福島原発被ばく労災損害賠償裁判 口頭弁論ようやく再開、これからが勝負

 福島第1原発などでの被ばく労働が原因で白血病になったあらかぶさんが原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)に基づき、東京電力と九州電力に損害賠償を求めている裁判は、16年秋の提訴から4年余が経過。東電は、あらかぶさんが労災認定された時に「当社はコメントする立場にない」などと語り、裁判でも作業と白血病の因果関係を争うとしている。通常の労災民事損害賠償裁判では、因果関係に加えて、安全配慮義務違反の有無、すなわち会社の責任や本人の過失の程度が争われるが、原賠法では、因果関係さえ認められれば賠償義務が生じることになっている。それなのになぜ、これほど時間がかかっているのか。

 理由の一つは、低線量被ばくと白血病の因果関係について、さまざまな議論があること。東電や国は年間100㍉シーベルトを下回る被ばく線量であれば害が全くないとまでは言わないが、他の有害物質との因果関係との差がはっきりしないとしている。従って白血病の労災認定基準の年間5㍉シーベルトは科学的ではないとまで言うのだ。労災認定基準が科学的でないはずがないし、百歩譲ってそうだとしても、事故を起こした会社が労災が認められた被災者に賠償するのは当然だ。

 ところが裁判というのはそう簡単ではなく、被ばく線量と白血病の因果関係一般について双方が膨大な主張と医学論文などの証拠を提出、応酬が続いてきた。いわば総論的な内容になる。だいたいそれが整理できたのが昨年2月の口頭弁論だった。それらをふまえて、あらかぶさんの作業内容や被ばく線量など個別立証に向けた第16回口頭弁論が昨年5月13日に予定されていた。ところが、コロナ禍にともなう緊急事態宣言があり、期日が延期に延期を重ねた結果、今年1月6日に久しぶりに法廷が開かれた。次回以降の日程は上記のとおり。【川本】

第17回口頭弁論●4月7日(水)14:00~東京地裁103号法廷(予)
第18回口頭弁論●7月14日(水)14:00~東京地裁103号法廷(予)
*詳細は「あらかぶさんを支える会」
https://sites.google.com/site/arakabushien/