全国労働安全衛生センター総会報告
全国労働安全衛生センター連絡会議(全国安全センター)の第30回総会が2019年9月28~29日に大阪で開催された。初日は、「職場のハラスメントにどう立ち向かうか?」の講演や報告など、2日目はその他の課題についての議論や予算決算等の議事が確認された。【川本】
職場のハラスメントにどう立ち向かうか?
はじめに、大和田敢太さん(滋賀大学名誉教授)が国内外のハラスメントの実態や規制について解説した。大和田さんは、2017年~19年をハラスメント規制元年と位置づける。国際的にはハリウッドから性差別告発のMeToo運動が世界に広がり、2019年にはILOで「労働の世界における暴力とハラスメント」条約が採択された。日本でも2017年に電通過労自殺事件で罰金刑が科せられ、最高裁で強制わいせつ罪に意図は不要とする判決が出された。2019年にはパワーハラスメントを防止することが企業に義務づける法律が成立。
つづいて、韓国の緑色病院院長のイム・サンヒョクさんが、韓国における感情労働者保護法などについて解説。韓国労働部は感情労働を「職業上顧客に応対するとき、自身の感情が良かったり悲しかったり腹が立つ状況があっても、会社が要求する感情と表現を顧客に見せるなどの顧客応対業務」と位置づける。2018年に施行された産業安全保健法では、顧客の暴言などによる勤労者健康障害の予防措置や健康障害が発生したときの保護措置が定められている。違反した場合は1000万ウォン以下の過怠料が付加されるという。顧客の暴言などに対する措置を要求した労働者の解雇その他の不利な待遇も禁じられており、違反した場合は1年以下の懲役または1000万ウォン以下の罰金を付加される。
神奈川センターの川本が、労働団体の役割と課題として、事例を紹介しながら被害者の職場復帰や改善、労災認定、仲間作りといった視点で課題を整理した。法律が必要であることは言うまでもないが、それを活用しないことには何も始まらないことを訴えた。パワハラ防止法の改正に向けた取り組みも必要であることは言うまでもないが、当面はパワーハラスメント防止ガイドラインをより良いものにしてゆく取り組みが重要である。
その後、関西労働者安全センターの田島事務局長の進行で、いくつかの論点について3人が意見を述べて議論を深めた。
総会の報告や議論
2日目は東京労働安全衛生センターの飯田事務局長が原発被ばく労働関係の報告をした。2011年の福島第1原発事故以来、被ばく労働問題を中心に、厚生労働省や経済産業省などと19回の交渉を行ってきた。課題は山積みだが、昨年の18回交渉からは東京電力も参加するようになり、よりいっそう具体的な要求と回答を実現している。あらかぶさんの被ばくによる白血病損害賠償裁判、猪狩さんの過労死認定と損害賠償裁判の紹介もされた。
つづいて、神奈川センターの川本が公務災害認定の現状と課題をアピール。高等学校の教職員が「けがと弁当は自分持ち」である実態を報告。神奈川では自治体の労働組合と共に闘う環境にあるが、必ずしもそうではない。センターが積極的に被災者と共に取り組みを進めないと、「労組待ち」では何も進まないのが現状である。
アスベストに関して、大気汚染防止法と石綿則の改正のあらましについて、東京労働安全衛生センターの外山さんが報告。専門検討会の議論も含めて解説された。
その後、参加した各地域センターなどから活動報告があった。いつものことであるが、もう少し各地域の実情などについて情報共有する必要がある。決算と予算についても承認されて閉会した。