セクハラ労災で大樹生命に損害賠償を求めて提訴

よこはまシティユニオン 川本浩之

 17年8月、大樹生命保険株式会社に営業職員として採用されたTさんは、既婚の男性上司Eから、セクシュアルハラスメントないしパワーハラスメントを受けた。その内容は、足に触る、二人きりの営業車両内で髪に触れる、顧客先への訪問についてくる、ツーショット写真を撮影することを求めるなど、多岐にわたる。TさんはEに対し、その都度ハラスメントに当たる行為をやめるよう求めたものの、こうしたハラスメントは3年近く執拗に繰り返された。Eは、原告が明確に受け取りを拒んでいるにもかかわらず、高額なクリスマスプレゼントを無理に押し付けたり、クリスマスプレゼントを買う代わりに2人で出かけたいと執拗に誘うこともあった。

 それは、周囲の同僚らの目から見ても明らかなものだった。Tさんが会社に対して、ハラスメントを相談するきっかけとなったのは、20年6月、職場の営業部長から、Eと「恋愛的な意味でデキている」のかと尋ねられたことにある。Tさんは、その後も会社に対し、ハラスメントへの対応を求めて繰返し相談している。しかし、会社側は、TさんとEを直接対面させ話し合わせたりした。いよいよ体調を崩して休み始めたTさんに、事情の聞取りを繰り返すことはやめて欲しい旨を既に伝えていたにもかかわらず、支社長が突然架電して聞取りを行うなど、極めて不適切な対応に終始した。 

 適応障害と診断されたTさんは、21年12月によこはまシティユニオンに加入。ユニオンは、ハラスメントや会社の対応に関する事実関係の調査、適応障害を労災として認めること、職場復帰できる環境を整えることなどを求めた。

 団体交渉において、会社は、Eによる「3点の不適切な行為を確認しました」としながら、会社側の対応については非を認めなかった。労災、雇用なども含めた全面解決に向けた交渉も決裂。Tさんは、21年10月、労働基準監督署に労災申請を行うとともに、12月16日付で大樹生命保険株式会社及びEを被告とする損害賠償請求裁判を東京地方裁判所に提訴した。

 男女雇用機会均等法で、職場におけるセクシュアルハラスメント防止に関する規定が施行されてから20年以上、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置を事業主に義務付ける規定が施行されてから15年近くが経過している。にもかかわらず、多くの女性労働者を擁する生命保険会社において、女性職員の意に反していることが明確であるにもかかわらずセクシュアルハラスメントを繰り返した男性上司と、セクシュアルハラスメントへの対策を軽視する姿勢を改めない会社によって、Tさんは休職に追いやられたのである。

 会社は裁判所でも、「周囲から見ても元々は良好であったTさんとEの私的な交友関係を背景とするもの」などという、セクハラに対する無理解ぶりをさらけ出している。ユニオンは、Tさんの裁判を全面的に支援するとともに団体交渉を再開。改めて会社の責任を追及していく。労働基準監督署に対しても、早期認定を求めていく。