 CRPSの後遺障害が12級から9級に
女のユニオン・かながわ 大須賀啓子
●後遺障害一二級
老健施設K苑での労災事故で複合性局所疼痛症候群(CRPS)と診断されたYさんは、〇九年七月末日をもって「症状固定」とされ、労災打ち切りとなり、後遺障害の認定を受けるため九月、横浜北労基署で医師の診断を受けた。その診断結果が一二級であった。CRPSの場合、一二・九・七級の三等級あり、一二級は一番軽度の等級で、その診断基準は「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差支える程度の疼痛があるもの」とされている。
この基準とYさんの症状には大きな乖離がある。Yさんは右手が全く使えない。日常生活で両手を同時に使用する作業、例えばジャガ芋は剥けない、缶きり・栓抜き・ペットボトルの開栓はできない、食器洗いはできない。字を書く、鍵を開ける、トイレ排泄後の清拭等はすべて左手で行うことを余儀なくされている。また、常に痛みにさらされている。同じ姿勢を持続したり一時間以上歩くと、痛みが増す。このように日常生活の基本に大きな支障を抱えているのである。主治医からは「介護士の仕事には戻れない」と宣告され、Yさんは大きなショックを受けた。そして、CRPSは決定的な治療法が確立されていない。それが何故、「通常の労務に服することができる」と診断されるのか。
●審査請求で九級に
ユニオンは、神奈川労職センターの川本氏と連名でYさんの代理人となり、一〇月に神奈川労基局に審査請求を申立てた。主治医の診断書の他、CRPS専門医である亀戸ひまわり診療所の三橋医師の意見書も提出。一二月七日には審査官から聴取調査を受け、今年一月二六日に審査請求の決定書が届いた。内容は、「労基署が認定した一二級を取り消し、九級が妥当」とするもの。決定書によると、一二級と認定した労基署の医師はCRPSには該当しないと診断している。Yさんによると、彼の診断は数分程度でYさんにほとんど質問もしなかったという。この医師の認定により、Yさんとユニオンがどれだけの時間とエネルギーを費やしたかを考えると正直腹が立ったが、彼の診断が誤りと認定されたことは一歩前進である。しかし、この九級という決定にも不満が残る。Yさんは「右手が使えなくても就ける職業を色々考えて、占い師だったらできるかと思ったけれど筮竹は両手が使えないと駄目だし」と冗談まじりに言うが、深刻で一緒に笑えない。Yさんの今後の生活を考えて、再審査請求をすることとした。同時に、中断していたK苑との団交を再開することとなった。