旧国鉄・JRアスベスト裁判:鉄道運輸機構とJR東日本は相変わらず「肺がんの原因はタバコ」と主張

旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判を支援する会
事務局長 小池敏哉
 この裁判は、Kさん(今年1月逝去)が、石綿ばく露により肺がんを発症したとして、昨年7月に旧国鉄とJR東日本を相手に損害賠償を求めて提訴したものです。

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 9月14日に第5回口頭弁論が開かれ、国労機関役員や組合員、国労大井工場支部OB、国鉄・JR東京OB親睦会など14名が傍聴しました。
 まず、小田裁判長から、被告準備書面⑶と乙号証について確認があり、今後の進め方について双方に意見を求めました。
 被告側は、「欠落している」とし、改めてカルテの提出を求めてきました。 これに対し、原告側代理人福田弁護士は、「主治医から全診療記録を提出した。『疑わしい』とは大変心外だ」「必要なら裁判所を通じて病院へ提出を求めては如何か」と反論。裁判長も「全記録がなければ反論できないのか。必要ならば申立てしてほしい」と言うと、被告は、「その旨手続きを経て進める」「追加分が提出された時点で改めて検討し主張する」としました。福田弁護士は、「被告準備書面⑶に対し、事実や安全配慮義務について反論する」と述べました。
 裁判長は、「双方そろそろ主張をまとめる方向で」と考え方が示され、次回期日を11月9日(火)14時と指定し、わずか12分程で閉廷となりました。
 被告準備書面⑶の概要は、「原告の体内に残存した乾燥肺重量1g当りの石綿小体は2709本に過ぎず、肺がんが石綿に起因すると言えない」「原告は57年間一日20本という大量の喫煙をしており、肺がんは喫煙に起因することは明らか」「石綿と肺がんの因果関係に関する基本的理解に誤りがあり主張は法的に理解不能」「石綿による肺がん等の健康被害の可能性について認識したのは1988(昭63)年3月の各都道府県労働基準局長あて通知において鉄道事業の解体作業等に伴う石綿ばく露の危険性が指摘されて以降。それ以前に認識、予見したことはない」「肺がん手術前後の診療録の大部分が欠落しており、その資料の全部の提出があったのか極めて疑わしいので診療録すべてを提出せよ」「原告の主張は理由がなく速やかに請求は棄却すべき」というものです。

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 裁判報告会では、福田、山岡弁護士から、「被告準備書面⑶は法律論や診療記録でケチをつけているが、『車両数が減少し外板修繕が必要なくなっていた』という主張は、こちらが調べて提出した鋼製車両数の推移で当該作業が相当数行われていてその事実を認めざるを得なかった」「裁判はこれから本格的なとっくみ合いになる」「当時の実態について仲間の陳述書等で立証していく」「Kさんが亡くなっため損害賠償額の変更を求めていく」等の報告がありました。
 裁判を引き継いだご子息のK努さんから支援へのお礼が述べられた後、裁判を初傍聴した佐藤信二さん(JRエルダー社員で交通機械サービスに出向)が紹介され、「6月の特殊健康診断で肺に影が見つかり中皮腫と診断された」「9月7日に東労組から国労に復帰した。労災申請に取り組むので一緒に頑張りたい」と決意が語られました。
 最後に、支援者を代表して国労神奈川地区本部の粉川書記長が「アスベスト問題は重要課題として取り組んできた。この裁判も組合の課題としてしっかり支援したい」と挨拶しました。

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 裁判終了後、「裁判を支える会」、OB、支部、分会役員9名が国労本部と東日本本部を表敬訪問しました。3月と6月に続き3回目です。支援の会の藤野会長、小池事務局長、池田事務局次長(神奈川労災職業センター)の他、エルダー社員の佐藤信二さんも同行。
 国労本部では岩本書記長に対応して頂き、「労働講座等で石綿問題について学習した。九州の小倉工場OBの被害も報告されている。本部としてもできることは支援したい」と発言がありました。
 国労東日本本部では伊藤委員長に対応して頂きました。藤野会長や小池事務局長の裁判支援要請に続き、佐藤信二さんが挨拶と復帰の決意を述べ、労災申請の取組と入院治療に関する制度上の課題や補償制度でJRと出向会社との交渉促進を要請しました。伊藤委員長からは「引き続き支援していく。佐藤さんの件も東京地本と連携して対応する」と応えて頂きました。