アスベスト被害の救済・補償に向けて沖縄で講演会を開催

連合沖縄、沖縄労働安全衛生センター主催、沖縄アスベスト労災職業病相談センター共催で、「すべてのアスベスト被害の救済・補償を」を主題に、「復帰前従業員はなぜ労災補償されないのか」を副題に、二月二七日、石綿対策全国連絡会議事務局長の古谷杉郎氏を沖縄に招いて講演会を行い、約六〇名が参加しました。司会は連合沖縄の稲福副事務局長が行い、主催者として連合沖縄の與那覇栄蔵副会長が挨拶を行いました。

講演では、中皮腫・石綿肺がんの都道府県別救済率や、現在の救済・補償の状況、その問題点、また復帰前に基地で働いていた元基地従業員に対する労災保険法の対象外になる問題に対し、労災保険法を改正して労災保険給付の対象とするとともに、救済法を改正して労災時効救済の対象にもすることが、最も現実的な解決策である。また、石綿救済法が施行されて四年経過した今年が救済法見直しのチャンス等を話していただきました。

講演後は質疑応答が行われ、「中皮腫や肺がんの認定率引き上げのためには何が必要か?」「法改正だけでは不十分。肺がんの認定基準を見直さなければ、法改正されても多くは救済されないのでは?」などの質疑や、「有意義な講演会だった」という声があがりました。その後、集会アピール文を、沖縄アスベスト労災職業病相談センターが読み上げ、神奈川労災職業病センター西田専務理事が行動提起と今後の課題を話しました。

県会議員や那覇市会議員の参加もあり、民主党の玉城デニー衆議院議員が連帯の挨拶を行うなど、関心の高さが感じられました。今後、復帰前に離職した基地従業員の労災保険法対象外問題に対し、それが改善されていくよう、沖縄から要請行動等を行いたいと思っています。【西表聖隆/沖縄労職センター】

沖縄集会アピール

沖縄では復帰前に離職した基地従業員が6833人もおり、1994年までに離職した基地従業員22579人の30%も占めています。その多くが石綿曝露作業に従事していたと考えられています。しかしながら、復帰前に離職した基地従業員アスベスト被害者が労災申請した場合、「復帰特別措置法第143条において、米国合衆国政府に直接雇用されていた復帰前の基地従業員に対する労災保険法の適用はないものとされているため」として門前払いされてしまいます。昨年衆議院解散総選挙の際、石綿対策全国連絡会議は全政党に対して公開質問を行った。自民党を除く全政党から回答があり、すべて解決を図っていくと回答している。昨年9月26日県内民主党議員らによるアピールを受けて、民主党政策委員会に提案されているところである。「亡夫の労災棄却は納得できない!」と復帰前に解雇された基地従業員アスベスト被害者の86歳になる妻が切実な声を上げたが、労働基準監督署ははがき一枚の決定通知でもって「我国の労災保険対象外」として十分な審査を行わずに半ば門前払いの決定をしている。日本政府がなぜ米軍との直接雇用にある復帰前基地従業員に労災補償の請求権を引き継がなかったかは明らかではないものの、仮に「琉球諸島及び大島諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に関する合意議事録等」(昭和47年3月21日外務省告示第53号)に基づき、高等弁務官布令42号で請求権を行使したとしても、米国にはわが国の石綿救済法に当たる時効労災を救済する制度がなく、時効1年で請求権を失ってしまうことになってしまう。そのため、この問題はなお未解決と言う外なく、アスベスト被害が長期の潜伏期間を経て発症する特殊性をもった疾病であることを鑑みて日本政府の責任において補償・救済すべき問題と言える。

アスベスト以外の遅発性疾患でも、法施行以前に曝露し、施行後発症した発がん物質ベンジジン被害者に法改正して労災適用させた前例として和歌山ベンジジン事件がある。ベンジジンに戦前曝露し、膀胱がんなどを戦後発症した原告ら7名が提訴した裁判で最高裁判決(平成2年(行ソ)第45号)がベンジジン被害者を労災の対象とすることを認めたもので、これに従って旧労働省が通達を出し、ベンジジンなどの被害者に遡って労災給付したものです。こうした遅発性疾患の前例に基づいて、沖縄の復帰前に曝露して、復帰後に発症した基地従業員アスベスト被害者についても、法改正によって労災適用することは十分可能と思われる。

いずれにしても、復帰前基地従業員アスベスト被害者をこのまま労災の対象から除外しておくことは、本土の基地従業員と比べても著しく不平等であり、早急に政治的な解決をはからねばならない。私達は以下のことについて国及び関係機関に対して解決を強く求める。

1.復帰前基地従業員アスベスト被害者の労災適用がはかられるよう法改正等をもって、この問題の解決を早急に実現すること。

2.法改正実現後は、復帰前基地従業員アスベスト被害者に対する労災適用の周知を徹底させること。

2010年2月27日
日本労働組合総連合会沖縄県連合会
沖縄労働安全衛生センター
沖縄アスベスト・労災職業病センター