旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判:第13回口頭弁論(2023年3月14日)双方の書面主張ほぼ終了

旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判を支援する会事務局長 小池敏哉

 この裁判は、Kさんが石綿ばく露により肺がんを発症したとして20年7月に旧国鉄とJR東日本を相手に損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。Kさんは21年1月逝去され、息子のTさんらが遺志を継ぎ訴訟を闘っています。

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 3月14日に行われた第13回口頭弁論は20名が傍聴しました。この日は5月17日の証人尋問の進行等について確認が行われました。原告側証人はK(元大井工場鉄工職場同僚)、K(元大井工場第2電車職場)、T(原告)の3名。被告側証人はS(元大井工場鉄工職場の同僚、現東京総合車両センター勤務)1名です。下表の通り16時過ぎに終了見込みとなり丸一日の攻防となります。

 閉廷後、じん肺・アスベスト被災者救済基金の池田さんの進行で報告集会があり、まず、原告代理人山岡弁護士が証人尋問の進行について分かりやすく説明。福田弁護士は、原告側証人の役割や証言の主旨、遺族として裁判を承継し陳述書を提出したTさんのその内容について「良くできており思いは裁判官にきっと響くものだ」と紹介。続いて、国労神奈川地区本部や国労東京OB会、ノーモア水俣連絡会などから連帯と支援の挨拶があり、原告のTさんが支援へのお礼と決意を述べました。

 13時から、国鉄労働組合本部と東日本本部に、支援する会会員と原告ら7名で要請行動を行いました。支援する会F会長が本部I書記長に要請書を手渡し、①5・17裁判と報告集会への支援、②支援する会への継続的支援、③国鉄新聞等への裁判闘争の紹介などを訴えました。I書記長からは「アスベスト問題はJRでは国労だけが取り組んできた。今後も組織として取り組まなければならない課題、引き続き関係機関と協力して対応したい」と発言がありました。最後に、支援する会の小池事務局長が「現職は一定の補償制度があるが、裁判を通じて会社の責任を明確化し、JR退職者の補償制度を労使で協議し、制度化を図ってほしい」と要請しました。続いて、同東日本本部のI委員長へも要請しました。

 被告のJRは相変わらず、「死亡は、コロナが原因」「肺がんは、喫煙が原因」「安全対策は実施していた、石綿粉じんは発生していない」と主張。「労災の判断をした医員が誤っており、それを真に受けた労基署長の労災決定が間違っている」とまで述べています。被告の証人陳述も新たな証拠の立証もなく、これまでの主張を繰り返しているだけです。

 Kさんが吸い込んだ石綿繊維はどこから来たと言うのでしょうか。大井工場ではKさん以外に、旧国鉄による「業務災害認定」を受けた被災者はこれまで18名(肺がん8名、中皮腫10名)にのぼります。加えて、労基署より労災認定されたのは、故Kさん(肺がん)とKさんの後輩Sさん(中皮腫で闘病中)です。これでも安全管理は適正で石綿ばく露はなかったと言えるのでしょうか。アスベスト健康被害は過去の記憶ではありません。命を奪う「静かな時限爆弾」による被害は現在も広がり、埋もれた被害者がたくさんいるのです。

 証人尋問では、作業実態や杜撰な安全管理など「生」の証言により、会社側の主張は崩れ去るでしょう。その後は最終弁論を経て結審、年内には勝利判決の見込みです。更なるご支援をよろしくお願いします。