非災害性腰痛 :トラック運転手Kさんの労災認定事例

全日建運輸連帯労組関東支部 金栄熙

一日平均300㎞走行

 20年2月に組合加入したKさん(53歳)は埼玉県富士見市で宇部三菱のフレコンを関東一円に配送する青葉運輸という会社で8トントラックに乗務し10年近く働いてきました。深夜2時から夕方3~4時まで13時間以上の長時間労働を連日休憩もなく続けてきました。18年10月~20年1月の時間外労働は月平均100時間を超え、組合が算出したひと月の不払い残業代は月平均15万円。しかし会社側は固定残業代と称して約25時間分程度の5万円しか払っていません。この期間の未払い残業代は200万円を超えます。

 また走行距離の平均は1日平均300㎞にもなり、長時間にわたり腰部の伸展を行うことができずに同一姿勢でハンドルを握り、かつ粗大な振動を受ける運転業務を続けて来ました。

 こうした劣悪な労働環境の結果、昨年11月に腰痛を発症して前かがみでしか歩けなくなり、12月には激痛に襲われ、作業中のトラックの荷台から降りることも歩くこともできなくなりました。病院に運ばれ、「腰部椎間板ヘルニアと坐骨神経痛」と診断を受け、休みたいと会社に申し入れましたが、数日の休みだけで会社は就労を強要。このままでは半身不随になると不安になり、組合の扉をたたきました。

長時間のトラック運転業務による労災認定

 さっそく行われた団交で、会社は労災認定を頑なに拒否。やむを得ず神奈川労災職業病センターの支援を受け、直接労基署に申請。上記のような労働実態と作業内容から見て業務上災害という港町診療所での診断を労基署でも認め、6月に労災認定されました。ですがそれでも会社は受け入れようとはしません。労基署が認定すれば従うと言明していたのに、です。

 組合は、労災認定とともに残業代未払い、長時間労働の是正を求めましたが、会社は誠実に対応しません。労災の原因である残業、長時間労働は、会社いわく「車両を特別に貸与しているため、早朝や深夜の運行時間は通勤であり、その時間に運行するのは本人が勝手に判断したものだ、勤務時間とは認めない」というもので、日報による会社側のサンプリング資料によれば、通勤3~4時間、休憩2~3時間とし、労働時間は定時範囲で収まるように操作されており、前述の固定残業代を支払っているのでそれ以上の残業は一切発生しないとしています。

 確かにトラックは自宅の近くにあり、そこから出庫する就労スタイルです。しかしセメントを積んだトラックで車庫に帰り、毎日ファックスで送られてくる配車指示書に従って指定時間に遅れないよう深夜に倉庫に行き、積み替え、朝一番から現場数ヶ所を回り、また倉庫に戻りセメントを積んで自宅近くの車庫に帰るという繰り返しのため、車庫から倉庫の往復は通勤時間という会社主張は到底認めらません。団交で誠実に対応しない以上、組合は直接行動でこれを認めさせる取り組みへ、次の段階へと進んでいきます。これまで労災認定にあたってのセンターのご支援にあらためて感謝いたします。

関西生コン事件について

 ところで労災を認めろ、残業代を支払え、長時間労働を是正しろというのは労働組合として当然の主張で、当たり前の姿、ルーティンとすら言えますが、これが強要、脅迫、威力業務妨害として罪に問われたら。警察の取り締まり対象となり、検察から起訴され裁判所で有罪となるとしたら。トラック労働者は朝3時、4時に出社するのは普通ですが、その時間に刑事が待ち伏せてそのまま逮捕連行されたら。刑事、検察官が家族に接近し組合脱退ほのめかし、脅かしてきたら。これは戦前の憲兵隊や特高の話でもなければ、70~80年代の軍事政権時代の韓国の話でもありません。今まさに現在進行形のいわゆる「関西生コン事件」です。

 17年12月、関西生コン支部は、大阪広域生コン協共組に対して「運賃引き上げの約束を守れ」と要求してストライキを決行しました。これに対し、大阪広域協組が「ストライキは威力業務妨害」「関生支部は組織犯罪集団」と非難し、全面対決姿勢をとったのが発端でした。以降、警察、検察によってストライキやビラまきなどの活動を理由として18年7月から1年あまりのうちに18件もの刑事事件が作り上げられ、のべ81人の組合員が逮捕され、現在4つの裁判所で8つの事件に分けて刑事裁判が続き、裁判所はほぼ求刑通りの判決を出し始めています。その異常さは一目瞭然です。

 「特に許しがたいのは、組合員に対する転向と脱退強制です。人間の内心に土足で踏み込む特高的体質の象徴ではないか(世界12月号・編集後記)」。 日本学術会議の任命拒否問題も同根で、労組つぶしであると同時に思想信条への介入、民主主義の根幹を揺るがす事件です。危険な時代が迫っていると思います。これまでのご支援に再度感謝しつつ、この弾圧事件への支援連帯をお願いします。