パワハラ長時間労働 うつ病の労災認定を獲得

ユニオンヨコスカ書記長  小島 常義

Hさんは、2001年5月(27歳)から松井商事が経営するパチンコ店「ニュー松屋久里浜店」の店長(実際は名ばかり店長)として働き始めた。16~24時勤務という当初の約束は、8時30分からの勤務にすぐに変更された。ここから9年間に及ぶ、信じられない過酷な労働と経営陣の日常的なパワハラにより、Hさんは、2010年1月にうつ病と診断されるなど、深刻な健康被害を受けた。

◎月127時間残業
Hさんの一日は、8時20分にセコムを解除して入店することから始まる。諸機械・器具の点検や修理、出勤してきた従業員と打ち合わせを行い、9時に開店する。従業員の慢性的不足により、Hさんはあらゆる業務をこなす。従業員には休憩を与えるが、本人はほとんど休憩なし。唯一の休憩である昼食時間も、機械トラブルなどがあれば働かざるを得ない。22時に閉店後は売上の集計、台の調整などを行い、23時にセコムをかけ、帰宅。24時になることもある。本来、12~18時は休憩時間だが、その約束が守られたことはなかった。
また、入社以来9年間、有給休暇は一切認められず、丸1日休めたのは、2005年6月の結婚式の1日だけ。通常の休日は月に1~2日で、それも半日のみだった。
実に、Hさんがうつ病を発症する前6ヶ月間の残業時間は、月平均127時間で、休日はゼロ。徐々に健康は蝕まれていった。

◎パワハラ
経営陣による日常的なパワハラ・いじめもひどかった。具体例を挙げれば、①意見を言うと、常に「バカヤロー」と罵倒される、②少しでも不明なデータが発生すると、証拠もないのにすぐ犯人・泥棒扱いされる、③給料日を突然変更される、④食中毒になったり、インフルエンザで39度の熱を出したときなど、休日を申し出ても一切認めてもらえない、など。
Hさんは「いつか殺される」と危険を感じていたが、2009年5月頃から体重が10㎏も激減。周囲の人からも心配された。8月頃からは不眠、食欲低下、慢性的下痢の症状や、不安やイライラ感が激しくなってきた。その症状が持続してきたので、意を決して精神科を受診した。

◎ユニオン加入、労基署に申告、裁判提訴
精神科に通院していることを専務に告げると、「甘えるな!」と怒鳴られた。このままでは、同僚がかつて病気で亡くなったように、自分も殺されるのではと思った。2010年1月、ユニオンヨコスカに相談。ユニオンの紹介で港町診療所を受診し、うつ病と診断され、診断書を会社に提出して休職にはいった。
2月に横須賀労基署に労災申請を行い、3月に残業代の未払いを申告したが、会社は、労基署の出頭命令に一切応じず、調査も進まなかった。
Hさんが6月に横浜地裁横須賀支部に損害賠償を求める裁判を起こすと、会社は、Hさんの不正行為をねつ造し反訴するなど、悪質な裁判引き延ばしを図ってきた。Hさんを精神的、肉体的に消耗させ、裁判を断念させようと目論んだのだ。

◎労災認定!
休職中のHさんにとって、労災認定の遅れは、収入の途が閉ざされ、病気療養に専念できないという大きな問題だ。ユニオンヨコスカは横須賀労基署に対して数度にわたり早期労災認定の督促を行った。2011年2月10日の労基署交渉では、Hさんのお連れ合いも同席し、家族の立場から窮状を直接訴えた。Hさんは体重がさらに13㎏激減し、「死にたい」と度々口にするようになったことを、涙ながらに訴えるお連れ合いの話を聞いていた労基署の担当官は、下を向いたままだった。
その後、6月10日付で労災認定の通知がHさんの手元に届いた。Hさんも一安心の様子で、久しぶりに笑顔を見せた。しかし、健康はまだ回復していない。今後の裁判の行方を見守りたい。