港湾荷役・腰痛患者のアスベスト労災認定
港の埠頭で港湾荷役労働に従事してきた多くの労働者が過酷な重労働により肉体を酷使し、様々な港湾病に苦しめられてきた。特に重たいと100Kgにもなる荷を担いで運搬する作業を一日中おこない、しかも長期間にわたって継続して従事することにより発症する腰痛(非災害性腰痛)によって、多くの患者が労災認定を勝ち取ってきた。
今回は、その様な港湾荷役作業で腰痛労災の認定を受けた腰痛患者の木内さん(仮名)が、アスベスト疾患を発症し、アスベスト疾患でも労災認定を受けた事例を紹介する。【鈴木江郎】
港湾荷役作業の概要
木内さんの港湾荷役作業は、日雇い、および常用労働者として以下のような作業を毎日行っていた。艀船より倉庫内に搬入する際に貨物を肩に担いではい付け作業、貨物を倉庫内の倉所から別の倉所へ移動させるはい替作業、保管してある貨物の出庫作業等。そして貨物の形態として麻袋入貨物が主流であった。
また、貨物の入庫作業時は艀内においてスリングロープにより貨物を積み揚げ及び陸揚げしベルトコシベアー等の荷役搬送機械を使用して、運ばれた貨物を肩に担いで倉庫内に積み上げる作業を行う。出庫作業は同様にはい付けされた貨物をベルトコンベアー等の荷役機械に乗せる等の出庫作業に従事していた。
アスベスト作業歴とアスベスト所見
木内さんはこのうち10年間程度、アスベストの荷役作業に携わっていた。アスベストは輸入品として原綿や鉱物のまま麻袋に詰められて運ばれ、それを手鉤を使い肩に担ぐなどして運搬し、手鉤の使用により麻袋が破け、そこから大量のアスベスト粉じんが発生していた。倉庫のはい付け現場はアスベスト粉じんでもうもうとしており、多量のアスベストにばく露していたのである。
そして退職後、木内さんは港湾荷役作業による腰痛労災認定を受けるが、あわせて石綿健康管理手帳を取得し、年2回の石綿健康診断を受け続けてきた。石綿健診の当初から「胸膜プラーク」「びまん性胸膜肥厚」の所見があったが、一昨年あたりから、歩き続けたり階段を登る際に息切れがひどくなってきた。そこで腰痛で受診している港町診療所の内科で診てもらったところ、「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」との診断を受け、労災請求を行う運びとなった。
アスベスト疾患でも労災認定を受ける
木内さんの場合は事業所もアスベストばく露を認めているので、請求から4ヶ月後に問題なく労災認定を受けた。従って現在、木内さんは腰痛とアスベスト疾患の両方で労災補償を受けている状態である。
かつて港湾荷役作業に従事した方々は、木内さんの様に多かれ少なかれアスベスト運搬に伴うアスベストばく露が生じている。一定のアスベスト所見やアスベスト作業歴があれば石綿健康管理手帳を取得し、定期的な健康診断を受けることができる。また、アスベスト疾患を発症すれば労災補償に繋がっていくので、ぜひともこれらの制度を知って頂きたい。
