全国安全センター第31回総会
10月18日、全国安全センター第31回総会がオンラインで開催された。
総評解散に伴う全国安全センターの解散を見越して、各地で労働組合等との連携を図りつつ財政的にも運動的にも「自立」していた地域センターが連絡会議を結成してから早いもので30年。その間の労働安全衛生の「三大事件」が、ダイオキシン、アスベスト、胆管がん。事件と言われるのは、専門家と言われる人たちが予想していなかったリスクや被害が明るみになり、突然、問題化したからである。
熊谷信二さんのお話
これら全ての事件に関わった専門家は極めて限られる。総会記念講演として、その一人(唯一?)である熊谷信二さんの講演を聞いた。当センターは大なり小なり全ての問題に関わっており、私自身もそれぞれのタイミングで熊谷さんや関係者の方々のお話を聞いている。むしろ、なぜ熊谷さんが全ての問題に関わったのかが大切である。熊谷さんは非常に謙虚な方で、自分に先見の明があったとか賢かったなどとは絶対言わない。学生時代はもちろん、研究者になってからもずっと運動関係者と付き合いながら専門家としての役割を地道に果たしてこられた。この当たり前のことができる人が極めて限られているというのが、残念ながら日本の安全衛生を巡る状況である事は改めて認識しなければなるまい。
例えば、焼却施設の労働者のダイオキシンばく露問題について調査された時は大阪府の研究機関に勤めておられた。にもかかわらず、他地域の労働組合の依頼を受けて調査できたのはなぜかと質問してみた。実は府からの労働衛生に関する研究費はわずか年間20万円で、その役割自体をなくそうとしていたとのこと。非常に手間とお金のかかる調査だったが、自分で国に研究費を申請して、それが通ったので可能になったのだという。
ウェブサイト・SNSの可能性
続いて、当センターの鈴木が、全国安全センターのウェブサイトやSNSの可能性について情報提供をした。実は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い全国安全センターもテレワークを余儀なくされた。今まで必ずしも十分ではなかったウェブサイトによる情報提供の大改善を行ない、それによってアクセスが増加しつつあることが報告された。
やはり、職場の安全衛生活動も補償問題への取り組みも、個別の労働者とつながることによってしか取り組むことはできない。当センターへの連絡もほとんどが口コミかホームページを見てというものである。
オンライン総会の限界と展望
オンライン総会は交通費もかからず、遠くの人とも話ができるという意味では、非常に良い面もある。新型コロナウイルスの労災問題、テレワークのことなども問題提起が行われた。しかしながら、実際の集まりもそうであるが、発言を控える人もいること、なかなか活発な議論にならないこと、画面を見ながら長時間にわたる議論は疲労感があることは否めない。やはり来年は集まれることを祈念したい。【川本】