パワーハラスメント防止は職場の大きな課題
パワーハラスメント防止は職場の大きな課題
10月7~8日、福岡県でコミュニティ・ユニオン全国交流集会が開かれた。10年ほど前から、メンタルヘルスやパワーハラスメントをテーマにした分科会を開催している。当初は1分科会だったが、補償と予防対策を同時に議論することが難しいことから、ここ数年は、補償と予防対策の二つに分けて開催してきた。今年は、「パワーハラスメントをなくすために」を企画、参加したので簡単に報告する。【川本】
分科会「パワハラをなくすために」
分科会には40名を超える人たちが参加した。全体で11分科会がある中、2番目に多い参加者数で、正直言って驚いた。職場のパワハラ問題が大きな課題となり関心も高くなっていることが伺われる。いまだに忘れることができないが、初めて、職場の安全衛生に関する分科会を開こうと考えた10数年前のこと。集会を企画する当時の運営委員に承諾を得ようと電話したところ、「そのような課題に取り組むユニオンはあまりないので難しいのではないか」と言われたので、「だからこそやる意味があります」と言って、開催にこぎつけた。実際、参加者は10人に満たなかったと記憶する。
分科会は前半と後半に分け、1時間ずつ行った。
前半は、独立行政法人労働政策研究・研修機構がまとめた「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態 個別労働紛争解決制度における11年度あっせん事案を対象に」(JIL調査)と、厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(委託事業)を私が解説した。実際に職場でどのようなパワーハラスメントが起きていて、労働者や使用者がどのように対処してきたのかを共有した。
JIL調査では、判例では見えてこない具体的事案の検討が可能となり、メンタル不調者が3分の1に上ることなどが明らかになった。謝罪を求める被害者は多いが、合意は容易ではない。金銭解決の水準は賃金2、3ヶ月分であり、必然的に非正規労働者は低額になる。 委託事業では、パワハラ対策を取る企業は増えており、取り組めば成果も上がるが、小規模の会社では取り組みが困難である。相変わらず諦める被害者も多いということが明らかになった。
実は、5月の企画段階では、国が現在進めているパワーハラスメント対策法制化などの動きが具体的になっているかもと考えていた。残念ながら、分科会開催時点では、検討会で労使などの意見が議論されている段階で、方向性も定まっていない。
後半は、よこはまシティユニオン、名古屋ふれあいユニオン、札幌地域労組から発言があった。
・よこはまシティユニオン
昨年の分科会でも、労災認定と解雇撤回を求めて闘っている三菱電機の組合員の報告をしたが、今年は彼が労災認定され、解雇も撤回されたことを報告した。しかし会社は、長時間労働やパワハラの事実を率直認めようとしていない。一方で、職場の労働時間管理が一定の改善がなされたこともあり、これからも治療をしながらであるが、交渉などで闘い続けると決意表明した。
・名古屋ふれあいユニオン
一心商事をはじめとするパワハラ経営者や上司の実例報告があった。ペットボトルを投げつける、朝礼でその人だけ名指しで批判する、有給休暇の翌日に嫌味を言うなど。そうしたこともあり、ユニオン全体で学習会を企画している。8月には「労働の過酷化による精神疾患拡大について」というテーマで、愛知医科大学の柴田英治教授を講師とする学習会を開催し、その時に配布された資料が提供された。
・札幌地域労組
パワハラ退職強要を受けて退職してしまってからの相談が多いとの報告があった。しかし、辞める前の相談もあり、数回にわたる面談を乗り越え、体調を崩しながらも本人が持ちこたえて、御用組合を脱退、札幌地域労組に加入を決意し、先日団体交渉要求を行った。
・下町ユニオン
現場を知らない管理者からの言葉の嫌がらせを何とかしたいが、有期雇用契約ということもある。どうすればよいだろうかという問題提起があった。
・北大阪合同労組など
パワハラ発言について団体交渉で指摘しても、「指導の一環」と逃げられることがあり、基準が必要ではないかという問題提起がされた。
兵庫から、パワハラ雇い止め訴訟を行ったが、敗訴したという厳しい実態報告もあった。全国一般北九州支部は相談の半数がパワハラ関連ということだった。その他、岡山、奈良、神戸の仲間からも報告があった。
冒頭で述べた通り、40名を超える参加があるとは予想していなかった。せっかくの報告も、後半の終盤で時間も不足気味。来年は、細切れでもよいのでたくさんの人に報告してもらいつつ、さらに突っ込んだ議論が可能となるようテーマを設定したり、グループに分かれるなどして、多くの人が議論できるよう工夫して、分科会を継続、発展していきたいと考えている。