中皮腫患者の介護保険利用の実例3例(松島恵一さん 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会/本部事務局)

 皆さん、初めまして。中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の全国事務局を任されています松島恵一と申します。埼玉県に住んでいます。私は遺族という立場になります。2010年に母親が胸膜中皮腫で亡くなりました。その時に中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の事務局の方に大変お世話になりまして、そこから私の患者と家族の会の関係が始まって、今では全国事務局という役を任されており、日々、精力的にこの問題の解決のために活動させていただいています。
 今日は、中皮腫患者さんの介護保険の利用の実例ということで3例ほど紹介させていただきます。正直、我々も中皮腫の患者さんが介護保険をどの程度、利用されているのかという情報が無くて、大変、情報を集めるのに苦労したのですが、遺族の方、今回、大変辛い思い出になってしまうのですが、本当に協力してくれた方が3名ほどいらっしゃいまして、それで今日の実例報告ができることになりました。

■中皮腫の病気の特殊性を熱心に説明

 まず実例1、A様の事例です。もうお亡くなりになられたのですが、介護保険の申請時64歳でした。2014年2月に悪性胸膜中皮腫を発症し、同年2月から5月にかけてアリムタ・シスプラチンを4回投与しております。その後、2014年10月から翌年5月にかけて再度、アリムタ・シスプラチンを4回投与。その後の2015年7月に介護保険の申請となります。その後、同年8月自宅療養で緩和ケアを併用しながら、同年10月にお亡くなりになられました。
 A様の介護保険の流れです。2015年7月6日に市役所の介護保険課に介護保険の申請に行っています。これは、A様の奥様が同年6月末から7月上旬にかけて、A様の状態の悪化に気づきまして、奥様はご主人の最期は必ずご自宅でというお考えの方で、すぐに介護保険の申請に行かれました。
 介護保険課は7月17日に自宅に認定調査に訪れます。そして7月29日に要介護2の認定になりました。7月6日に申請に行って7月29日に認定と、1ヶ月もかからないうちに介護認定となりました。通常、介護の認定になるのに1ヶ月から2ヶ月かかりますが、A様の場合、認定調査の時にケアマネージャー2名の方がご自宅に来たのですが、奥様が中皮腫の病気の特殊性というのを熱心に説明して、その結果1ヶ月もかからない介護認定という形になりました。その後8月3日に地域支援包括センターと居宅介護支援契約を結び、2015年8月21日から介護サービスの利用を開始します。

■介護保険の申請時のニーズと認定後の利用実態

 介護保険の申請時、A様のニーズは介護ベッドのみです。ADL(日常生活動作)も比較的安定していて、中皮腫は本当に終末期に突然に状態が悪くなるという、まさにそれを表していて、A様の申請時には、少し歩くと息切れがする程度の日常生活の不便さで、痛みが多少あったので、安眠できる環境を整備するために介護ベッドが必要だと、それが申請時のニーズです。
 実際にA様が利用された介護介護ベッドは3モーターで、頭の部分のギャッジアップと足の部分のギャッジアップと、あと、ベッド自体の高さが上下する。これが一応基本になる介護ベッドで、自宅療養中、全期間利用されています。
 その次に褥瘡予防電動エアマット。これは亡くなる20日前より利用されています。このエアマットは空気がマット全体に一定に入るのではなくて、右側に入ったり左側に入ったり上に入ったりという形で、自然にそのマットの力で、人間が寝返りをうっているような状態となり、圧迫している時間がすごく少なくなるので褥瘡の予防となります。
 そして痰の吸引器。これは10日前より利用されています。A様は痰が20日ぐらい前から非常に出るようになり、この10日前にカニューレといって喉に穴を開けて、それを装着しています。
その他に訪問介護を20日前より利用しています。訪問ヘルパーが自宅に来て、おむつの交換をしてくれたり、身体を拭いてくれたりとか、奥様がいないときに色々してくれます。訪問看護も利用し、同じようにバイタルチェックをしたり、痰の吸引です。訪問介護ヘルパーは痰の吸引ができないので、痰の吸引は基本的に看護師、あとは奥様という形になります。
 そして訪問入浴。お亡くなりになる数日前に1度利用したのですが、訪問入浴カーといって軽自動車の後ろが全部お風呂になっている車が来て、利用しようとしました。しかしその当日、朝にセッティングした後に熱発してしまい、結局はそのお風呂には入らなかったのですが、一応利用という形になっています。
 その他にも在宅酸素を利用しています。在宅酸素も20日前から利用されています。

