新型コロナウイルス感染症は労災だ

「夜の街」差別を許さない!
労災認定事例の積極的公開を!
権利主張の「自粛」を防ごう!
前頁の表のとおり、新型コロナウイルス感染症の労災請求や認定数が増えてきた。全国労働安全衛生センター連絡会議が何度も要請し、国会議員の質問によって情報公開の程度も上がってきたことは率直に評価したいが、まだ不十分な点も多い。改めて問題提起したい。【川本】

「夜の街」の労働者の労災認定と労働条件確立を

東京都は、キャバレーやホストクラブなどの従業員や客の感染拡大を受けて、いわゆる「夜の街」で接客業に従事することが問題であるかのような情報を流している。問題は一部経営者や行政の方だ。新型コロナウイルス感染症が拡大する前から、賃金未払い、不当解雇、セクハラ、暴力を含むパワハラなどの違法脱法行為がまかり通ってきたし、それを黙認してきたのは、むしろ行政ではないのか。勇気ある労働者が、ユニオンなどに加入し、権利を主張したとたんに経営者が雲隠れしたり、まともに交渉に応じない。そもそも誰が賃金を支払うべき使用者なのかすらわからないようなことも少なくない。

したがって、いわゆる「夜の街」の接客業で感染した労働者が労災請求することは容易ではないことが予想される。東京都と労働基準監督署は、ただちに連携して、積極的に介入して労災認定、そしてそれを機に全ての職場で労働基準法や労働安全衛生法を守らせる、当たり前の労働条件の確立に向けた積極的な指導をするべきである。

医療従事者等以外の労災認定事例の積極的公表を

表の通り、建設業、製造業、運輸業、宿泊業等での労災申請が増えてきている。早期の認定が望まれることは言うまでもない。認定とあわせて、プライバシーに配慮しつつ、具体的にどのような状況感染し認定に至ったのかをもっと公表するべきである。そのことが、感染者の積極的な労災請求と認定につながることは間違いない。

感染を改善の契機に

医療や介護施設などの労働者は、感染しないように、させないように、さまざなま努力を行なっている。それでも感染してしまった場合、あるいは感染しなくても、つい「失敗してしまった」と感じる労働者もいるようだ。ある医師も、職場や自分自身もきちんと対策を講じたつもりでも、ふだんからトレーニングしていないと、「失敗」してしまうことがあったと、正直に述べている。そのことが、被災者らの労災請求を躊躇することにつながっていないか。

そもそも労災は自己責任ではないし、職場の対策が重要であることは言うまでもない。ただ、新型コロナウイルス感染症についていえば、職場で出来る限りの対策を講じても、時には感染、発症することもあり得るという認識で、被災者の権利主張の「自粛」を防がなければなるまい。むしろ「失敗」の検証こそ、よりよい対策につながることは間違いない。