熱中症の予防について

■熱中症の予防について
熱中症の季節です。今年は例年より熱中症で救急搬送される人が多いようです。熱中症については当然ながら沢山の資料がでています。ここではそれらの中から不可欠な情報を選び出して、皆さんの参考にしていただこうと考えています。【神奈川労災職業病センター所長 天明佳臣】
■1.熱中症とはなにか

「熱中症」とはどんな病気かを知らなければ、予防対策も出てきません。
熱中症は、高温多湿な環境下で、体温維持するために多量の汗をかくなどして体内の水分および塩分のバランスが崩れたり、体内の調節機能が働かなくなることによって発症する障害の総称です。
症状は程度によって、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快、吐き気・嘔吐、倦怠感・虚脱感、意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温などです。死に至る可能性もあります。しかし、予防法を知り、それを実行していれば完全に防ぐことができます。
これまでの統計資料から、重要と考えられる3点を挙げます。(注/発症後4日以上休業した人のデータです。4日未満で回復した人たちの統計データはありません)
(1)発症年代を見ますと、50代にピークがあります。その中には職場で発症したケースが多くあります。
(2)死亡者のほとんどは男性です。厚労省データ(1997年~2002年)によると、建設業61・9%、製造業13・1%。屋外作業の労働者が4分の3を占めています。
(3)死亡者の過半は最も気温の高い14~16時に発症しています。

■2.熱中症はどのようにして起こるのか?

暑さや運動・仕事で体温が上昇すると、汗が蒸発し、身体の熱は外気へ追い出されます。また、皮膚体温が上昇し、身体の熱は外気へ追い出されてゆきます。要するに、汗や皮膚温度で体温は調整されるのです。

■熱中症を引き起こす要因

(1)気温・湿度が高い、日差しが強い。特に、熱風襲来で急に温度が上昇した時。屋内では、そうした屋外条件にもかかわらず冷房がないこと。
(2)一般的に注意する必要のある人は高齢者、乳幼児、肥満の方。糖尿病の持病を持つ人や低栄養状態の人、二日酔いや寝不足で体調不良の人。
(3)激しい運動、夏の長時間の屋外作業、しかも水分補給できない状況。
熱中症に間連して、「ヒートアイランド現象」があります。道路のほとんどは舗装されていて、地面から熱の反射があります。ビルや一般家庭の冷房からは熱気が空気中に放散しています。高層ビルによる海風の遮断などよる気温の上昇のことをヒートアイランド現象といいます。

■作業環境の測定

日本気象協会は、暑さ指数(WBGT=Wet-Bulb Globe Temperature湿球黒球温度―京都電子工業KK製の簡易測定器)による熱中症予防指針を出しています。WBGTによる温度と湿度の測定結果が危険基準値を超えた場合に熱中症の発症リスクが高いことが分かっています。詳細は、産業医か労働局の「健康課」に問い合わせてください。

■水分補給について

先日、私がいつも歩く道の途中で小さな住宅の解体作業をしていました。私は帽子の中に保冷剤を入れて歩いていたほど暑い日でした。作業員が3人いて、うち1人が隣家の塀の隅で、小さなコップで水を2杯飲んでいました。麦茶のようでした。その温度については聞きそびれてしまいました。
これも最近の話ですが、老人介護施設のケアマネージャーが家に話に来て、熱中症の予防にと「経口補水液OS1」のペットボトルを置いてゆきました。5~10度に冷やして飲むと良いとのこと。確かに、冷えていないと一気には飲みにくかった。市販では500mlは205円、量販店では6本で1010円でした。屋外作業の場合、クーラーボックスにいれて作業員がいつでも飲めるようにしておくとよいでしょう。

■3.熱中症の予防

涼しい服装、日陰の利用、日傘・帽子、水分・塩分の補給と同時に、無理をせず徐々に暑さに身体を慣らす。室内でも温度を測る。体調の悪いときの無理は禁物です。
熱中症の予防のため、運動や仕事前には次の項目をチェックしましょう。
■作業や運動の強度
■風邪や体調不良者はいないか
■暑熱順化の程度(作業、合宿の場合は何日目か)
■熱中症の既往歴はないか
■肥満者には特に注意を
■寝不足、過度のアルコール摂取は無かったか
■朝食は食べたか

最後に、熱中症の重症度分類(厚労省)の表を紹介しておきます。