審査請求の手続きが大きく変わりました

安全センター情報2016年10月号より

2014年に成立した「行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が2016年4月1日から施行された。それによって、労働基準行政関係の法令も改正された。実務的に大きく変わったのは、「労働保険審査官及び労働保険審査会法」である。

大きな変更は3点。
(1)審査請求の期間が処分のあったことを知った日の翌日から60日以内だったのが、3ヶ月になったこと。
(2)審査請求人などが口頭で意見を述べることができる(口頭意見陳述という)が、その際、原処分した行政庁に対して質問を発することができるようになったこと。
(3)審査請求人などが原処分した行政庁の文書を、閲覧したり交付を受けることができるようになったこと。

(1)はともかく、(2)と(3)について具体的手続きがどのように変わるのかさっぱりわからないでいたところ、10月号で、細かい字で40ページにわたって労災保険審査請求事務取扱手引(以下、手引という)が一挙掲載された。被災者や遺族が労災請求して業務外になったり、障害等級に納得できず審査請求する人は、絶対数としては多くないのかもしれないが、こういう重要かつ多岐にわたる変更について、わかりやすいパンフレットも作らないのは行政の怠慢ではないか。2年前から前からわかっていた話なのだ。

しかし、手引を読んでもわからない点も多い。労働局の審査官に尋ねても、初めてなので・・・と困っている様子。
例えば、(2)について手引では、申立人(審査請求人)は口頭意見陳述に際し、審査官の許可を得て原処分庁に質問を発することができる。審査官が申立人に、強制ではないが、質問事項を事前に書面で提出するよう求めることとなっている。審査官はそれを原処分庁に送付する。その一方で、口頭意見陳述で原処分庁が質問にどのように答えるのか、文書なのか、口頭なのかなどについては何ら記載がない。それは原処分庁が決めることだからなのかもしれない。いずれによせ、口頭意見陳述の内容を審理調書にとりまとめることになっているが、要旨をまとめて記録すれば足りるという。

(3)についてもわからない点が多い。原処分庁から審査官に提出された文書や審査官が収集した文書などを閲覧又は写しの交付を求めることができるとあるが、従来から、個人情報保護法に基づき、審査請求人は、原処分庁の書類を開示請求できた。手引では、両者には違いがあるとし、審査官は閲覧等の求めに対して、「第三者の利益を害するおそれがあるとき」、「その他正当な理由があるとき」以外は拒めないとされている。個人情報保護法がある以上、個人情報保護は正当な理由になるだろう。そのうえで個人情報保護法では不服申し立てできるが、審査官の判断は手続きの一部だから不服申し立てはできないと丁寧に説明されている。そうであれば、初めから個人情報開示請求をした方がよいに決まっている。実際、神奈川労働局ではそのように説明された。

現在、東京の労働基準監督署の不支給処分事例について審査請求している。今後、その進行状況を具体的に紹介しながら制度の有効活用のためにできることを報告してゆきたい。現在、開示請求した復命書を入手し、質問事項を審査官に送った段階である。【川本】