センターを支える人々:鈴木剛(東京管理職ユニオン執行委員長)

東京管理職ユニオンとは

 東京管理職ユニオンは、1993年に結成した個人加盟の労働組合(ユニオン)です。当時のバブル崩壊によって一生安泰と言われた管理職労働者のリストラが始まりますが、それに呼応するようにして当組合は結成されました。
 これまでに約4千件の事件を解決して来ましたが、世の中に知られている事件としては日本マクドナルドの名ばかり管理職事件、オフィス機器リコーの追い出し部屋事件、最近だとPIP(成果改善計画)として有名なアストラゼネカ事件などの問題に取り組んできました。近年では職場の支部作りに力を入れており、全組合員約600人のうち6割が何らかの職場の支部に所属しています。

私の自己紹介

 私自身は学生の頃から『愛のコリーダ』(1976年、大島渚監督)の無修正版の自主上映会を行うなど、学内の課題や社会問題に取り組み社会の変革を志向する変な学生でした。卒業後は、テレビの報道番組の制作会社や、労働者が協同して仕事をおこす労働者協同組合で仕事をしました。その後、2006年の派遣法の改悪の頃から非正規雇用の問題に関わるようになり、派遣村の運動を機会に東京管理職ユニオンの専従職員となり、2013年から執行委員長を務めています。
 ユニオンでは、労働相談から団体交渉、争議行動、労働委員会への救済申立、訴訟闘争の指揮、職場での組合作りなど労働組合活動全般に携わっています。また、上部団体である全国ユニオンの会長も兼ねており、ユニオン運動全体の運動方針作りやネットワーク作り等も行っています。

組合活動の苦難とやりがい

 当組合は労働相談が多く大変です。相談内容も深刻なケースが多く、相談者のうち約3割は何らかのメンタル疾患を発症ないし疑われる方です。家庭の事情や家のローンなどの借金問題など、労働問題だけでなく多層的な背景事情を持つ方の相談も一筋縄ではいきません。
 また、管理職の労働者からの相談も多いのですが、管理職は職場で孤立していて、更に労働者の団結とか横の連帯の意識が弱いので、どうやってお互いのつながりを作っていくかに苦労します。場合によっては、加害者側からの相談(パワハラやセクハラによる懲戒処分が重すぎる又は冤罪)も持ち込まれる事もあり、対応が難しいです。
 一方で、管理職ならではですが、相談者の管理職が職場の人間関係を掌握している場合には一気に会社全体で組合を結成することができたり、会社が危機の際には自主管理など労働組合による会社再生にチャレンジすることができるなどダイナミズムがあります。また、外資系企業や大企業の労働者の相談も多く、労使関係の最先端(名ばかり管理職、追い出し部屋、PIPなど)の事件が多い点もやりがいを感じます。

安全センターとの関わり

 もともとユニオン運動のネットワーク等で人脈的な関わりはありましたが、メンタル疾患を発症してしまった相談者の場合など、神奈川労災職業病センター、東京労働安全衛生センター、関西労働者安全センター等の各地の安全センターと連携して取り組んでいます。労働事件の背景事情が労災事故や職場の安全衛生に関係することも多く、その場合には団体交渉に参加してもらうなど、労使問題の解決に協力して頂いています。今後も各地の安全センターと連携しながら、パワハラ防止法など政策的な課題についても共に取り組んでいきたいと考えています。

労働者を取り巻く状況

 いま人事政策や成果主義制度を背景として労働者が個別に分断され、個々の労働者に対する圧力が非常に強まっています。また、外資系企業を中心に追い出し部屋、ロックアウトやPIP(成果改善計画)のような陰湿な人事政策が蔓延しています。そして企業別の大労組がこうした事態に十分対応できていません。労働組合の組織率も落ちており、労働者は過酷な環境に置かれています。
 そんな中、私たちの様な個別加入のユニオンが職場に横のつながりを作っていく事が非常に重要な社会的な役割なのです。ユニオンが職場に入り、仲間を広げ、労働者が安心して働き続ける職場環境を作っていくことが必要です。

私の野望

 まず、教育機関と提携して労働者教育や労働活動家を育成する場を作りたい。それと正規や非正規など様々な雇用形態を網羅する労働組合、労働弁護士、安全センター、医師、シェルター、子ども食堂、更に文化機能も加えて、労働者の抱える諸問題にワンストップで対応できる労働者の拠点を作りたい。日本の労働者の多くは会社の仕事か家に帰って寝るだけなので、労働者が社会と接する場を作りたい。それは孤立している労働者に横のつながりと社会性を回復させる拠点となり得ます。これからも労働者が安全に安心して働ける職場作りのために共に頑張りましょう‼