公務員のアスベスト被害(全国労働安全衛生センター公務災害対策局)


 公務員の方々にも多くのアスベスト被害が発生しています。この動画では公務員のどのような職種の方々にアスベスト被害が出ているのかを解説します。退職してから肺がんや中皮腫などのアスベスト疾患を発症する場合も多く、正しく補償に結びついていない現状がありますので、心当たりがありましたら、ためらわずにお早めにご相談下さい。

 地方公務員災害補償基金が公表しているアスベスト疾患の公務災害の請求・認定件数によれば、累計で請求269件、認定123件、認定率46%です。一方、労災保険におけるアスベスト疾患は90%以上の認定率なので、民間と公務員の認定率に大きな開きが生じています。

 公務員のアスベスト被害が多く出ている職種としては、電気・ガス・水道職員、学校の教職員、消防職員、清掃職員、建築職員、陸海空自衛隊、船舶職員など多岐にわたります。水道職員では石綿の水道管の切断作業によるアスベストばく露、学校の教職員では体育館など建物のアスベスト吹付によるばく露、校舎の改修工事中に授業していたことによるアスベストばく露、石綿金網からのばく露などが認められています。

 消防職員では、火災現場における消火活動、残火処理、建物破壊活動、火災原因調査によりアスベストばく露、清掃職員では清掃車修理業務によるアスベストばく露、建築職員では建築物の営繕工事の工事監理業務によりアスベストばく露、いずれも公務上として認められました。また陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の隊員も様々な業務においてアスベストばく露しており、公務上として認定されています。

 それ以外にも、歯科医が歯科技工物の作成のためアスベストリボンの機材を使用したケース、船舶職員が機関室や船内で石綿を含む断熱材やパッキンの取り外し作業をしたケース、小荷物等収受職員が石綿を積載した船内に立ち入ったケース、衆議院職員営繕課で配管保温工事に従事したケースでアスベストばく露して認定されています。

 以上、見てきたとおり地方公務員、国家公務員ともに多くの職種でアスベスト災害が発生しています。一方で、公務災害認定の審査では、民間の労災保険の認定基準を準用しているにもかかわらず、認定率が労災保険の半分程度しかない問題点もあります。これは公務災害では非常に高いハードルを請求人に課していること、匿名の本部専門医が被災者の労働実態を把握しないまま判断している等が原因だと考えられます。

 また事務職でも職場の建物にアスベスト吹付があった場合なども公務上として認められる可能性もあります。いずれにしても肺がんや中皮腫などアスベスト疾患を発症した場合は、手続きをためらわずに、積極的に公務災害請求を行いましょう。

 私たち全国労働安全衛生センターは、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会などの被災者団体と連携して、公務災害請求手続きの支援をしていますので、いつでもご連絡下さい。