シーバイエス(株)での腰痛労災の取り組み
東京管理職ユニオン執行委員長 鈴木剛
東京管理職ユニオンは1993年の結成以来、3800件の労働事件に取り組んできた。それまで日本型雇用制度によって「一生安泰」と言われた大企業の管理職が、バブル崩壊を契機にリストラ対象となったのが組合結成のきっかけだった。その後、2000年前後の金融危機や08年末のリーマンションを経て、現在でも絶えることなくリストラやハラスメントなどの労働相談が相次いでいる。この間にマクドナルドの「名ばかり管理職」、リコーの「追い出し部屋」、アマゾンの「PIP(業績改善計画)」など時代ごとに手を変え品を変え編み出される企業のリストラ手法と対峙してきた。
こうした中、会社からの過酷なリストラやハラスメントや人事考課に直面し、精神疾患に罹患したり、労災事故に見舞われる管理職労働者も増えている。今回のシーバイエス㈱事件は、管理職層に対する継続的なリストラを背景に、それまでのキャリアと異なる配属先での過労等が要因となり労災に見舞われたものだ。
シーバイエス(株)(本社/横浜市)は外資系企業で、アメリカのS・C・ジョンソン社(医療関連のジョンソンエンドジョンソンとは異なる)を起源とする業務用洗剤や清掃機器の製造販売会社。日本においては、ジョンソン・プロフェッショナルとして知られていた会社を中心に近年、関連会社との合併統合が相次ぎ、14年からシーバイエス(株)に社名変更した。
本件当該のAさんは50代前半で長年、営業職で活躍し、次長時代には自身が率いるチームの営業成績が優秀であるとして表彰され、部下と共にアメリカ旅行を受賞したことがあった。Bさんは40代で、一貫して営業畑で活躍してきた。
ところが、会社の合併統合の過程で徐々に全社的な退職勧奨などのリストラが進められ、2人も対象になった。一貫して「会社は辞めない。働き続けたい」という意志を示したが、恣意的に低い人事評価をつけられ、降格や賃金ダウンなど不利益変更を被り、東京管理職ユニオンに相談に来たときには、営業の一線から外され、外周りのメンテナンス業務についていた。
2人に与えられた業務は、10数キロ以上のメンテナンス用工具を担ぎ、都内の客先まで電車や地下鉄を乗り継ぎ、洗浄機械のメンテナンスに従事するというもの。以前の外注先の担当者は徒歩ではなく、車で移動していたそうだ。慣れない体に負担が多い業務の毎日で、無理がたたり、2人は転倒事故や常態的な全身の痛みに見舞われた。
東京管理職ユニオンは、会社に団体交渉を申入れ、過去のリストラや人事評価に遡って、労働契約法等に沿って問題点を指摘し、配置転換等を要求。あわせて労災問題について神奈川労災職業病センターにお世話になった。 結果は、無事に労災認定され、取り組みも功を奏し、現在2人はメンテナンス部門から、営業職ではないが、体の負担が少ない部門への異動を勝ち取ることができた。今後も、過去の安全配慮問題や人事考課や不利益変更について、継続して団交を進める予定だ。また、職場に組合の仲間を増やすことにも取り組んでいく。
現在、神奈川以外でも、別の会社で、東京労働安全衛生センターや関西労働者安全センターと連帯して労災の取り組みを行っている。安倍政権による新自由主義政策の進行の中、管理職と呼ばれる中高年サラリーマンへのリストラやハラスメントは一層深刻化するものと思われる。それに伴い、労災事件も増加していくだろう。こうした中、ユニオンとセンターとが連帯を強め、労働者の権利を守っていくことが益々重要になると考えている。共に闘ってゆきましょう。