メンタル疾患で労災休業中のAさん 9年ぶりの職場復帰に向け準備中!

 三菱電機でパワハラや長時間労働により精神疾患を発症して休職中のAさんが、23年4月から9年ぶりに職場復帰することになった。この間の経過について、22年10月15日に札幌で開催されたコミュニティ・ユニオン全国交流集会で特別報告を行った。多くの集会参加者から、「すごいですね」「頑張りましたね」という声があがった。当日のAさんの報告内容を紹介する。【川本】

はじめに

 よこはまシティユニオン(以降、ユニよこ)のA(当日は実名)と申します。この度は特別報告として発表の機会をいただき誠にありがとうございます。16年11月に労災認定されました三菱電機㈱(以降、会社)の事件と、その後について、ユニよこがどのような成果を上げてきたかを報告致します。
 私は、会社に長時間労働による精神疾患で解雇されました。長時間労働やハラスメントによる労災の事実認定は難しいことが多いのですが、ユニよこに加入していたことで、労災認定と解雇撤回を勝ち取りました。その後、団体交渉を続けることで、敵対関係にあった会社との友好関係を結べるようになり、現在は職場復帰を目指しております。このように労働組合だからこそできる、金銭解決など裁判で勝ち取れる以上の成果を得たことを報告いたします。

労災認定と解雇撤回

 まず、事件の経緯について説明いたします。私は、13年4月に入社し、1年後にはパワハラと長時間労働で精神疾患になり、それが元で解雇されました。元々は三菱電機労組に加入していたのですが全く労働者に寄り添ってくれないことから脱退し、16年3月にユニよこへ加入しました。その後、ユニよこの活躍で16年11月に労災を、17年2月に解雇撤回を勝ち取ります。
 労災認定の際に気をつけたことを述べます。まず、長時間労働の証拠となりそうなものを考えつく限り労働基準監督署に伝えました。そして、何よりも職場の同僚の皆様からの協力が大きかったと思います。労基署側からの聞き取りだけに留まらず、意見書を作成して労基署へ送ってくれた方もいました。このように会社にいながら積極的に協力してくれることは中々ありません。会社に協力者であることが発覚すると人間関係で困りますし、最悪嫌がらせを受けます。それでも正しいことのために発言してくれたこの勇気ある行動にとても感謝しています。

団体交渉で会社に職場改善を求める

 労災認定と解雇撤回後も団交を続けました。残念なことに、会社は敵対的な態度を取り続け、本質的な労働環境改善を避けていました。そのため労災問題が多発することになります。新聞等で報道されて明るみになっていますが、10年以上に渡って全国の事業所で労災問題を起こし続けており、会社の文化・社風自体に問題があることが推察されます。
 また、労働問題だけでなく、品質不正問題も相次いでおり、18年から21年にかけて全国の事業所で9つの検査不正が発覚しています。これらは決して偶然ではなく会社の組織風土や文化を放置し続けた必然です。
 このように労務管理・品質管理において問題が多発し明るみになったこと、そしてなにより、長い年月をかけたユニよこの粘り強い交渉によって、会社もこのまま放置するのはまずいと重い腰を上げ、近年は働き方改革を実行するようになりました。具体的には裁量労働制の撤廃、勤怠記録の改善、組織風土改革など全社員に対する労務管理改善が実施されています。

嫌がらせ年賀はがき事件

 何よりも、私自身にとって大きかったのは、職場復帰を受け入れてくれるようになったことです。団交当初は会社に敵対的な態度を取られ続けていましたので、金銭解決や転職を考えていました。実際にはなかなか転職活動がうまくいかないこともあり、20年頃にこちらから職場復帰を働きかけたところ、段々と誠実な態度を取ってくれるようになりました。特に問題について隠すのではなくて、全社員への周知徹底に協力的になったことは大きな成果だと考えています。
 実は、21年の正月に嫌がらせ年賀状が実家に送られてきました。前述の働き方改革に対する旧態派による会社への反抗と、私への見当違いな怒りが表れています。この事件を団交で会社側へ伝えました。以前は不祥事を隠蔽するが如く、社内で労災の事実を共有・周知することを拒み続けられました。しかし今回は「会社としても非常に問題がある嫌がらせ行為だと考えています」との返答をもらいました。そして、全社に事件の周知と強い非難を示し、さらに、全社研修で紹介させるというかなり画期的な成果を勝ち取りました。
 労働環境を本気で改善していくという点において、会社とユニよこの目的・意見が一致するようになってきた証拠だと言えます。また、私に対して、会社に戻ってきて働いてほしいという意思を示してくれており、職場、人事、産業医を含め、社を挙げて全力でサポートすることを提案してくれました。

職場復帰はゴールではない

 以上のように、ユニよこに加入することで、自分自身だけでなく、すでに職場や会社に大きな影響を及ぼしつつあります。来年度に予定されている復帰後も、団体交渉を続けて自らの労働条件や職場改善を目指していきます。