カウザルギー労災被災者の職場復帰を勝ち取ろう!

労災被災者の職場復帰を勝ち取ろう!

カウザルギー労災の清水さんの解雇撤回・損害賠償裁判の証人尋問

労災で長期療養を経て、職場復帰を求めてきたが解雇された清水さんは、別の職場でアルバイトとして働きながら、解雇撤回と民事損害賠償裁判を闘ってきた(不誠実団交の不当労働行為については中労委で労働組合が係争中)。先日、本人及び証人尋問が開かれたので、簡単に報告する【川本】。

2つの裁判を闘う経過

川崎にある鋼材興業でクレーンのオペレーターとして働いていた清水さんは、06年に左小指切断・腱断裂の事故に遭った。それによる疼痛障害の一種であるカウザルギーを発症し、長期にわたって休業を余儀なくされた。会社は、清水さんに謝罪を強要したり、事業主証明を拒んだり、健康保険証を渡さないなどの嫌がらせをしてきたが、弁護士さんに相談しながら、自分で問題解決を図ってきた。
その後、弁護士さんの紹介で、職場に戻るために、13年5月に、よこはまシティユニオンに加入し、団体交渉が始まった。治療を続けながらのリハビリ就労を求めたところ、会社は、退職を前提にした低額の解決金による解決に固執。会社の経営を縮小してきている、戻ってもらっても仕事がないという理由だった。不誠実団交だということで、ユニオンは13年10月に神奈川県労働委員会に不当労働行為救済申し立てを行った。県労委は17年4月に不当労働行為救済命令を出したが、会社が中央労働委員会に再審査を申し立てたため、中労委で係争が続いている。
一方で会社は13年10月、清水さんを相手に債務不存在確認裁判を横浜地裁に提訴。つまり、会社は労災補償すべき債務はゼロだということを確認する裁判を起こしてきたのだ。やむなく清水さんも、会社を相手取る損害賠償裁判を反訴した。
このころになって会社は団交で、清水さんを職場に戻さない理由として、本人の勤務態度や周囲との人間関係を持ち出し始めた。それらは全く事実に反していた。清水さんとユニオンは逐一具体的に反論した。ちなみに清水さんの賃金は、02年の入社以来被災するまでの4年間、一貫して上昇している。会社の評価は高かったのだ。
清水さんは15年1月には症状固定を迎え、団体交渉で改めて全面的な職場復帰を求めた。ところが会社は、15年3月に清水さんを解雇。清水さんの勤務態度と後遺障害を理由としている。後遺障害は、労働基準監督署の認定で一二級。原職復帰は十分可能だ。清水さんは長期戦を覚悟し、クレーンのオペレーターとして、アルバイト先を確保した。

いまだカウザルギーを理解しない会社証人

労災と解雇の裁判は並行して進行することになり、原告と証人の尋問も、17年9月21日に同時に行われることになった。
団体交渉にも労働委員会にもずっと出席してきた会社側の北井証人は、元々営業担当者で、基本的に清水さんが働いていた現場のことはよくわかっていない。それはともかく、清水さんの障害についても全く理解していないことが明らかになった。
疼痛障害があることを会社は解雇の大きな理由の一つとしてあげているが、清水さんは別の職場でしっかり働いている。いったい何が問題なのかと尋ねられた北井証人は、実際に働いている時に、症状が出たらクレーンをどうするのか、簡単に止められるというのはど素人の考え方だ、現場で倒れていたらどうするのかなどと興奮してまくしたてた。清水さんの疼痛障害は団交でも何度も説明したのだが、時々痛みが激しくなるだけである。もちろんそれが続いて苦痛であるのは事実だが、万一仕事中に痛みが出れば、クレーンを冷静に止めればいいだけであるし、ましてや「現場で倒れる」はずがない。清水さんは尋問で、「意識を失うはずがありませんよ」と冷静に説明した。

和解期日などを経て結審へ

証人尋問で、解雇に何ら根拠のないことがいっそう明らかになった。労災事故についても、詳細は略すが、会社の安全配慮義務違反は明白となった。労災民事損害賠償裁判の場合、本人過失ゼロで請求満額となることは簡単ではないが、清水さんやユニオンの目標は、まずは職場復帰である。損害賠償をめぐって、話し合いではなく、いきなり債務不存在確認訴訟裁判を起こしてきたのは会社の方である。尋問でも、清水さんは、職場に戻りたいと明言している。
裁判所から和解が勧告されたが、それに応じるか否かはむしろ会社側の姿勢にかかっている。10月5日の中労委の調査、10月17日の和解期日を経て、11月21日に両方の裁判が結審となる予定である。長かった闘いは大きな山場を迎えている。