神奈川労働局との交渉報告

 今年も神奈川労働局との交渉が8月20日に行われた。要求は別記の通り。局独自の制度や取り組みもあるのでその関連資料を紹介するとともに、当日出た意見ややりとりを報告する。【川本】

令和元年度職業性疾病認定状況

 各労働基準監督署でも確認しているものをまとめているだけであるが、こういうまとまった形で頂けると比較が容易である。例えば、石綿関連疾患は造船の街である横須賀署がかつては多かったが、横浜南署や鶴見署(どちらも造船に加えて製造メーカーやプラント関連など)が多いことがわかる。上肢障害の請求件数は、川崎北署がトップ。横浜北署は脳心臓疾患と精神疾患が非常に多いのだが、上肢障害が少ない。それぞれの所轄の事業場数や業種の数だけではなかなか説明できないような気がする。そのあたりの分析も来年は局に求めたい。

令和元年度石綿関連疾病認定状況(労災法)

 これも監督署の決定をまとめただけであるが、業種はもとより職種までまとめているので非常にわかりやすい。とくに一口に建設業と言ってもさまざまな職種があり、事業場公表に加えて、こういうデータをきちんと全国的にもまとめて発表してもらいたい。例えば、現場監督の認定数が意外に多い。

審査請求事件決定区分別処理状況

 棄却が監督署の決定通り、つまり業務外ならそのまま。取消というのが監督署の処分が取り消されて、例えば業務外が業務上に、障害等級なら重く決定されたもの。181件中14件だけなので、率にすると7・7%に過ぎない。署の決定と審査請求、あるいは審査請求に対する決定が年度をまたがるが、精神疾患でいうと、おおよそ100件の不支給決定のうち、半分ぐらいの人が審査請求をしているようだ。

神奈川労働局外国人労働者相談コーナーにおける相談状況

 労災請求に関する相談割合が多いことは、会社や監督署の職員に電話で尋ねればすぐにわかるであろうことが、外国人の被災労働者が、わざわざ相談コーナーに聞かざるを得なくなっていることが伺われる。ちなみに、以前交渉で尋ねたところ、監督署には毎日、いちいち記録をとれないぐらい労災請求関連の問い合わせはあるとのことだった。

高年齢労働者の労災防止について

 署でも必ずと言っていいほど話題となったのが高年齢労働者の労災が増えていること。特に神奈川では50才以上の労働者層の労働災害は全体の5割を超えており、死亡者数では6割を超えた。厚生労働省は今年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を公表している。
 概要は以下のサイトの通りである。労働者に対しては、自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めるとか、日頃から運動を取り入れ、食習慣の改善等により体力の維持と生活習慣の改善に取り組むといった、若年層も含めて当てはまるような当たり前の内容。どのように周知啓発していくのかが課題ではないかと指摘し、局もそれは課題と感じていると答えた。上記ガイドラインでは、安全衛生の視点から、事業主に対していろいろ配慮することが求めらている。しかし、定年後に、それまでと同じような仕事をせいぜい半分程度の賃金でやらせること自体が問題ではないかと言った意見も出された。

石綿除去工事の報告について

 行政に届けることが義務付けられている一方で、とりわけ石綿障害予防規則の作業届を怠る業者も少なくない。神奈川では川崎市が監督署とも連携して、充実した行政指導を行っていることもあり、作業届の数が群を抜いている。他署でも自治体との連携をしているが、実際に全ての現場を実地調査することは不可能だろう。「日本一厳しい」とされる川崎の好事例をきちんと発信していくことが重要だと議論した。

在宅勤務について

 具体的な相談はあまりないようだが、労働時間管理をはじめとするさまざまな課題を抱えたまま、数値目標を掲げる企業まである。問題が発生したら対応するのではなく、積極的に実態を調査して指導することを求めた。

精神・脳心臓疾患の労災認定率の低下

 過労死等の請求件数が増加する中で、神奈川局では年々業務上認定になる率が低くなっている。とりわけ精神疾患については、川崎では北と南を合わせると5%を切るに至った。どう考えても低すぎる。