大井工場アスベスト裁判提訴 旧国鉄・JRは、公正な補償を!
小池 敏哉/国労大井工場支部OB親睦会幹事
東京地裁に提訴
大井工場アスベスト裁判とは、原告のKさん(80歳)が旧国鉄・JR大井工場で、電気・ガス溶接の仕事で43年働き、その際、車両や材料で使用してきた石綿粉じんに曝露し、定年後の2017年12月に肺がんを発症したため、国鉄の権利義務を承継する鉄道運輸機構とJR東日本を相手取り、損害賠償を請求するものです。
7月6日午後、Kさんとご家族、神奈川総合法律事務所より福田・山岡弁護士、国労東日本本部、国労大井工場支部役員、支援者ら13名が東京地裁に集まり、訴状を提出しました。審理を担当するのは民事28部と決定しました。
Kさんの業務内容
Kさんは鉄道車両の修繕に溶接工として携わってきました。主な業務は、製缶工、電気溶接工、ガス溶接工がチームとなり車両の外板腐食部分を剥がし、新しい鋼板に取り換えるというものです。また、一般修繕に加え、車両の大規模な改造工事なども担っていました。さらに、1996年に金属加工場に異動後は、石綿材料の取り扱いを含む各種機器箱の修理などを行っていました。
アスベストへの曝露
国鉄及びJR東日本の鉄道車両には外板内側や床下等にアスベストを含有するアンダーシールという塗料が塗られていた他、アスベストが断熱材として詰められており、これらをはがすとアスベスト粉じんが発生しました。その上、溶接工だったKさんは発生する火花から車両の配線などを保護するために、アスベストの板を折って養生したり、湿らせて粘土状にしたアスベストを張り付けて配線を保護、作業後は、これらのアスベストを除去したりしていました。
これらにより、Kさんはアスベスト粉じんに曝露し、2017年12月21日、肺がんを発症。2019年4月1日、品川労働基準監督署より労災認定を受けました。
国鉄・JR東日本は、原告らにアスベストに曝露しないよう、①粉じん測定や環境改善、②石綿粉じん発生及び飛散防止措置、③粉じんマスクを使用させる措置、④石綿の安全性に関する教育・指導、⑤石綿の代替品を用いる措置が取られるべきでしたが、国鉄・JRはこれらをいずれも怠っていました。
裁判の意義
この裁判は国鉄・JR東日本に勤務していた存命のOBがアスベストによる損害発生を主張して、旧国鉄及びJR東日本を提訴するもので、とりわけJR東日本に対して責任追及訴訟としては初めての訴訟となるものです。
これまでJR東日本は、アスベスト労災について、国鉄・JR双方に勤務歴がある場合、国鉄の在籍期間が長いことをもって全て鉄道運輸機構(旧国鉄)に対応を丸投げしてきました。これまで鉄道における石綿災害が生じており、現在も一部職場でアスベストが残存し、また、今後もかつて国鉄・JRで勤務していた労働者の石綿関連疾患の発症が見込まれます。そのため、本件において、JR東日本への責任追及により、同社に石綿被害の深刻さを再認識させ、JRによる広範な救済制度の創設をめざす一助としたいと考えています。