多発性骨髄腫と悪性リンパ腫を放射線被ばくによる職業病の疾病リストに追加
◎厚生労働省が多発性骨髄腫と悪性リンパ腫を放射線被ばくによる職業病の疾病リストに追加
厚生労働省が被ばく労働による職業病疾病リストに、「多発性骨髄腫」と「悪性リンパ腫」を加える方針を固めた。現在は白血病や肺がん、皮膚がんなどが例示されているが、それらに追加される。
専門検討会では事務局の厚生労働省が提案し、異論は出なかった。説明した放射線医学総合研究所の明石真言・緊急被ばく医療研究センター長によると、国内外の原子力施設、医療被ばく、原爆の影響についての最近の論文を検討した結果、多発性骨髄腫は被ばく量が多いと発症も増える関係が認められた。悪性リンパ腫は放射線起因性のある白血病と類縁疾患であり、合理的なデータや根拠が示された論文がある。
本誌の読者もご存知の通り、すでに多発性骨髄腫で長尾さん(故人)が04年に労災認定されており、悪性リンパ腫では喜友名さん(故人)が昨年労災認定されている。つまり、職業病のリストに例示されていなくても労災認定されることはある。しかしながら、労働者本人やご遺族、あるいは労働基準監督署の職員も、例示がないと請求につながりにくいのも事実。例えば長尾さんも監督署に相談に行って「門前払い」されているし、喜友名さんも監督署が被ばくとは全く考えずに不支給決定、審査請求中に本省が専門検討会を開くという異例の事態だった。
そして、東京高等裁判所は長尾さんの損害賠償請求裁判において、「多発性骨髄腫と放射線被ばくの因果関係はない」としたため、最高裁で係争中である。そう言う意味でも今回の厚生労働省の判断は極めて妥当であり、かつ極めてニュース性の高いものだと思われる。あのクボタショックを引き起こした関係者の1人である、毎日新聞の記者が記事を書いているのだが、結局他紙は後追いの報道も全くしていない。【川本】