旧国鉄・JRアスベスト裁判:原告準備書面(2)を提出 「JRはKさんの肺がん発症の責任を負うべき」
旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判を支援する会
事務局長 小池敏哉
この裁判は、Kさんが、肺がん発症は石綿暴露によるとして労災認定されたことを踏まえ、昨年7月に旧国鉄とJR東日本を相手取り、「肺がんの原因は石綿暴露によるもの」「旧国鉄とJR東日本は安全配慮義務を怠った」として損害賠償を求めたものです。これまで3回の口頭弁論と1回の進行協議が行われました。Kさんは今年1月、新型コロナウイルスにより急逝されましたが、ご家族が裁判を引き継ぎました 6月8日、第4回口頭弁論が東京地裁で行われました。
当日は国労各機関役員、組合員、OBなど支援者17名が集まり、内16名が傍聴に臨みました。開廷後、裁判長が5月31日付原告準備書面⑵について双方に確認を求めた上で、被告旧国鉄・JRに対し、意見を求めました。
被告は、反論するとし、「原告主張の肺がんとの因果関係は良いが、安全配慮義務違反の主張はあたらないし反論する」、喫煙による肺がんリスク2倍について「喫煙、石綿どちらが原因かわからないのでカルテを見た上で判断しなければならないが、いまだ提出されていない」「喫煙による肺がん発症は病理疫学上、蓋然性がある」などと主張しました。 裁判長から原告側にカルテ提出の意向について質問があり、原告側は、「現在準備中、1ヶ月以内には提出できるであろう」としました。被告は、「カルテ提出後に検証・検討して反論する」とし、次回期日は9月14日(火)10時からとなりました。
また、裁判長から、今後の主張に関して「あと1~2回書面で行うつもりか」と意向確認があり、原告、被告とも「互いの主張にもよるがそうなると思われる」としました。
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今回提出した原告準備書面⑵は、JRの主張「肺がんは喫煙が原因」「粉じん対策や安全対策を実施しており責任はない」に対し、全面的に反論するものです。「肺がん発症は、喫煙か石綿曝露か特定できない」「喫煙と石綿が相乗して作用する」のだから、「そのリスクを踏まえた安全配慮義務をとるべきだった」とし、仮に喫煙が発症を2倍化させるとしても「相当の石綿曝露があったのだから喫煙していてもそれに応じた責任を負うべき」としています。また、医学的にも「職業的石綿曝露水準をはるかに超える石綿小体が検出されており、2型の石綿肺所見であることから肺がんが発症する現実的可能性を持つ十分な石綿曝露であった」としています。
さらに、「受持ち車両の減少によって作業自体が減った」とする主張に対して、当時のデータなども引用して反論。「吸塵機や排気装置を設置した」とする主張に対しては、「具体的証拠が示されていない」など、当時の作業実態からも対策実態は全く不明と断じています。
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裁判は提訴1年を経てようやく争点・論点が明確となってきました。あと数回の書面での主張、反論を経て、証人採用などの段階へ進むと思われます。傍聴体制の強化、支援する会の拡大、学習会等の企画も進行に応じて進めていきます。引き続き皆さんのご支援をお願いします。