地方公務員災害補償基金交渉と今後の課題

2月5日、地方公務員災害補償基金本部に対し、別紙の通り要請し、回答をふまえて意見交換を行った。今後の課題は以下の通りである。

基金支部や本部の専門医の氏名等を明らかにさせること

「かながわ労災職業病」新年号でも紹介した通り、基金支部の専門医の意見に基づいて、公務外決定となることが多い。もちろん主治医の意見と支部専門医の意見が異なることはあり得る。しかしながら、一体どのような経験や根拠に基づいて、そのような意見を述べているのかが全くわからないことが多い。

そして最も不当なのは、氏名や所属も全く明らかにされていないこと。ちなみに労災保険の場合は、情報公開請求をすれば地方労災医員はもとより協力医まで明らかになる。当初は厚労省も非開示の姿勢であったが、国の情報公開審査会の答申によって改善された経緯がある。基金支部では個人情報なので、本人の了解が得られない以上、あくまでも非開示の姿勢であり、それ以上法的に争われたこともないようだ。専門性を披歴する医師や医療機関が多い中で、それをわざわざ隠す理由はないはずだ。本部には厚生労働省と異なり、医療専門家はおらず、いったい専門性の担保はどのように行っているのかという質問に、本部は「それなりに紹介とか・・・」といったあいまいな回答しかできなかった。

調査手法を改善すること

基金支部の公務上外をめぐる調査は、要請書にもある通り、自治体の職員厚生課の職員が担っていることが多い。労働基準監督署の労災補償業務に携わる職員とは異なり、たまたま公務災害の補償業務の担当となったに過ぎず、当然経験は浅い。アスベスト労災や過労死等のような複雑な業務上疾病について実務的に適切な調査ができるとは思えない。基金本部は、研修をしている、上司にも相談しながら進めている、職員のことを一番わかっているなどと回答。しかしながら、職員厚生課の人間が、事故が多いとされる清掃や給食、あるいは学校現場のことをどれほど理解しているだろうか。民間と異なり、ずっと総務人事担当ということは少なく、たまたま職員厚生課に配属された職員も多いのではないか。

労働基準監督署と比較して不適切な点はいくつもある。まず本人聴取はめったに行われない。管理者に文書で質問することが多い。そして医学的なことも、主治医に文書で一度尋ねるだけで、専門医と意見が異なる場合にも、再度質問したり、確認することはない。

基礎疾病があれば全て公務外という傾向を正そう

なんらかの基礎疾病があると、何ら症状がなかったにもかかわらず、それを理由に公務外となる事例が続いている。腰痛などの筋骨格系疾患は全てそうだ。したがって、どうせ公務災害にならないからと、申請を諦めている例も多い。労災隠しにもつながり、予防対策にもつながらないので、ぜひとも改善が必要だ。

所属長を通じた申請でなくてもよい不十分な調査は本部に指導してもらおう

労災請求と異なり、公務災害申請は所属長を通じた手続きとなる。それが申請の妨げになることが少なくないため、数年前に公務災害認定請求書の欄外の注意事項に「『所属部局の長の証明』の欄の証明が困難である場合の取扱いは、地方公務員災害補償基金に相談すること」という文章が入った。例えばパワーハラスメントの加害者が所属長であることもあるからと説明している。しかしこのことはあまり現場レベルでは知られていない。

上記2でも述べた通り、調査についても、直接請求人本人と基金支部がやりとりをすることも、「必要に応じて」あり得ると、本部は言うのであるが、実際にそういうことはほとんどない。必要だと主張して、本部から指導してもらうしかないだろう。