石綿救済法10年目 環境省救済小委員会がアスベスト対策見直し作業を開始
【石綿救済法10年目】
環境省救済小委員会がアスベスト対策見直し作業を開始
石綿健康被害救済法は、16年3月27日で施行から10年を迎えた。環境再生保全機構は、「制度発足から10年目を迎え、今一度制度周知の徹底を図ることを目的に」テレビCMなどによる広報を集中的に実施したり、医療機関や自治体など2301箇所にポスターを配布した。「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」も、独自のチラシやポスターを作成し、医療機関に貼ってもらったり、街頭での宣伝活動を行った。
同会や「石綿対策全国連絡会議」は、アスベスト対策の全面的見直しを求めてきた。石綿健康被害救済法は11年8月の改正時に、施行後5年以内に必要な見直しを行うとされていたので、環境省も中央環境審議会環境保健部会で、「石綿健康被害救済要員会」の設置を諮り、了承された。私たちは、患者・家族を直接代表するものの参加を要請したところ、石綿対策全国連絡会議の運営委員でもあり、患者と家族の会の会長でもある古川和子氏が委員になった。日本の長い公害の歴史のなかで、患者や家族を直接代表する者が、環境省の審議会の委員になったのははじめてのことだという。
石綿対策全国連絡会議は、下記の通り10年目の見直しに当たっての要望を作成している。
1、アスベスト訴訟の早期解決を図ること
(1) 建設アスベスト訴訟の早期解決をはかり、建設アスベスト被害の補償基金制度を検討すること
(2) アスベスト工場元労働者・遺族に対する国の賠償金支払いを促進すること
(3) 石綿肺がん行政訴訟の相次ぐ敗訴は結を踏まえ、認定・判定基準の内容・運用を改善すること
2、補償・救済制度の改善・充実を図ること
(1) 環境省所管救済法の給付の内容・水準の改善を図ること
(2) 時効・請求期限問題の改善を図ること
(3) 一層の認定の迅速化に努めること
(4) 介護が必要な被害者のニーズに対応すること
(5) 中皮腫の診療のための通院費の支給を確保すること
(6) 労災補償給付が低額になる事案に対する改善策を講じること
(7) 死亡小票に基づく周知の定期実施を含め周知対策を強化すること
(8) 労災事案の環境省所管救済への「紛れ込み」防止対策を強化すること
(9) 「石綿ばく露歴把握のための手引き」改訂を含め情報提供対策等を強化すること
3、健康管理体制を整備・改善すること
(1) 住民の恒久的な健康管理制度を確立すること
(2) 労働者の健康管理体制の見直しを検討すること
(3) 既存の検診等の活用を検討すること
4、アスベストのない環境/社会を実現すること
(1) 既存アスベスト対策の原則を確立すること
(2) 信頼できるアスベスト調査を確保する対策を講じること
(3) 安全なアスベスト除去を確保する対策を講じること
(4) 防災基本計画での石綿対策専門家委員会の開催
(5) アスベストのない環境/社会を実現する目標時期を設定するとともに実行計画・体制を整備すること
5、その他
(1) 石綿健康被害救済法の定期的見直しの体制を整備すること
(2) アスベスト関連文書の長期保存と対策の定期的再検討の体制を整備すること
(3) 公的な中皮腫登録制度の確立等をはじめ、調査・研究を促進すること
(4) アスベスト関連疾患の世界的根絶を促進するために国際貢献のあり方を見直すこと
(5) 被害者代表等の参加を促進するとともに、「加害者」は排除すること