センターを支える人々:有野 優太 弁護士(横浜法律事務所)

弁護士を志したきっかけ

 

 はじまして。横浜法律事務所の弁護士の有野優太(ありのゆうた)と申します。よろしくお願いします。中学生だった当時、リーマンショックの影響で、非正規労働者である派遣労働者の「派遣切り」が問題となっていました。このような社会の状況を見て、私は、真面目に働いている人が立場が弱い故に割を食うことを無くしたい、真面目に働いている人が報われるよう世の中にしたいと思い、労働問題の解決に携わることのできる弁護士を志しました。

労職センターとの関わり

 そして、現在、弁護士になって3年目を迎えておりますが、解雇・雇止め、残業代から、均等均衡待遇、定年後再雇用、不当労働行為、ハラスメント、労災に至るまで、理想通り、労働事件を中心に活動しております。労職センターの皆様とは、過労死弁護団での活動やアスベスト問題を通じて交流させていただいております。

 特に、私も弁護団の一員である建設アスベスト訴訟に対しては、鈴木江郎様、川本浩之様を始め、多大な支援をしていただき、誠にありがとうございます。当弁護団が、ここまで、順調に訴訟を進めることができているのも、ご支援の賜物だと思います。今年は秋頃から証人尋問が予定されているなど、正念場が続きますが、被害者救済のため、今後とも力を合わせて頑張っていければと思います。

最近取り組んでいる「偽装雇用」の問題

 さて、ここでは、建設アスベスト訴訟とは別に、私が注力している「偽装雇用」の問題についてお話させていただこうと思います。

 昨今、会社員として企業に雇用されるのはやめて、「フリーランス」として独立して「自由な働き方」をしようと言われることがあります。

 もちろん、真に、自分のスキルを活かして、「自由な働き方」ができるのであれば、それは望ましいことでしょう。

 しかしながら、現在、「自由な働き方」とは名ばかりで、企業から会社員さながらの指示・拘束がなされているにもかかわらず、契約の形式だけ「フリーランス」(法的には「業務委託契約」)とされ、会社員(「労働者」)であれば適用されるはずの労働法の規制が潜脱されるという事案が頻繁しています。

 アマゾンの配達員の働き方がその際たる例です。彼らは、アプリとAIによって、配達先や配達時間、荷物量等を具体的に指示された上、契約企業から出勤時刻の指定や勤務姿勢への細かい指導注意等がなされています。さらには、「労働者」ではないという建前で、労働法の上限規制を超える残業をさせられた上、残業代も支払われていないのです。もちろん、拒否すれば契約を解除されてしまうため、断る自由はありません。労災保険も自ら保険料を払って特別加入しなければ適用されません。

 このような全く「フリー」(自由)ではない「フリーランス」は、「偽装雇用」「名ばかり個人事業主」などと呼ばれ、本来は、労働法に則って、然るべき規制がなされるべきものです。このようなことがまかり通れば、日本の労働法制は骨抜きになってしまいます。

 この状況を是正するため、アマゾンの配達員が労働法の保護を受ける「労働者」であるということを勝ち取るため、仲間の弁護士と協力して、活動を続けていく予定です。

 新しい問題ゆえに難しい点もありますが、微力ながら「偽装雇用」の撲滅に尽力していきたいと思います。みなさまにも、ぜひご支援いただければ幸いです。