■介護保険の認定を受けたポイント

 A様の介護保険のポイントです。通常65歳以上の方が第1号保険者で介護保険を利用されるのですが、A様は当時64歳だったので第2号保険者になります。第2号保険者の場合は、特定疾病を患っていて介護や日常生活の支援が必要になったとき介護保険を利用できます。その特定疾病としてがん、末期がんが適用されます。
 A様の介護保険のポイントの2つ目ですが、これははっきり言って、奥様のご主人に対する観察力と判断力、在宅療法を決めた時点での早めの介護保険の申請です。通常ADLの状態が良くて介護保険の申請をすると、その人のADLにあった状態だから基本的に低く認定されてしまいます。しかし先ほどの福神さんもおっしゃっていたように、要支援や要介護1でもそれなりのサービスが利用できるので、この早めの介護保険の申請というのは重要です。
 もうひとつのポイントとして、認定調査員に対する奥様の病状説明です。多くの中皮腫患者さんは自立し、もちろん認知症もなく生活されています。にもかかわらず急に病状が悪化し、ADLも一気に低下してしまうという中皮腫の特殊性を認定調査員に真剣に訴えたということになります。がん患者さん、中皮腫患者さんの場合は、奥様、またはご本人が本当にその病気の特殊性を真剣に訴えるということが非常に大事になります。その結果、A様の場合は1ヶ月もかからずに認定も下りました。

■胸膜剥皮術の後の介護保険

 2例目の実例はB様63歳。現在療養中の方で2017年2月に悪性胸膜中皮腫を発症しました。同年4月に右の胸膜剥皮術をしています。同年9月から10月にかけてアリムタ・シスプラチンを3回投与。2018年3月に右の胸膜の膿胸を発症してしまいました。実は2018年1月にインフルエンザに罹り入院され、身体の抵抗力がだいぶ落ちてしまい、胸膜に膿胸ができてしまう。でも、膿胸は自宅で奥様がガーゼ交換できるからという事で退院させられてしまって、奥様が日に2回ガーゼ交換します。右の肺に拳大の穴が今でも開いており、本当に身体の中身が見えている状態です。ガーゼを1回30、40枚ぐらい使って、その上に防水のテープを貼るという状態です。その他、週に1回、病院に受診しています。
 B様の介護保険の流れですが、2018年6月26日に役所の介護保険課に申請に行きました。7月2日に認定調査員が自宅に来て、その翌日7月3日に地域の包括支援センターにて暫定ケアプランを作成してもらっています。

■患者会事務局が申請に同行し中皮腫の特殊性等を説明

 申請時のB様のニーズは訪問看護サービスです。これは奥様が毎日その膿胸の処置をしていますので、自分が体調不良で寝込んでしまったり、急な残業で帰れない時とか、誰が膿胸の処置をするのかを非常に心配しておりまして、一番のニーズがその訪問看護のサービスです。もうひとつは介護ベッド。ご主人が右の膿胸があるために右側臥位で寝る。仰臥位で寝るにもちょっと不便なのでほとんど左向きでしか寝られないので、やはり介護ベッドによる安眠できる環境というのが必要でした。
 B様の介護保険のポイントですが、申請時B様も63歳。特定疾病のがんを適用しています。患者会事務局が申請に同行し、窓口で奥様の代わりに中皮腫の特殊性等を説明しました。実は私が同行し、奥様は介護保険について全く何も知らない状態でしたので、私が窓口でいろいろ説明しました。認定結果が出る前の暫定プランの作成、暫定介護サービスもその時点でお願いして、暫定ケアプランを作成していただいたという経過です。

■介護療養型医療施設に入所

 実例3例目はC様65歳。2017年10月に悪性胸膜中皮腫を発症し、同年10月から12月にかけてアリムタ・シスプラチンを3回投与。2018年1月から3月の間に病院のソーシャルワーカーのすすめで介護保険を申請しました。2018年3月に介護療養型医療施設に入所し、同年5月にお亡くなりになられました。C様の場合、ご家族の依頼で、自宅で療養ができないということをソーシャルワーカーにお話をして、たまたま入院先の病院が療養型の医療施設も併設されていたので、そこに入所したという経過です。
 C様の介護保険のそのポイントとしては、入院中の総合病院が療養型医療施設も併設していたという事です。

■3つの実例から見えてきたこと

 中皮腫の場合は65歳という年齢に関係なく、特定疾病(末期がん)を適用する場合が多くなります。病状に関係無く、早いタイミングの申請で終末期に対する準備をしておく必要があります。申請窓口や認定調査の時に、中皮腫の特殊性を説明するという必要があります。
 また、今回この少ない事例ですが、多くのサービスが終末期に集中したということがわかりました。サービスを効率よく使うことで自宅で終末期の療養ができた。すべて自宅でというのが正しいわけではないですが、今回の事例では、ご家族が望んでいた自宅での終末期の療養ができたということになります。また、施設で終末期を迎えるということも、中皮腫の患者さんでもできるということがわかりました。以上になります。ご静聴ありがとうございました。