通勤災害の労災認定について|労災職業病相談マニュアル
通勤災害で相談に来るパターンは限られている。会社が許可していない経路や方法の事故、通勤途中で別の用事を済ませた後の事故、仕事以外の用事で事業所に残ってから帰宅した場合、交通災害など一般の労災との混同などであろう。
A.会社の許可や届けは関係ない
一番多い相談は、会社に届けているものと異なる経路や方法で通勤した場合に通勤災害になるか否かというもの。基本的には、「合理的な経路及び方法」であるかどうかに尽きる。会社に届けているかどうかは全く問題にならない。いつもは電車通勤だが、遅れそうなので車で送ってもらったところ、不幸にして事故に遭ってしまった。こうした例は認められる。あるいは、会社で禁止されている自動車通勤して事故に遭ったとしても、それは「合理性がない」とまでは言えないから、通勤災害になる。もちろん無免許飲酒運転のような場合は合理的とは言えないので、ダメ。
B.立ち寄りや会社に残った場合
通勤途中で、のどが乾いたから喫茶店に寄ったとか、病院に行って薬をもらってきたとか、散髪に行ったとか、ちょとした用事を済ませた後に事故に遭うことがある。これが通勤災害になるかどうかは、長年の「おたく」的テーマであるが、そうした実例も含めて通達や解説書の類に説明がある。
基本的な考え方は、「ちょっとした用事」や「短時間のやむを得ない用事」は構わないが、本格的に「お店に長時間入ったり」、「お酒を飲みに行ったり」するとダメだ。一方で、どうしても行かねばならないであろう「医療機関への受診」などは、元の通勤経路に戻ってからの事故ならばOK。しかし、事例を比べてみると、なぜこれがダメでこれが認められるのかと首をかしげたくなる事例も少なくない。一つ一つ自分で確かめることをお勧めしたい。
会社の構内で行事があり、帰宅途中に事故に遭うケースもよく相談にある。これも、時間とその内容に応じて判断が分かれる。事実上の強制参加で仕事との関連が強いと、通勤災害になる可能性が高いが、完全にレクリエーションで、参加率も低いと難しいだろう。これは、その行事中の事故が労災になるかどうかと同じ問題である。ちなみに、約2時間以内ならば労働組合の旗開きや、定期大会準備作業の後の事故が通勤災害と認められた。一方で職場のサークル活動だとダメだという事例もある。詳しく調べれば調べるほど一貫性のない判断基準なので、あきらめずに請求すべきだというアドバイスが正しいと思う。なお、行事関連については、労災適用がダメでも、企業内補償を求めるのも一つの方法だ。
C.労働災害との違い
一番大きな違いは、労災なら解雇制限があるが、通勤災害には解雇制限がない。会社の責任の有無から言えば、仕方がないのかもしれないが、基本的に労災保険適用が無過失責任であることから、通勤災害にも解雇制限をつけるべきだと私は思う。逆に会社の方が、労災と通勤災害を混同して、通勤災害すら手続きをしたがらない場合もある。
自分の事業場に出勤する前に仕事の必要上取引先に立ち寄ったり、事業場などから出張先の現場に向かう途中の事故などは、通勤災害ではなくて、労働災害になることがある。解雇制限以外にも、会社によっては、労災かどうかで、上積み補償規定などが大きく異なることもあるので、注意したい。